2018年05月18日 1526号

【4・27南北首脳会談と板門店宣言 緊張緩和へ歴史的意義 逆行する安倍の退陣で東アジアに平和を】

 4月27日、南北朝鮮間の軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)韓国側施設「平和の家」で開催された南北首脳会談。出迎えた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と手を取り合い、初めて軍事境界線を越える朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国、注)の金正恩(キムジョンウン)国務委員長の姿を世界が注視した。首脳会談などを経て「板門店宣言」に署名した後は、共同発表に臨んだ。同会談と宣言の歴史的意義を改めて確認しよう。

 共同発表で、文大統領は「韓半島でこれ以上戦争は起きず、新たな平和の時代が開かれていることを共に宣言した。我々は、完全な非核化を通じ、核のない韓半島を実現することが共同の目標であると確認した」「我々はまた、終戦宣言と平和協定を通じ休戦体制を終息させ、恒久的な平和体制を築くことに合意した。韓半島をめぐる国際秩序を根本的に変える非常に重要な合意だ」と発表した。

 金委員長は「戦争のない平和な地で、繁栄と幸福を享受する新たな時代を切り開かなくてはならないという確固たる意志を持ち、そのための実践的な対策に合意した」「これまでの合意のように、履行できないことがないよう、私たちは緊密に意思疎通をし協力し、必ずいい結果が出るように努力する」と応じた。朝鮮の最高指導者がカメラの前で発言し、全世界に中継されたのは史上初めてだ。

東アジア冷戦構造終結へ

 「板門店宣言」は、「冷戦の産物である長い間の分断と対決を一日も早く終結させ」るため、「南と北は南北関係の全面的で画期的な改善と発展を成し遂げることで、途切れた民族の血脈を結び、共同繁栄と自主統一の未来を早めていく」「南と北は朝鮮半島で先鋭化した軍事的な緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために、共同で努力していく」「南と北は朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制を構築するために、積極的に協力していく」ことを宣言した。

 合意内容は多岐にわたる。とりわけ、「南と北は休戦協定締結65年になる今年に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換」することが合意され、今年中に朝鮮戦争の終戦宣言を行うこと、「南と北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標」を確認したことは、単に南北関係の改善に止まらず東アジア全体の平和体制の構築において極めて重要だ。東アジアにおける冷戦構造がようやく終わりの時を迎えようとしている。

 南北首脳会談について、国連のグテーレス事務総長は4月27日、「真に歴史的な南北首脳会談を称賛する」との声明を発表。「双方がすべての合意事項を迅速に履行することを期待している」とした。シンガポールで会合を開いていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相らは声明を発表し、「前向きな進展に励まされる」とした。

 トランプ米大統領も、南北首脳会談を「歴史的」と高く評価し、「『完全な非核化』という目標を表明したことに我々は勇気づけられた」「とてもうまくいっている。劇的なことが起こる可能性がある」と語った。初めての米朝首脳会談に向け大きな一歩となったことは間違いない。

水をさし孤立の安倍政権

 ところが、安倍首相は「北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動きと歓迎する」と一応は評価を口にしつつも、「過去の声明との比較分析を行いながらよく考えたい」「北朝鮮が具体的な行動をとることを強く期待している」と述べるに止まる。河野外相に至っては今も「具体的な行動をとるまで圧力をかけ続ける方針に変わりはない」と従来の立場を繰り返すのみだ。日本の主要メディアも「具体的な道筋示さず」(4/28朝日)「非核化への道筋はまだ見えない」(4/28読売社説)と疑い、水をさす。

 しかし、朝鮮戦争が終結しておらず、在韓米軍が韓国に居座り、有事の指揮権を米軍が握っている現実の中で、朝鮮にとっては「武装解除」を意味する非核化の具体的プロセスを南北だけで決められるはずもない。むしろ、南北米中という交渉枠組みを明示して「今回初めて『年内の終戦宣言→平和協定締結』という手順が示された」(4/28日経)意味では、核問題の根本的解決に向けた具体的プロセスが示されたと言える。

 首脳会談に先立ち、朝鮮労働党は4月20日中央委員会総会で核実験場の廃棄とICBM(大陸間弾道ミサイル)試射中止を決定した。「宣言」でも、「朝鮮戦争の終結」「完全な非核化」を共同の目標にした上で、「相手に対する一切の敵対行為の全面中止」「北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的衝突を防止」「南北共同連絡事務所の開城(ケソン)地域設置」など、それを実行する具体策が合意されている。

在韓・在日米軍の縮小も

 もはや、傍観者的態度は許されない。困難な交渉が待ち受けるだろうが、「正常とは言えない現在の休戦状態を終息させる」歴史的課題を推し進めなければならない。

 1954年に締結された国連軍地位協定で在日米軍基地は「朝鮮国連軍」の基地として使用される。朝鮮戦争の終結で国連軍は駐留根拠を失い、在韓米軍だけでなく在日米軍の縮小撤退にも必ずつながる。

 キャンドル革命≠ナ文政権を誕生させ、南北首脳会談を実現させた韓国民衆の闘いに連帯し、朝鮮への挑発をやめない安倍政権を即時退陣させなければならない。

(注)朝鮮の国名表記

 国名は当事国が使用するものを採用するのが基本。朝鮮半島は、日本の敗戦により植民地から解放された後、北部に朝鮮民主主義人民共和国、南部に大韓民国が成立。本来統一国家となるべきだったが分断状態に。どちらを正当な国と見るかで呼称も異なってきた。週刊MDSは、両国とも正式な国連加盟国であり、当事国が使用する短縮名を採用し、朝鮮、韓国としている。日本政府やマスコミなどが「北朝鮮」とする一方で「南韓国」「南朝鮮」としないのは、朝鮮を対等な国と認めず、蔑視する姿勢を反映している。

4・27板門店宣言(要旨)

1.韓国と朝鮮は、南北関係改善と発展で共同繁栄と自主統一の未来を早めていく。

(1)民族の運命は自ら決定する民族自主(2)対話と交渉継続(3)民間交流と協力(4)10.4宣言(2007年)で合意された事業を推進し、東海(トンヘ)線と京義(キョンウィ)線鉄道と道路を連結

2.南と北は、軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を解消するために共同で努力する。

(1)地上、海上、空中全空間で一切の敵対行為を全面的に中止(2)西海(黄海)北方境界線一帯を平和海域とし軍事的衝突を防止して安全な漁業活動を保障する対策を行うなど

3.非正常的な停戦状態終息、平和体制樹立は、先送りできない歴史的課題だ。

(1)不可侵合意を再確認し、厳格に順守(2)段階的軍縮(3)今年中に終戦宣言、休戦協定を平和協定に転換(4)完全な非核化、核のない朝鮮半島を実現する共通目標を確認

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