2018年10月12日 1546号

【国連総会 日米首脳発言/日朝会談実現へ動け/軍事挑発を封じ込む市民の闘いを】

 国連総会は1年前にくらべ様変わりした。朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に核・ミサイル放棄をせまる圧力一辺倒演説だった日米首脳は、「対話による解決」を口にせざるを得なくなった。南北、米朝の首脳会談の成功により、あからさまな挑発行動は取れなくなった。その成功をもたらしたのは韓国ろうそく革命に代表される市民の闘いだ。米国内でも朝鮮戦争終結を求める平和の闘いが広がっている。日本でも日朝会談実現、「対話による解決」を政府に迫っていく運動をより強固にしよう。

一変した総会発言

 トランプ米大統領は9月25日、国連総会で「どの政権より多くの業績を上げた」と演説をぶち、失笑をかった。人権侵害、貿易戦争、スキャンダル。これほど多くの「業績」を上げた政権はない。だが、1年前、「破壊するしかない」と脅迫した朝鮮を「ミサイルはもはや飛んでいない。核実験も停止している。軍事施設の一部はすでに廃棄されている」と評価したことを笑うことはない。米朝首脳会談は、これまでの米政権は誰も成し得なかったのは事実だ。

 文在寅(ムンジェイン)大統領から直近の南北首脳会談の報告を受けたトランプは、2度目の米朝会談を表明。ポンぺオ国務長官がその準備のため訪朝する。6月の米朝会談で合意された「非核化」と「安全保証(朝鮮戦争終結)」をどう具体化するか。記者会見で非核化の見通しを聞かれたトランプは「時間の駆け引きはしたくない。2、3年、あるいは5か月だろうが問題ではない」と答えた。トランプも了解する「年内終戦宣言の実現」(4・27板門店宣言)は明確にされていない。

「たとえトランプでも」

 米政府、議会内には、「完全非核化」を終戦宣言に先行させ、和平の進展を妨害する勢力がいる。米朝会談の時期を「10月もありうるが、それ以降になる可能性の方が高い」と中間選挙以降に先送りする動きは、和平への期待を支持拡大に利用しながら、一方で好戦勢力の離反を避ける意図が現れている。

 支持率が低迷するトランプ。その人柄について「正直で信頼できる」と答えた人は32%(9/6〜9/9CNN調査)しかない。加えて金正恩(キムジョンウン)国務委員長の独裁体制に対する不信感もあり、史上初の米朝首脳会談は日本と同じように米国内でも正当な評価を受けていない。
 そんな中で、米国の平和団体は「朝鮮戦争の終結、外交による平和」を掲げ、ネットワークを広げているという(非暴力行動ウェブサイト)。その一つコリア(朝鮮)平和ネットワーク(KPN)は、キリスト教系の平和人権団体であるフレンズ奉仕委員会(AFSC)や反核団体ピースアクション、韓国・朝鮮系米国人活動家により結成。活動家を養成するセミナーを開催するとともに主要な議員(軍事委員会のメンバーなど)に、米朝会談実現への働きかけをしている。

 女性平和団体コードピンクと連携しているのが「非武装地帯を行く女性たち」。朝鮮分断70周年の15年に、30人の代表を送り平壌(ピョンヤン)とソウルでシンポジウムを開催するなど平和条約の締結をめざして幅広い活動を続けている。ワン・コリア・ナウは約20の韓国・朝鮮系組織を束ねるネットワーク。ピースアクションなどとの連携で影響力を高めている。

 いま、在米平和団体は「たとえトランプの政策であっても平和へのチャンス」だと捉えている。オバマ前政権時代の対朝鮮政策「戦略的忍耐」は、何もしないことだったからだ。特に在米韓国・朝鮮系の団体には「中東に比べ、東アジアへの注目度は低い。コリアン・アメリカンの活動がより必要」との思いがある。ある活動家は「南北首脳会談まで統一問題はタブーだった。共産主義者か親北朝鮮メンバーと非難された。今は誰もが口にできる」と語る。「朝鮮半島の平和を支える市民が増えれば増えるほど、世界の指導者たちはそれを否定できなくなる」と確信している。

口先だけか

 日本政府はどうか。昨年の国連演説で朝鮮バッシングに終始した安倍首相は、今年「北朝鮮との相互不信の殻を破り、新たなスタートを切って、金正恩委員長と直接向き合う用意がある」と発言した。さすがに「圧力」を口にすることはなかったが、国交問題は「拉致、核・ミサイル問題の解決の後」との姿勢を改めていない。だから、安倍の言葉は誰も信じない。国連演説の2日前、トランプとの夕食後、同趣旨の発言をしたところ「(安倍は)何度も決意≠表明してきた。ところがこれまで、会う"兆し"すら、まったく見えてこない。決意と現実は全く逆である」と米ワシントン・ポスト紙(9/23)に酷評された。

 「不信の殻」をより強固にする安倍政権の姿勢―緊張をあおり軍拡に執着する動きが東アジアの平和を妨害していることを徹底して暴くことが必要だ。米国や韓国、世界の反戦・平和の闘いと連帯することが、各国の政治指導者を平和の道に縛り付けることになる。

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