2018年06月29日 1532号

【北海道の鉄道再生・存続を/住民参加求め道民集会/8万筆の署名集め全国展開へ】

1か月半で8万3千筆

 北海道の鉄道の再生・存続に向けた道民集会(JR北海道研究会・鉄道の再生と地域の発展をめざす全道連絡会主催)が6月16日、札幌で開催され、115人が集まった。

 小田清北海学園大名誉教授が主催者を代表してあいさつ。「JRと北海道は、ローカル線危機は民間企業の経営問題というスタンスで、交通問題という認識がない。沿線だけの問題ではなく、鉄道は全国につながっていてこそ価値がある。沿線自治体に問題を閉じ込めておこうとする国の分断政策がある」と指摘。全道連絡会が4月から始めた「北海道の鉄道の存続・再生を求める道民署名」が5月中旬までのわずか1か月半で8万3千筆集まったことを報告した。

「運動の正しさ明らか」

 続いて、荒井聰(さとし)衆院議員が「北海道の鉄路の再生に向けて」と題し基調講演。JR本州3社が発足した際に負担した旧国鉄の債務が、1987年から2013年までの間、金利低下で5・5兆円も浮いたことをあげ、低金利で経営安定基金の運用益がなくなったJR北海道をこの利益で救済する方法を提案した。

 沿線自治体からは「災害」で3年間不通となったままの日高本線沿線を代表して池田拓(ひらく)浦河町長が訴えた。「交通・通信はユニバーサル(全国一律)サービスであり、国が行うべき公共サービスだからこそずっと国営でやってきた。全国どこでも同じ水準でサービスを保障すべき基本原則が今は経済優先で放棄されている。このままJR日高本線の廃線を認めれば、浦河のような人口の少ない町で次は郵便局と固定電話がなくなる」。池田町長は「バス転換すれば本数も増え便利になるとJR北海道が説明に来たが、その直後にJRバスの減便の話が出た。これがバス転換の現実だ。町民の暮らしを預かる行政の長として容認できない」とバス転換の動きをきっぱり否定した。

 水害のため東鹿越〜新得間が不通となったままの根室本線。集会に参加できなかった「根室本線の災害復旧と存続を求める会」から寄せられたメッセージは明快だった。31年前の国鉄分割民営化の時、自民党が新聞広告で明言した「ローカル線はなくなりません」との約束が破られたことを指摘するとともに「全国で3500万人の反対署名が集まった運動の正しさが明らかとなっている」と、当時の反対運動を改めて想起するよう訴えるものだ。同会は、6月21日に新得で開かれる集会への参加も呼びかけた。


皆で参加する政治に

 「JR北海道ローカル線の存続にはまず再生が必要だ。鉄道と他の交通機関との関係が考慮されていないなど、公共交通の利用者軽視が問題の背景にある。JRのスキーム(枠組み)を変えなければならない。私たち市民も議員を選んだらほったらかしにしていなかったか。みんなで参加する政治に変え、住みやすい北海道を作る中に鉄道をきちんと位置づけることが必要だ」。JR北海道研究会代表の宮田和保(かずやす)北海道教育大名誉教授がまとめる。(1)JR北海道の経営再生(2)他の交通機関も含めた総合交通体系の見直し(3)総合的な地域交通政策の確立(4)住民とともに歩み、住民・自治体が参加する鉄道の運営体制の構築―の4項目と、国が北海道の鉄道の再生・存続に向けた抜本的で持続可能な対策を立てること、北海道知事が主体的役割を担うことを求めるアピールを全員で採択した。

 硬直した官僚的運営に陥り解体した旧国鉄の失敗をも踏まえ、「JR後」の公共交通に住民本位の民主的な運営体制を求めた4項目のCは、地域で市民と対話し、署名を積み上げる闘いの中から出てきた注目すべき要求内容だ。全道連絡会は、近く予定される道への署名提出の際、副知事以上が対応するよう求める。

 全道連絡会は、要求実現のため、今後は闘いの場を国会に移すなど、中央への働きかけを強化する意向も示した。ローカル線問題は国鉄分割民営化が生み出したものだ。昨年末以降、新幹線で連続事故が発生するなどJR全体でも問題が噴出している。この日の集会は、民主的公共交通の確立なくしてJR問題の解決はないことを改めて示した。



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