2018年07月27日 1536号

【みる…よむ…サナテレビ(492)2018年7月14日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの若者に広がる読書ブーム】

 イラクでは今、若者の間に読書が広がっている。2018年4月、サナテレビはこの点についてバグダッド市民にインタビューした。

 若者に読書ブームが起きているというと、意外な印象を持つかもしれない。日本では、むしろ若者の活字離れ≠ェかなり以前から言われてきた。

 サナテレビは「このブームが起こる背景に、若者がソーシャル・メディアを信用できなくなったことがあるようだ」とコメントする。たしかに、インターネットではフェイクニュース(偽の情報)が流されたり、肝心の情報が意図的に隠されたりすることが多い。

 最初に登場する大学生は「自己教育をして意識を高める唯一の道は読書だと気がついた」と述べる。現在のイラクでは教育現場でイスラム教教義が強制され、テレビもインターネットも政府だけに都合の良い情報や少数派の宗教、民族への憎悪宣伝ばかりまかり通っている。だから読書によって自己形成をすることが重要と考えられているのではないか。この大学生は「読書は深く教育された人を作り出す」と言う。

 演劇関係者はイラクの読書の歴史を振り返る。豊かな文化・芸術の歴史を持つイラクだが、1960年代からの独裁政権によって多くの本が禁止され自由に読むこともできなくなっていた。今では世界中の書籍と情報を手に入れることができる。「その読書のために若者が集まる場がカフェだ。人びとは読書する以上に、どのような生き方をするべきかを探している」と語る。矛盾が目立つ社会の中で、より良い社会を作りたいという要求の表れといえる。

 最後に登場する批評家・小説家の男性は「宗教や政教分離の状況、資本主義化など、社会状況は深刻になり、本を読んで考えることが必要になっている」と指摘する。

 サナテレビは、若者に広がる読書ブームを通して、宗教支配とグローバル資本による格差拡大、失業、福祉・教育の切り捨てなどに立ち向かい変革しようとの意識が高まっていることを伝えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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