2018年07月06日 1533号

【みるよむ (489)2018年6月23日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの総選挙―中傷合戦とその背景】

 2018年5月12日のイラク国民議会選挙では、多くの新しい政党や政党連合と候補者が登場した。しかし、実際の選挙戦では、女性候補に対する個人攻撃など、誹謗(ひぼう)中傷合戦が横行した。サナテレビは選挙直前の4月、バグダッド市民が選挙をどのように受け止めているのかをインタビューした。

 インタビューの最初に登場する女性は、選挙運動での女性に対する攻撃に憤りを隠さない。「政治家が、他の政治家を政策についてではなく個人の評判を落とすために批判する行為は、イラクの未来を破壊する。許してはならない」と厳しく批判する。また、このように選挙の名を借りて誹謗中傷するというやり口の出発点は「ポール・ブレマーだ」と指摘する。

 ポール・ブレマーは、2003年のイラク戦争直後、米軍の占領政策を進めた連合国軍占領当局(CPA)代表だ。このブレマーが中心となって、イラクを宗派や民族、性別などによって差別・分断する支配政策が進められ、現在の政府に受け継がれている。

 人びとは、誹謗中傷合戦―国会議員選挙の背後にいる勢力もしっかりと見抜いている。ある市民は「政治家同士の個人攻撃ばかりが続くが、その背後に巨大なマフィアがいる。国会議員の内75%はマフィアたちと関係を持っている」と断言する。こんな連中が市民の立場に立った政治をやるはずがない。

 ここでいうマフィアとは、イスラム主義勢力や民族主義勢力、それらと結託しイラクの石油利権をむさぼるグローバル資本のことだ。この連中は、私兵を使って暴力支配を続け、利権をつかむために汚職を繰り返している。

3分の2がボイコット

 国民議会選挙は、選挙管理委員会発表でも投票率が33%以下だった。あまりにもひどい選挙なので3分の2が投票をボイコットしたのだ。大規模な不正投票が明らかになり、1100万票の数え直しをすることになった。加えて、投票された用紙の一部が燃やされてしまった。選挙の腐敗は底なしである。

 サナテレビは、こうした政治状況を平等と民主主義を求める闘いによって変革しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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