2018年07月27日 1536号

【平和確立へと進む朝鮮半島 朝鮮敵視し対話拒む安倍は退陣だ 日朝国交正常化実現を】

 南北首脳会談(4/27)、米朝首脳会談(6/12)は、朝鮮戦争終結・朝鮮半島非核化への大きな一歩となった。7月6日、ポンペオ米国務長官が朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問し、非核化実現に向けた検証を行う複数の作業部会を立ち上げた。7月15日には、朝鮮戦争での米兵の遺骨返還をめぐる実務者協議も板門店(パンムンジョム)で開催された。

焦点となる日朝関係

 歴史的な首脳会談による関係改善で浮かび上がったのが、なお朝鮮を敵視し無条件の対話を拒み続ける安倍政権の姿だ。だが、安倍がどれほど逆行に執着しようとも、緊張緩和の流れは日朝国交正常化をいや応なくクローズアップすることになる。トランプ米大統領の「必要な資金は日本、韓国、中国が支援してくれるだろう」という発言も、日韓国交正常化交渉の歴史をたどれば、トランプ政権の思惑であるだけでなく、当然に導かれる方向となる。

 日韓国交正常化交渉は約15年に及ぶロングラン交渉であった。第1回会談・予備会談が開催されたのは、対日講和条約(サンフランシスコ条約)が発効する前年の1951年10月。日韓条約の締結は1965年6月だ。これほど長い年月がかかったのは「日本の植民地支配を合法かつ正当とする日本側と、不法かつ不当とする韓国側の立場が最後まで折り合わなかったため」(吉澤文寿『日韓会談1965』高文研)である。

 特に1953年10月第3次会談での久保田日本側首席代表の「日本が進出しなければ、ロシアか中国が占領し、現在の北朝鮮のように、より悲惨であったろう」の発言に、韓国側が反発。会談は決裂した。

 「仲介」役を果たしたのは米国だった。当時、米国はベトナム戦争への本格的介入を開始していた。朝鮮戦争後、米国は「反共の防波堤」である韓国に多額の軍事援助を行ってきたが、「日韓両国がベトナム戦争に介入した米国を支援するとともに、日米両国が韓国の経済開発を支援するために、国交正常化が急がれた」(吉澤前掲書)。そして、「日韓両国は双方の立場を近づけることのないまま、国交正常化を最優先にして、一九六五年に交渉を終わらせた」(同)というのが実態だ。植民地支配の清算を切り捨てたことは、後の日韓関係に深刻な影響を及ぼすこととなる。

 今日の米国は、財政難により、中東と朝鮮半島との「二正面作戦」を将来にわたってとり続けることは困難だ。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権を媒介に、多額のコストのかかる朝鮮半島での冷戦を終結させ、日中韓の経済支援を取り付けて非核化を実現し、さらには将来の市場ともなりうる朝鮮の経済発展を進める戦略に転換せざるを得ない状況にある。

 朝鮮戦争の終結、朝鮮半島非核化のプロセスと並行して、日本をはじめ関係国の経済支援は重要なテーマとなる。

国際法上の義務

 一方、日本政府には、日朝国交正常化を行う国際法的義務がある。対日講和条約第2条(a)は「日本国は、朝鮮半島の独立を承認して…朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」と定め、第4条(a)は「請求権(債権を含む)…の処理は、日本国とこれらの当局との間の特別取極(とりきめ)の主題とする」と定める。日韓交渉もこの条約に基づき始められた。ところが、日朝交渉は行われないまま、日韓基本条約第3条は「大韓民国は…朝鮮にある唯一の合法的な政府である」とした。朝鮮は「合法的な政府」ではないとしたのだ。

 しかし、1991年9月の国連総会で、韓国と朝鮮は全会一致で国連加盟が同時承認される。日韓基本条約第3条は事実上空文化したのだ。

 安倍は、朝鮮への経済支援は「核・ミサイル、拉致問題を包括的に解決し、国交を正常化した後」に行うとする。しかし、まず日本政府は、対日講和条約に基づき朝鮮政府を相手として国交正常化を果たす義務がある。核・ミサイル、拉致問題解決のためにも、朝鮮敵視と戦争政策を改め、ただちに対話・交渉を開始しなければならない。

日朝平壌宣言に基づき

 対日講和条約自体は植民地清算をうたっていない。しかし、それでは相互信頼に基づく関係が築けないことは日韓国交正常化過程が証明している。2002年「日朝平壌(ピョンヤン)宣言」では、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」と、日本の植民地支配の責任が明記された。とはいえ、その解決形態は日韓条約と同じ経済協力方式だ。真に賠償・補償を行い植民地清算をはたさなければならない。

 今や国境を越え、平和を求める市民が直接交流・連帯する時代だ。改憲・戦争路線もろとも安倍政権を退陣させる運動を強めるとともに、戦争被害者を中心に市民が結びあい平和と信頼に基づく日朝の対話と国交正常化を実現しなければならない。

日朝平壌(ピョンヤン)宣言(要旨)2002.9.17

 日朝双方は、国交正常化早期実現に向けあらゆる努力を傾注し、2002年10月中に日朝正常化交渉を再開する。国際法を遵守し互いの安全を脅かさない。北東アジア地域の平和と安定のため協力。朝鮮半島核問題について関係国間の対話を促進し、問題解決を図る必要性を確認。

 日本は植民地支配に対する痛切な反省と心からのおわびを表明。国交正常化後、朝鮮に経済協力を実施する。日本国民の生命安全に係る懸案問題(拉致問題)について朝鮮は再発防止策をとる。

 朝鮮はミサイル発射のモラトリアムを03年以降も延長。

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