2018年06月08日 1529号

【アメフト反則もアベ現象/「正義」が消え、ニヒリズムがはびこる/安倍首相の嘘で日本が腐る】

 安倍政権とは何か。いま確実に言えるのは、日本憲政史上最悪の嘘つき政権だということだ。森友・加計学園疑惑といい、自衛隊の日報隠蔽問題といい、一国の首相が国会で虚偽答弁を連発し、下僕と化した官僚が偽装工作に狂奔する。正義もモラルもあったものではない。安倍政権は民主主義社会の基盤を壊しているのである。

見え透いた嘘の上塗り

 財務省は5月23日、学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で、学園側との交渉記録と改ざん前の決裁文書を国会に提出した。理財局職員の指示で記録の廃棄を進めていたことを認め、謝罪した。安倍晋三首相が昨年2月に「私や妻が関与していたら総理大臣を辞める」と断言した直後から、関与を隠すための工作が組織的に行われたことになる。

 交渉記録には、安倍昭恵夫人に関わる記載が残されていた。たとえば、「優遇」を求める森友側の要望を、昭恵夫人付の政府職員が財務省理財局に伝えていたとのくだりである。近畿財務局もこの一件が「安倍案件」であることを本省に報告していた(本省相談メモ)。異例の森友優遇の決め手はやはり昭恵夫人の存在だったのだ。

 国会答弁で全否定した妻の関与が明らかになれば、安倍首相は致命傷を負う。だから財務官僚は「交渉記録は存在しない」と言い張り、その裏で物的証拠を消そうとしていた。首相の嘘が権力犯罪を引き起こしたのである。

 加計学園の問題でも安倍首相の嘘を暴く記録が出てきた。愛媛県が国会の求めに応じて提出した内部文書である。そこには、2015年2月に加計孝太郎理事長と面会した安倍首相が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と話していたことが、学園側の県担当者への説明として記されていたのである。

 愛媛県側に嘘の報告をする理由はない。「加計氏と獣医学部新設の話をしたことはない」「計画を知ったのは昨年1月」と強弁してきた安倍首相はいよいよ苦しくなった。すると加計学園は「当時の担当者が、実際にはなかった総理との面会を引き合いに出した」と言い出した。

 理事長の「腹心の友」である安倍首相を助けるためなのだろうが、信じがたい話である(本当なら加計学園は補助金詐欺だ)。はてしない嘘の連鎖というほかない。

社会の基盤を壊す

 嘘製造機と化した首相がずっと居座る日本国。こんな国で暮らしていたら、感覚がマヒし、異常を異常とも思わなくなってしまう。この件について、ジャーナリストの青木理(おさむ)がラジオ番組で重要な指摘をしていた。

 「口のまわりにきな粉をいっぱいつけているくせに、『俺はきな粉餅を食ってない』って言うようなことが、国会や国政の場で通ってしまう。この社会の根本的なモラル、民主主義社会の基盤が壊れていくという意味でいうと、ものすごく重大なことだ」(5/11文化放送)

 まさにそのとおり。「ニッポン総アべ化」というべきモラルハザードが社会全体に広がっている。いま話題の「日大アメフト部悪質タックル問題」がそうだ。多くの識者が指摘するように、反則行為を指示したことを頑なに否定する日大幹部の対応は安倍政権と同じである。

 監督の意を受け、選手に危険行為を命じたコーチは「相手がケガをして秋の大会に出られなかったら、こっちの得だろう」と言い放ったという。さらに、事の重大さに気づいて泣いていた選手をこう責めた。「優しすぎるところがダメなんだ。相手に悪いと思ったんやろ」。儲けのためなら何をしてもいいという新自由主義の発想ではないか。

 この話で真っ先に思い浮かんだのが、今年3月に自殺した近畿財務局の男性職員のことである。彼は森友学園への国有地売却案件を担当し、決裁文書の改ざんにも携わっていたとされる。財務省理財局の改ざん指示に近畿財務局は難色を示したが、最後は本省に「組織防衛のためだ」と押し切られたという。

 「自分の常識が壊された」と漏らしていた職員は心を病み、休職に追い込まれたあげく、自ら命を絶った。親族は「汚い仕事をさせられたのではないか」と憤る。スポーツマンシップに反するプレーを強要された日大選手も良心の呵責に耐えられなかった。それと同じことだと思うのだ。

正義を取り戻す時

 一方、はるか昔に良心を捨てたと思われるエリート官僚は、政権の意向を忖度(そんたく)した虚言を連発している。公務員を「全体の奉仕者」と定めた憲法を踏みにじり、政権の下僕に徹することのできる者だけが重用され出世する。これでは「正義」や「公正」という価値観が世の中で軽視されるのも無理はない。

 疑惑が醜聞が次から次に出てきても安倍内閣の支持率は一定より下がらない(30%台で下げ止まり)。その大きな要因に「何が起きても何も変わらない。何をやっても意味がない」という閉塞感、諦め的ニヒリズムの広がりがあるのではないだろうか。

 ニヒリズムの蔓延は民主主義社会を土台から壊していく。ファシズムの思想的源泉と指摘されるゆえんである。のさばる安倍は私たち市民の手で倒さなければならない。この世の正義を子どもたちに証明するために。    (M)

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