2018年06月01日 1528号

【ルポ 日韓連帯ツアー(下)/政治を決める民衆の闘い/福島・沖縄と同じだった】

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が取り組んだ日韓連帯ツアー(5/3〜5/6)。韓国民衆の闘いが生んだ文在寅(ムンジェイン)政権が公約通り反基地・反原発政策を進めると考えるのは安易過ぎることを知った。闘いのないところに勝利はない。

御用メディアに対抗

 民衆の苦しみを伝えないどころか、加害者を被害者であるかのように報道するメディアがある。いわゆる「御用メディア」だ。サード(高高度ミサイル)基地建設阻止を闘うソソンリに「御用メディア取材お断り」の看板があった。住民に28人の負傷者がでた時、メディアは警官6人が負傷と報道した。密陽(ミリャン)の高圧鉄塔建設阻止の闘いは「少数の住民と不純な外部勢力による」と貶(けな)された。

 メディアの世論誘導に対抗するには、真実を発信し連帯を広めるしかない。密陽の住民が同じ国家暴力と闘っている人びととの支援連帯を深めたのは大いに勇気づけられる。今回「平和に向かう韓日連帯ツアー」もそんな機会のひとつになった。

 蔚山(ウルサン)にある青少年社会教育団体「ペダゴジ」で働く南美英(ナム・ミヨン)さんが今回のツアーに同行した。ツアーを企画した代案文化連帯ユ・ミヒさんが活動する劇団と同じビルに職場がある。最後の晩、感想交流の場があった。「署名行動の時、いやなことも言われた。平和な心ではできないこともある。平和を語るのに抵抗があった」と話し始めた。「どうしたら平和が実現できるのかとあれこれ方法論を考えた。話が通じないとめげていた」

 高校生の時、「大学は就職技術修得の場のようだ」と聞いて、フリースクールへ。仏教の考え方が好きで「無我(ムア)」と友人には名乗った。エスペラント(人工言語)の学習のために北海道に来た。日本語が話せる。カナダの大学でエコロジ−を学び現地で就職したが、今年4月韓国に戻ったところだった。そんな彼女がツアーを通じて「頭で考えているだけではだめだ」とわかった。どんな思いで闘っているのか、支援する人たちはどんなことを思っているのかを知って「(平和への活動の)敷居は低くなった。壁が壊れた」と語った。

 ZENKOの若いメンバーも「(ツアーを通じ)何のために闘うのか見えてきた。周りの人が人間らしく生きるためだ」と感想を述べた。「感情豊かに闘う姿。人間らしく生きることだ。苦しいことや失敗なども学び合える連帯活動」を実感した。

ムン・ジェインの公約

 ツアー参加者の思いは、「韓国でも日本でも国家暴力に抗(あらが)う姿は同じだ」。沖縄新基地・福島原発事故の闘いは、ソソンリや密陽、月城(ウォルソン)での闘いだった。大きく違うのは、文在寅が、大統領になる前とはいえ闘いの現場に足を運び、話を聞き涙したことだ。サードも原発・高圧鉄塔も少なくとも「再検討」が公約だった。

 代案文化連帯のイ・ソンミンさんは「サードは文在寅のジレンマ」と表現した。米国との関係に配慮することと自らの公約を守ることは同時にはできないからだ。「文政権は軍部を掌握できていない」と見る。東アジアでの平和を確かなものにするには、国際連帯の強化が必要だと強調した。

 文政権にいかに公約を守らせていくのか。韓国民衆の闘いとともに、日本での闘いが期待されている。「安倍は原発推進。日本でも安倍を倒して核のない世界をともにつくろう」と反原発活動家は言った。「安倍の改憲を止めなければならない。東アジアの緊張を高めているのは安倍だ」と韓国の労働者は言った。日韓民衆の連帯は双方の闘いに大きな力となることが実感できた。      (終)



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