2018年07月06日 1533号

【社会保障削減強める安倍 負担増で介護保険利用減へ】

 6月15日、予算編成の基本方針や政策の方向を定める「骨太の方針」が閣議決定された。そこには来年10月の消費税率引き上げを明記している。「社会保障の拡充と財政再建の両立」を名目に消費税増税がされてきたが、この名目は実行されてこなかった。しかも、安倍政権は社会保障費削減を次々と強行し、さらに攻撃を強めている。

 5月23日の財政制度審議会の財政健全化計画基本方針の建議は、社会保障については「給付と負担の見直しを含めた制度改革を進めることが不可欠」と強調する。医療・介護では、そのために3つの視点を掲げている。どれもが「給付と負担の見直し」が前提である。これは、医療・介護で受けるサービスの縮小とともに保険料や利用料の引き上げの宣言に他ならない。

生活援助の利用制限

 ここでは、介護分野での「見直し」攻撃を見てみよう。

 厚労省は5月2日、訪問介護の生活援助における利用回数を制限する告示を公布した。10月から施行される。具体的には、「通常の利用状況からかけ離れた利用回数になっているケアプラン」について市町村が地域ケア会議の開催などで検証をすることとなる。「不適切」とされたらそのケアプランが「是正」されて、本来必要とされる介護サービスが制限されてしまう。

 発端は、昨年夏に財務省がこの攻撃を仕掛けてきたことにある。月9〜11回の利用が平均なのに月31回以上の利用のケースは過剰だ、と非難したのだ。実態は過剰でなく、必要なサービス提供だ。昨年11月に公表された厚労省の調査結果もそれを証明している。月90回以上の利用事例では、8割が認知症、7割が独居のケース。たとえば、認知症で独居の人には1日に数回の利用が不可欠だ。調理や掃除、服薬管理など居宅生活に必要な生活援助が行われており、自治体は96%のケースを「適切またはやむを得ないサービス利用」としている。

 「是正」された場合、削減の説得はケアマネジャーが行うことになる。自主規制の誘導になれば、利用者との信頼関係が損なわれかねない。今年度の介護報酬改定では生活援助の報酬単価が切り下げられ、人員基準を緩和した。一連の攻撃は、介護保険から生活援助を外していく策動だ。

利用者負担の導入

 4月11日の財政制度審議会の財政制度分科会で「ケアマネジメントの質の向上を図る観点から、居宅介護支援に利用者負担を設ける必要性」が強調された。利用者負担がないため利用者からケアマネジャーの業務の質にチェックが働きにくい、との理由だ。

 ケアマネジャーは、介護サービス計画となるケアプランを作成し、利用者や家族などと連絡調整をする。だれもがケアマネジャーを利用できるようにするためプラン作成に利用者負担は設けられていない。利用者負担が導入されると、ただでさえ負担増に苦しみ必要な利用もがまんせざるをえない多くの利用者を直撃する。今も居宅サービスの受給額は支給限度額を下回っているが、その傾向に拍車がかかる。ケアマネジャーらの組織、日本介護支援専門員協会も、利用者負担導入が「質の向上」などにつながるものでないことを強く批判する。

 利用者負担導入は、「自立した日常生活を営むことができるよう」「福祉の増進を図る」(介護保険法)という介護保険の理念≠ノも反する制度改悪である。

負担増は限界超える

 8月から「現役並み」とされる所得者(単身年340万円以上、2人以上で年463万円以上)の利用料が3割に引き上げられる。約12万人が該当するが、2015年に一定所得以上を対象に利用料が1割から2割に引き上げられたことをみれば、この引き上げは今後利用料を原則2割にするための地ならしだ。

 介護保険料は今年平均6・4%上昇した。制度導入当初約3000円だった保険料は、朝日新聞調査で主要都市74市区のうち47市区が月6000円以上となり、家計に深刻な負担となっている。今後も引き上げが狙われている。

 自民党は軍事費倍増を提言した。この実行には社会保障費削減と消費税増税が不可欠とされ、社会保障攻撃は強まっていく。米朝会談実現など緊張緩和が確実に進む中で軍事費増は犯罪的だ。軍事費削減が平和への道であり、軍事費を福祉に回せと要求しよう。



 
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