2018年08月10日 1538号

【福島・韓国と共に 被ばくと原発再稼働に反対 日韓市民の連帯で原発廃止へ ZENKO分科会】

 東アジアの平和・非核化にとって、日本と韓国で脱原発を実現することは大きな意味を持つ。日韓市民が連帯して原発廃止の共同行動へ―ZENKOin大阪(第48回平和と民主主義をめざす全国交歓会)の分科会で方向性が打ち出された。

 分科会は、韓国・慶州(キョンジュ)環境運動連合のイ・サンホン事務局長を招き、韓国での反核の闘い、放射能から健康を守る闘いの報告を受けた。福島原発事故避難者や避難者支援、再稼働反対、東電の刑事責任追及に取り組む市民、医療専門家らを交えて意見交換。今後、日本と韓国でのシンポジウムの開催、共通課題での声明・署名、医療専門家・研究家の日韓交流など、共同行動をめざす方向を共有した。

フクシマの衝撃と課題

 韓国では現在23基の原発が稼働する。2030年までに28基へと拡大する方針だが、新政権下の現在、建設は止まっている。原発なしでも電気は足りている現状だ。イさんは「原発は東海岸に集中していて、もし事故が起きれば日本にいちばん影響する。中国も原発は東側に多く、事故では韓国が被害を受ける。だから反原発運動は国際連帯が必要だ」と問題意識を語る。

 反原発の運動は、核廃棄物処理をめぐる反対運動とともに進んだ。「2003年に扶安(プアン)郡蝟島(ウィド)が処分場に選定されると、怒りが頂点に。扶安住民は108日間の抵抗闘争を行い全国から支援が。住民投票委員会を組織し、約72%が投票に参加し、うち91%以上が反対した。政府は不法投票と評したが、高濃度の廃棄物処理はやめさせ、2005年には住民投票法を制定した」。しかし慶州では、地域の経済発展が強調されて住民投票で約9割が賛成し、中濃度の廃棄物処理場が決まる。「ショックで反対市民は出て行った」

 福島原発事故は、韓国に衝撃をもたらした。その年の選挙では、すべての候補者が原発縮小を公約した。フクシマ後は住民投票や署名運動、裁判闘争も前進する。ロウソク革命の流れの中で、2017年には勝訴し、月城(ウォルソン)1号機の再稼働を止めた。「放射能の健康被害も問題にされるようになり、2014年には古里(コリ)原発から6`のイ・ジンソプさんが甲状腺がんで訴え、因果関係が認められた。それを機に、韓国では最大規模の618名が原告となって共同訴訟を闘っている。対象は原発半径10`内に5年以上住み、甲状腺がんになった人たちだ」

 慶州の原発がある村の住民からは100%、尿中にトリチウムが検出された。離れた市ではほとんど出ていない。「住民は『収容所』と呼び、抗議行動を起こしている。フクシマ以降、韓国市民も原発周辺を避けるようになった。2016年に移住を要求するようになったが、認められない。法案を提出しても、この2年間議論にもなっていない。韓国の憲法では居住・移住の自由≠ェあり、8月に再提案する。被ばく問題というより、権利の問題として論点を持っていきたい」と報告した。

市民交流、国連活用も

 福島原発かながわ訴訟の村田弘原告団長は「日本でも被ばくを受けない権利が注目されるようになってきた。被ばく健康問題を正面に据えている『子ども脱被ばく裁判』と(韓国市民の)交流ができればいい」。原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会の奥森祥陽事務局長は「『国内避難民に関する指導原則』に基づけば、福島避難者は国内避難民。国連人権理事会を活用する共同の行動も共有できないか」と具体的な意見を出す。医療問題研究会の山本英彦医師は「韓国でも、甲状腺がんが増えたのはいっぱい検査した結果だとする学者がいる。日本ではすでに破たんしている『スクリーニング効果論』と同じだ。専門家同士の交流を作れないか」と提起した。

 分科会全体の方針では、健康診断・医療費補償(被爆者援護法同様の制度)などを求める福島県・環境省・厚労省交渉の強化。再稼働阻止のため、関西電力前の金曜日行動継続とともに、原発周辺自治体への要請行動強化。かながわ訴訟勝利判決をはじめ原発損害賠償裁判や被ばく健康裁判、福島原発刑事訴訟の支援。避難者住宅確保の闘いの支援。国連人権理事会勧告を活かす運動―などが確認された。



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