2018年10月12日 1546号

【沖縄知事選 玉城デニーさん大差で勝利 新基地NOの揺るがぬ民意示す 辺野古工事ただちに中止だ】

過去最多39万票の圧勝

 「はい、出ました!」。司会の声にワァーッと大歓声が上がった。午後9時33分、県内TV局の画像でNHKなど複数が玉城(たまき)デニー氏当選確実≠フテロップ。報告会場の那覇市・教育福祉会館に詰めかけた支援者は総立ちとなり、デニーさんとともに喜びが爆発した。

 翁長雄志(おながたけし)知事の死去に伴う沖縄県知事選挙は9月30日、投開票された。県政与党が推す無所属新人の前衆院議員、玉城デニー候補が、知事選過去最多の39万票を獲得。8万票の大差で初当選した。事実上の一騎打ちと言われ、安倍政権と自民、公明、維新、希望が推す前宜野湾(ぎのわん)市長の佐喜真淳(さきまあつし)候補を破った。

 最大の争点「米軍普天間基地の名護市辺野古移設」=新基地建設問題について、玉城さんは「県民が最も認められないものが辺野古新基地建設。翁長県政を継承し、ぶれずに辺野古に新しい基地を造らせないことを政府にしっかりと突き付けていきたい」と勝利インタビューで語った。

政権総ぐるみの攻撃

 厳しく苦しい選挙戦だった。翁長知事の急逝で、県政与党は候補者擁立から選挙対策本部の設置まで時間もなく急ピッチの取り組みとなった。

 一方、安倍政権は早々に現職だった佐喜真宜野湾市長擁立を決定し、選挙態勢を確立していた。2月の名護市長選では、必ず勝利すると考えられていた現職の稲嶺進候補が新基地容認の新人に大敗、という苦い記憶もある。政府・自民党は、菅義偉(すがよしひで)官房長官や小泉進次郎衆院議員を9月に入って3度も沖縄入りさせる。二階俊博自民党幹事長らが企業や商工団体へのテコ入れを徹底し、現職閣僚や党幹部が複数回応援に駆け付けるなど政権総ぐるみの選挙戦を展開した。

 4年前の知事選では自主投票の立場をとっていた公明党が、今回は佐喜真支持を決定。支持団体の創価学会は5千人を超える全国動員で期日前投票をすすめたと伝えられた。日本維新の会も何十台もの宣伝カーを繰り出した。

 選挙期間中、玉城さんが「アリが象に挑む選挙」とたとえたとおり、安倍政権という巨大な国家権力に抗う沖縄県民の闘いだった。

 佐喜真陣営は、翁長県政を批判し、基地問題ばかりのために県民生活は悪化した≠ニいうネガティブキャンペーンを展開した。県民所得全国最下位、子どもの貧困率全国1位などの数字を並べたチラシをばらまき、安倍政治の下で生活悪化が国民全体に及んでいることをさておいて、翁長県政で沖縄県民だけが生活苦を押し付けられている、との論法だ。選挙戦では、新基地建設に一切触れず、「暮らし最優先、県民所得を300万円に、生活を豊かにする最後のチャンス」と、県民を取り込もうとした。さらに政権の動きに呼応し、玉城さんに対する誹謗中傷やデマがSNSで大々的に拡散された。

遺志受け止めた沖縄県民

 しかし、投票箱のふたを開けると違っていた。県民の思いは揺らぐことなく辺野古新基地建設反対だった。県民は翁長知事の遺志を受け止め、新基地NOを鮮明に訴えた玉城デニーさんを選択した。

 9月30日の県内メディアによる出口調査では、最も多数を占める無党派層で玉城さんへの支持は7割に上った。また、公明支持層の3割、維新支持層の5割が玉城さんに投票したことも明らかになった。組織選挙で締めつけられても、投票行為ではそれとは別に少なからず玉城候補に入れていたことになる。2月市長選には敗れた名護市でも、玉城票が佐喜真票を上回った。

 県民は、佐喜真陣営の政権頼みの甘い誘惑≠ノ乗らず、翁長知事が訴え玉城候補が引き継いだイデオロギーよりもアイデンティティー≠支持した。米兵の父と伊江島出身の母の間に生まれて母子家庭で育ち、決して裕福ではない玉城さんの生い立ちが、戦後県民が苦労してきた生き様と重なった。玉城さんの「チムグクル(心の大切さ)で、誰一人も取り残さない社会をつくっていきたい」との訴えは多くの県民の心に響いた。


アベ改憲に痛打

 安倍政権のダメージは測り知れない。総裁選勝利から臨時国会にも改憲発議という9条改憲へのステップとして、沖縄知事選勝利を位置付けていたからだ。沖縄県民は、安倍政権の無法をきっぱりと拒否した。またも口にし始めた「国政選挙と地方選挙は違う」など、もう通じない。

 辺野古新基地建設の是非が最大の争点であったことは誰が見ても否定できるものではない。「選挙の結果は政府としては真摯(しんし)に受け止める」(10/1安倍首相)と言うのであれば、敗れた以上、辺野古新基地建設はただちに白紙撤回、埋め立て工事を断念し、護岸を撤去するしかない。それが民主主義だ。

裁判闘争、県民投票へ

 玉城デニーさんを支援する「平和・誇りある豊かさを!ひやみかち うまんちゅの会」女性局長の狩俣信子県議は「この選挙、なんとしてもデニーさんを勝たせないといけない。負けたら辺野古の海に沈んでも工事を止める」と公言していた。「女性局は徹底して電話作戦を最後までやり続けた。本土から来た応援が本当にうれしかった」と選挙戦を振り返った。

 辺野古の闘いは選挙後も続く。10月1日、辺野古ゲート前に着いたリーダーの一人、沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんは「天国と地獄の狭間にいて、今日は天国にいるような気持ちで辺野古に来た。しかし、安倍政権が諦めるとは思えない。もう一度ゲート前に結集してほしい。6日土曜日の総行動は、本部(もとぶ)町の塩川港に結集する。今後海上から土砂が搬入される。裁判闘争を経て、県民投票が次の大きな闘い。再度、辺野古に結集してほしい」と元気よく語る。

 翁長知事の遺志を継ぐ玉城デニー知事の誕生で、新基地建設阻止へ県民はさらなる闘いに立ち上がる。  (N)

 
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