2018年06月01日 1528号

【朝鮮戦争に終止符を/「朝鮮国連軍」という戦争装置/平和協定を結んで解体へ】

 朝鮮半島の戦争状態を終わらせる気運が高まる中、朝鮮戦争を戦った「朝鮮国連軍」の存在に注目が集まっている。何のために今まで維持されてきたのか。米国の思惑、日本との関係は? 読者の質問にお答えしたい。

 4月27日の南北首脳会談では「年内の終戦宣言」「休戦協定の平和協定への転換」が合意されました。この4・27板門店宣言の意義は本紙でもお伝えしているところですが、1526号3面の記事に関し、いくつか質問をいただきました。「朝鮮国連軍とは何か」「国連軍地位協定なんてあるのか」等々。

 もっともな疑問です。国連憲章にもとづく国連軍が組織されたことは一度もありません。しかしソウル市内の米軍基地には朝鮮国連軍の司令部が存在しており、日本にも後方司令部が東京の横田基地に置かれています。また、日本国内にある7つの米軍基地(横田、座間、横須賀、佐世保、嘉手納、普天間、ホワイトビーチ)が国連軍の基地に指定されています。

 これは一体どういうことなのか。まずは朝鮮国連軍の成り立ちから説明します。

危険な地位協定

 1945年8月、日本の植民地支配から解放された朝鮮半島では、自分たちの国家を建設しようという運動が各地で始まります。9月には「朝鮮人民共和国」の設立が宣言されました。しかし、朝鮮半島南部を占領した米国は、これを認めませんでした。その後、北部に朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)、南部に大韓民国(韓国)という2つの国家が成立します。

 1950年6月、朝鮮が韓国に侵攻し朝鮮戦争が勃発します。米軍が指揮する「朝鮮国連軍」と中国の「人民義勇軍」が介入した戦争は3年に及び、300万人を超える人びとが亡くなりました。1953年に休戦協定が結ばれましたが、あくまでも休戦中です。法的には今なお戦争が続いているのです。

 問題の朝鮮国連軍ですが、軍事行動の指揮権は米軍司令官が握っており、国連は一切関与することができません。そんなものが正規の国連軍であるはずありません。軍事力提供国は16か国ですが、実態は米軍でした。

 米国が平和条約締結の求めに応じなかったのは、朝鮮国連軍を維持するためだと言われています。朝鮮国連軍は1950年の安保理決議(ソ連欠席の下で採択されました)にもとづいて設置されたものなので、朝鮮半島における軍事行動には新たな決議などを必要としません。国連軍の看板を掲げていたほうが戦争しやすいというわけです。

 そして日本にとっては次が重要なのですが、日本政府は米国など11か国と「国連軍地位協定」を結んでいます。朝鮮半島有事の際には、この協定にもとづき、朝鮮国連軍は日本国内の米軍基地を自由に使用できることになっています。一方、日本は「十分な兵たん上の支援」を行うと決められています。戦争の後方基地になるということは、敵の攻撃目標になることを意味します。まさに自動参戦協定じゃないですか。

朝鮮戦争レジーム

 「第二次朝鮮戦争じゃないか」と感じたあなた。その直感は正しい。朝鮮戦争の際、日本は国をあげての支援を行いました。戦争に必要な物資の製造や調達(軍用車の整備を担ったトヨタなどは戦争特需でボロ儲けしました)などなど。海上保安庁の機雷掃海艇を戦地に送り、犠牲者まで出しています。

 こうした「占領下の戦争協力体制」を日本独立後も変わらず継続するために、米国は朝鮮国連軍の存在を利用しました。本来ならポツダム宣言にもとづき、占領軍である米軍はただちに撤退しなければならないはずです。ところが、国連憲章43条「国連加盟国は、国連軍に基地を提供する義務を持つ」を「米軍=国連軍」と強引に読み替え、基地提供を正当化したのです。

 かくして、米軍が日本の法律に縛られることなく日本全土に駐留するという、今日の日米安保体制の基本が形作られました。安倍晋三首相の持論は「戦後レジーム(体制)からの脱却」ですが、本当は「朝鮮戦争レジーム」がずっと続いているのです。

 自衛隊だってそうです。前身の警察予備隊は朝鮮半島への出兵で空っぽになった米軍基地を守るために作られたものです。GHQ(連合国総司令部)の中には「日本国憲法にうたわれた崇高な精神を反故(ほご)にした」と批判する者もいましたが、日本の支配層は再軍備を歓迎しました。

 以来、「朝鮮半島危機」を口実に憲法9条の破壊を進めるパターンが何度くり返されてきたことか。安倍政権が典型ですが、連中は米国に渋々従っているのではありません。自ら進んで戦争国家づくりを行っており、それには朝鮮半島の軍事的緊張が続いていたほうが好都合なのです。

邪魔する安倍は去れ

 情勢は平和協定の締結=朝鮮戦争の終結に向け大きく動き出しました。存在理由を失った朝鮮国連軍はさすがに存続できないでしょう。在韓米軍や在日米軍の縮小は待ったなしです。また、米海兵隊の日本配備は休戦協定の崩壊に備えてのものでしたから、これまた当初の理由がなくなります。沖縄に海兵隊基地は要らないということです。

 要らないものと言えば安倍政権ですね。改憲というドス黒い野望のために、平和構築への努力に難癖をつける安倍首相の姿は醜悪の一言に尽きます。平和の妨害者をすみやかに退場させることは、私たち日本の市民の責務ではないでしょうか。    (M)



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