2018年06月08日 1529号

【働かせ方大改悪法案 衆院強行糾弾/過労死遺族の叫びも無視】

 安倍政権が最優先とする「働き方」関連一括法案が5月25日、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党と日本維新の会によって強行採決された。「高度プロフェッショナル制度は過労死を増大させる」とする野党の質問をはぐらかし、質疑時間だけを浪費させた強行採決だ。グローバル資本の要求に応えた働かせ方大改悪=労働者総奴隷化*@案の強行採決を糾弾する。

半数が過労死水準

 法案作成のベースになった労働時間調査データで、2割ものデータが虚偽として削除された。再集計したところ、一般労働者で年間残業1000時間超の三六(サブロク)協定(法定労働時間を超えて労働させる場合の労使協定)を結んだ事業場で、協定通り残業させた事業場の比率は、虚偽データによる3・9%から48・5%に跳ね上がった。

 安倍首相は2015年2月の国会答弁で「実際はこんなに(協定の上限まで)残業していない」と答弁していた。しかし、半数の事業場で過労死水準の残業が横行していることが改めて明らかになった。法案作成の基となる現状認識が誤りだったのだから、少なくとも労働政策審議会に差し戻すのが当然だ。

 「これ以上過労死を生んではならない」と「高プロ」削除を訴える「全国過労死を考える家族の会」が5月22日から首相官邸前で座り込んだ。「せめて法案採決前に面談を」と求めたが、拒否された。

 安倍は「働き方改革実現会議」進行中の昨年2月、過労自殺した電通新入社員の母親と面談している。自らの「政策」宣伝には利用するが、「家族の会」の切実な叫びは聞こうともしないのだ。

根拠なき「高プロ」

 「高プロ」に関する質疑をみても安倍政権はまともな回答一つしない。

 「高プロ」のニーズがあると政府は主張するが、加藤厚労相は答弁で「(ニーズとは)12人からヒアリングした」と述べるのみ。安倍は「時間ではなく成果で評価されたい人もいる」と言うが、参考人質疑では連合も全労連も「家族の会」も反対。経団連は賛成したものの、企業でも賛成28%(共同通信調査)と少数だ。そもそも「高プロ」を導入する根拠などどこにもない。

 与党と日本維新の会、希望の党は「『高プロ』が導入されても労働者が希望すれば離脱できるようにする」などと修正合意した。しかし、現状の強圧的な労使関係の下では、適用の同意を拒むことも離脱を申し出ることも労働者の自由意思ではできない。修正に何の意味もない。

 5月25日の審議で「高プロ」の健康確保措置に関し、「月残業時間が100時間を超えたら産業医との面談があるが、さらに200時間、300時間の時点では何も無いのか」との質問に、加藤厚労相は「100時間を超えたら産業医との面談」との答弁を繰り返すばかり。挙句に「産業医が労使で構成する安全衛生委員会に報告するから健康確保される」と述べる。産業医が事業場の安全衛生委員会に必ず出席しているわけではない。中小の事業場は外部の医者に依頼している。加藤は意味もない言葉を並べるだけだ。

容認する連合会長

 連合は、表向き「高プロ」反対を口にするが、その実、「高プロ」容認を政権に意思表示している。5月17日、連合の神津会長は、菅官房長官と面会し、残業時間の上限規制の早期実現などを求める要請書を提出した。これに菅は「方向性は政府も全く同じで、働き方改革の実現にしっかり対応したい」と応じた。この面談で神津は「高プロ」に関して一切言及せず。連合の求める残業時間上限規制(過労死水準)はすでに法案化されており、今さら要請の意味はない。連合による「高プロ」容認の意思表示でしかない。

 韓国でも長時間労働が社会問題になっていた。しかし今年2月、1週間の労働時間の上限を現行の68時間(40時間+28時間)から52時間(40時間+12時間)に短縮するなどの内容を盛り込んだ勤労基準法改正案が、国会で可決、成立した。また、休日勤務手当は、休日勤務が8時間以内の場合は通常賃金の150%、8時間を超える場合は200%の手当が支給される。

 韓国の残業規制は年間上限625時間。日本の「働き方」一括法案では年間残業規制でも900時間に達する。

 安倍政権は衆院本会議でも強行通過させ、参院に送付する。一括法案の参院成立を許さず、安倍政権もろとも葬り去ろう。

 
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