2018年10月12日 1546号

【たんぽぽのように(3)朝鮮半島平和の議論で抜けていること 李真革(イチンヒョク)】

 朝鮮半島の南と北の代表2人が3回目の首脳会談を行って「9月平壌(ピョンヤン)共同宣言」を発表した。この宣言は、南北関係の改善、軍事的緊張局面の緩和、朝鮮半島の徹底的な非核化という3つの方向で、「板門店宣言」の内容をより深めた。事実上、終戦宣言をしたのと同じだという評価も出ている。

 それから間もなく、ニューヨークで開催された第73回国連総会の演説で文在寅(ムンジェイン)大統領は「北は長い孤立から自ら抜け出し、再び世界の前に立った。北は(平和を選択しようとする)私たちの願いや要求に応えた」とし、「今、国際社会が北の新たな選択と努力に応える番」と明らかにした。続いて「金正恩(キムジョンウン)委員長の非核化への決断が正しい判断であることを確認するべきである」と重ねて強調した。

 そして、日本の安倍首相も国連総会の演説で「私も北朝鮮との相互不信の殻を破り、新たなスタートを切って、金正恩委員長と直接向き合う用意がある」と述べ、金委員長と会談する用意があることを表明した。昨年9月、同じ国連総会の演説で、北の核問題と関連して「必要なのは、対話ではなく、圧力だけだ」と強調した時とは180度変わった姿だった。

 3回目の南北首脳会談と平壌宣言について、否定的な反応を吐き出していた日本の右派勢力とメディアは、安倍首相の国連総会の演説にあわて少しは気づいたようだ。南北関係と朝米関係が進展している状況の中で蚊帳の外に飛び出したのは、結局のところ自分自身だった現実を今になって見ざるをえなくなったようだ。

 和解と平和の代わりに、対立し戦争をしたいとするのは誰なのか。モリ・カケ問題を見ても、「惑世誣民(ホクセムミン)」(人びとを惑わしだますこと)しながら嘘を吐いている、信じられない者は誰なのか。彼らがしていない話は何なのか。

 文大統領の今回の平壌訪問には、非常に多くの財閥総帥が同行した。サムスンのイ・ジェヨンは、以前の政権との癒着の問題でいまだに裁判を受けている。そして、民主労総と韓国労総の委員長も一緒に訪問したが、その姿を確認することは非常に難しかった。南と北の労働者が会ったというニュースも聞いたことがない。

 戦争の脅威が減ることは確かに歓迎すべきことだが、どんな平和を作っていくのかもそれに劣らず重要である。切断された南と北の鉄道が再び繋がって汽車が朝鮮半島の全域を走ることは重要だが、その列車を動かす労働者のより良い生活も放棄することはできない。

 誰のための、誰による平和を望んでいるのだろうか。

 今こそ、南と北、そして日本の 民衆が声を大きく出さなければならない時だと思う。

(筆者は市民活動家、大阪在住)
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