2018年06月15日 1530号

【朝鮮半島の和平に逆行/自衛隊の遠征軍化狙う安倍/陸上イージス配備を候補地に通告】

 朝鮮半島の緊張緩和が劇的に進む中、安倍政権の和平妨害、好戦姿勢がきわだっている。政府・自民党は東アジアの平和に逆行する大軍拡まで打ち出した。

2千億円をドブに捨てる

 6月1日、防衛省福田達夫、大野敬太郎両政務官は秋田県と山口県を訪問。両県にある陸上自衛隊演習地が「イージス・アショア」(陸上配備型弾道ミサイル防衛システム)の配備候補地であることを伝えた。配備理由については「北朝鮮のミサイルから全国を守るため、日本海側の北と西に配備する必要がある。レーダーが遮られず、最適地判断した」「北朝鮮が数百発のミサイルをもち、米朝交渉の行方が見えない状況では準備は進めなければ」とし、「速やかに配備できる自衛隊施設などから選んだ」と説明した(6/1朝日ほか)。

 イージス・アショアは海上自衛隊のイージス艦が装備するイージスシステムを陸上に設置するもの。レーダー、迎撃ミサイル、通信システムをコンピューターで連結した戦闘システムで、標的の発見から攻撃までを迅速化する。イージス・アショアの射程距離は2500qともいわれており、2基で日本全土をカバーする。最高高度は500q以上で大気圏外で弾道ミサイルを破壊するという。約2千億円もする超高額の兵器だが米国でも実験段階での失敗が続き、アラスカとカリフォルニア以外配備されていない代物だ。

緊張緩和は進む

 安倍政権がイージス・アショア導入を決めたのは昨年12月。だが、年明けから朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル開発を巡る動きは、朝鮮戦争終結・朝鮮半島非核化を目指す南北首脳共同の「板門店(パンムンジョム)宣言」が合意され、史上初の米朝首脳会談が予定されるなど急展開を見せた。一時は「現時点で米朝首脳会談の実施は適当ではない」と中止をほのめかしたトランプ米大統領も金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の書簡を携えた特使を迎え再び会談実現へと動き「(朝鮮との)関係がよくなってきているので『最大限の圧力』という言葉は使いたくない」とまで言い出した。

 政府が目指すイージス・アショアの導入時期は5年先の2023年。紆余曲折(うよきょくせつ)はあっても朝鮮半島の緊張緩和は進んでいく。「ミサイルから全国を守る」というのなら、トランプ政権ですら前向きな朝鮮半島の緊張緩和を米韓と協力し推し進める方が先だ。


侵略兵器買いあさる

 安倍がイージス・アショアにこだわるのは、中国封じ込めと自衛隊の世界展開に必要だからだ。とりわけ世界中のいつでもどこででも武力行使する自衛隊の遠征軍化に不可欠だ。

 安倍は戦争法を制定したが、9条改憲がなお容易ではない今、侵略兵器の調達も「防衛」を口実に進めざるを得ない。だから朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出を最大限に利用してきた。だが、「防衛」を強調すればするほど、本来ならより外洋に展開したい兵力を日本近海に割かざるを得ないというジレンマを抱える。

 安倍軍拡がめざす「防衛力」とは、全通甲板を持つ「いずも」に艦上離発着可能なステルス戦闘機F35Bを搭載し、艦上から敵基地攻撃可能な巡航ミサイルを持ち、無人偵察機を飛ばし、自衛隊版海兵隊をオスプレイで投入する遠征軍だ。イージス艦はその遠征軍の防空と作戦行動指揮の要となる。陸上にイージスシステムを配備し、イージス艦を中軸とした海上兵力のフットワークを軽くしたいのだ。

 防衛省が地元説明した日と同じくして、自民党は「防衛予算」増額要求や「いずも」空母化を含む敵基地攻撃能力保有検討を求める新防衛大綱案などの提言を政府に提出した。提言を取りまとめた中谷元(げん)元防衛相らは「長距離打撃力をはじめとした戦闘体系全体を見直していくべき」と安倍に求めている。安倍政権の狙いが自衛隊の遠征軍化にあることを雄弁に物語る。

軍事費1%枠見直しも

 自衛隊の遠征軍化には、超高額な兵器購入や整備費とともに長期遠征のための兵站(へいたん)の確保や軍事同盟国への駐留経費など、軍事費の大幅増が必要だ。

 自民党の提言は軍事費の上限を現在の対GDP比1%から、2%に引き上げるよう要求している。これによると軍事費は10兆円規模となる。そのうえ、寄港する同盟国での港湾整備などをODA(政府開発援助)で賄う必要も出てくる。犠牲となるのは福祉・医療・教育など市民生活だ。

 朝鮮戦争終結、朝鮮半島非核化を先導するアジア・世界の平和勢力と連帯し緊張緩和を進め、安倍軍拡の口実を奪おう。すべての基地を撤去し軍事費を削減して市民生活に回せと要求する時だ。
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