2018年09月21日 1543号

【2019年度軍事費概算要求5兆5000億円超/またも史上最高額を更新/軍事費削り市民生活に回せ】

緊張緩和でも敵対姿勢

 8月28日、小野寺防衛大臣は2018年版防衛白書を閣議に報告した。

 白書は、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル開発について、昨年同様「わが国の安全に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威」とし、敵対姿勢を維持している。一方で、6月米朝首脳会談について「金正恩(キムジョンウン)委員長が、朝鮮半島の完全な非核化に向けた意思を、改めて文書の形で、明確に約束した意義は大きい」とした。

 米朝首脳会談を評価し、警戒態勢を緩め住民避難訓練を休止、中国、四国、北海道など全国5か所の陸上自衛隊駐屯地に配置した地対空誘導弾PAC3も撤収した。にもかかわらず、緊張がピークだった17年と同様の「差し迫った脅威」とするのは全く矛盾する。なりふり構わず朝鮮を口実にした軍拡を今のうちに進めようという魂胆だ。

 白書では「新たな装備品」として「スタンドオフ・ミサイル」導入を第一に挙げる。

 この種のミサイルは、「敵」のレーダー圏外から攻撃するためのもの。米軍が装備するトマホークなどの巡航ミサイルのことだ。白書は「隊員の安全を確保しつつ、わが国の防衛を全うするために不可欠」とし、「自衛のための必要最小限度の装備品」と強調する。例示されたミサイルJSMは射程280qを超え、LRASMに至っては800qに及ぶ。ともに最新鋭ステルス戦闘機F―35(42機購入予定)に搭載可能だ。レーダーをかいくぐるF―35に巡航ミサイルをセットすることは敵基地攻撃能力=先制攻撃能力の保持である。

 安倍戦争法の下では、日本政府の勝手な判断で「存立危機事態」と認定すれば、「防衛出動」が可能となる。法制面でも装備面でも、先制攻撃を可能としようとしている。

 先制攻撃のためには相手の反撃に備えなければならない。その備えに地上型ミサイル迎撃システム、イージス・アショアが「必要」となる。

6年連続の大幅増

 今夏、防衛省が取りまとめた2019年度予算概算要求は5兆2986億円。2012年の第二次安倍内閣発足以来、6年連続の大幅増でありまたもや史上最高額を更新した。しかも、今回の概算要求には、例年前年度額を計上していた米軍再編関連経費等約3000億円が含まれていない。見かけを取り繕うためだ。これを加えると5兆6000億円前後となる。18年度予算比6%超の伸び率だ(8/31毎日)。社会保障費の伸び率が2%でさらに圧縮が見込まれているのと比べれば、破格の聖域扱いだ。



 その4割を占める2兆708億円が「歳出化経費」だ。

 戦闘機や戦艦などの兵器は高額なため、支払いは数年度にわたる分割払いとなる。当該年度に予算化されていない次年度以降の分割払い分を「後年度負担」と呼ぶ。その後年度負担のうち、19年度に支払い時期を迎える費用が「歳出化経費」だ。家計で言えばローンの返済にあたる。安倍は自らが目指す戦争国家を築くため、欲望のままに高額兵器を買い続けた。その結果、借金返済に追われる羽目になっている。「家計が火の車」でも、安倍の眼中にはない。イージス・アショアは建物やミサイル発射装置を加えると3000億円を超えるともいわれている。しかも、配備後30年間の経費は総額4664億円に上るという。

 潤うのは、戦争を商売とする軍需産業だ。

最新兵器を言い値で買う

 軍事費が肥大化する要因の一つが、米国製最新兵器の購入だ。F―35やイージス・アショアの一部はFMS(有償援助調達)として米国政府と「契約」する。契約といっても対等な交渉ではない。米国政府は契約価格や納期を一方的に変更することが可能。防衛省が当初、購入価格を1基800億円としてきたイージス・アショアは1340億円、2基で2680億円となった。小野寺防衛相は「どのくらいの見積もりか一度も言ったことはない」と開き直っている。

 自民党安保調査会長・中谷元(元防衛相)ですら「FMSが増えすぎている。今回の要求額は約7千億円。異常じゃないか」とこぼす。

 来日したトランプに米国製兵器の爆買い≠要求され、FMSにより言い値で購入する。安倍が自慢げに語る「日米同盟の強固な絆」の代償だ。そのつけは、社会保障に回され市民生活は破壊される。

社会保障、防災は削減

 19年度の軍事費は、3000億円以上の増額だ。

 一方、厚労省は高齢化に伴う社会保障費の伸びは6300億円と見込んでおり、最終的に5000億円に圧縮する方針だ。その差額は1300億円。軍事費の伸びを半分に抑えるだけでもカバーできる。

 また、誰もが切実と考える防災部門概算要求(内閣府)は6920億円でなんと前年度から270億円(3・8%)もの削減。消防庁予算は総額で173・8億円。前年より20・9億円増だが、うち20・1億円は「オリンピック等に向けた安心・安全対策」。あきれるほどの人命軽視だ。

 安倍退陣、軍事費大幅削減で社会保障切り捨てに歯止めをかけ、防災をはじめ市民の命と生活重視へと根本的に政策転換させなければならない。
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