2018年10月19日 1547号

【辺野古新基地建設埋め立て承認撤回/工事継続は許されない/直ちに中止し原状回復を】

 10月4日、辺野古新基地建設反対の民意を一身に受けた玉城デニー沖縄県知事が初登庁した。翁長前知事が決定し、8月30日に県が発した「埋立承認撤回」を支持し、安倍政権の不当な対応を許さず、工事中止を全国から迫る時だ。

 玉城新知事は、就任記者会見冒頭、「辺野古新基地建設反対に全身全霊で取り組む」とした。8月31日の辺野古新基地建設埋め立て承認撤回に対して、安倍政権は執行停止申し立てなどの法的措置を公言しているが、何の正当性もない。知事は「県は公有水面埋立法の趣旨にのっとって適法に撤回を行った。県の判断に従うよう求める」と述べた。

 これまで国は、司法まで利用して新基地建設の埋め立て工事をごり押ししてきた。

 県は、2013年12月の仲井真知事(当時)による埋め立て承認が違法・不当であるとして15年10月翁長前知事が埋め立て承認を取り消した。

 国は、取り消しを不服とし、以下の対抗措置をとった。

 (1)沖縄防衛局の行政不服審査法に基づく「審査請求」申し立てを発端に、国交相は県を相手に訴訟を起こした。(2)16年3月の和解後も、国交相は知事に対し地方自治法に基づく「是正」を命じた。(3)知事が是正指示に従わないのは違法として、国は再び裁判に訴え、最終的に16年12月、最高裁は取り消しを違法とする不当判決を出した。

 こうして政府は、埋め立て工事を強行した。

 今回の撤回についても、安倍政権は前回同様、手段を選ばず撤回取り消しを強要する構えだ。

安倍政権に「前科」

 だが、この埋め立て承認取消を巡る政府・司法の対応は、全く不当なものだった。

 まず、(1)の承認取消に対する審査請求の問題だ。

 地方自治体には、地域住民の利益のために私人(市民や企業)に義務を課し、権利を付与する役割がある。法令の規定を満たすかどうかのみで決定され、これを「行政処分」と呼ぶ。課税(納税義務を課す)、営業許可(営業する権利を与える)などがそれにあたる。権利・義務の付与・はく奪に不服があれば、被処分者(当事者である市民や企業)は不服申し立てや裁判に訴えることができる。

 沖縄防衛局(国)に対する公有水面(海、河川、湖沼)埋め立て承認も、公有水面埋立法に基づき埋め立ての権利を付与する行政処分だ。海の埋め立ては、漁業者の経済的利益を損ない、地域住民の生活環境や生態系に悪影響を与えかねず、処分には県の厳正な判断が問われたのだ。

 翁長前知事は、仲井真元知事による埋め立て承認は法令の規定を満たさないものを誤って処分したとして取り消した。その取り消しを不服とした沖縄防衛局が審査請求した。和解後、取り下げたとはいえ、あまりに悪質だ。そもそも不服申し立ての制度は、公権力(自治体など行政機関)の誤りによって私人が受けた不利益を回復するためのものだ。公権力である国・自治体は対象ではない。まして、防衛省の出先である沖縄防衛局が申し立てた相手は国交相。ともに基地建設推進の安倍内閣の一員だ。本来門前払いすべき申し立てを国交省は容認したのだ。

地方自治に不当な介入

 国交相による(2)の是正命令も問題だ。戦前、都道府県知事は国の出先機関の位置づけだった。戦後もその影を引きずっていたが、現行地方自治法は、国と地方自治体の立場を対等とする。国による地方への介入は抑制的でなければならない。埋め立て承認の処分権限を知事が持つのは、地元事情に詳しい知事が適任とされ、違法があれば迅速に承認を取り消すことで被害の拡大を防ぐことと解すべきである。政権の都合で介入することは許されない。

 国と自治体が争った時に調整する国地方係争処理委員会が国と県の「真摯な協議」を求める勧告を行ったにもかかわらず、安倍政権は無視した。(3)のように、県が是正指示に従わないと裁判に訴え、裁判所は国の主張を追認。「仲井真知事の処分に違法性はないから、その処分を取り消した処分は違法」として、争点である翁長前知事の承認取消の適否を審理することなく、不当判決を行ったのだ。

違法行為を重ねた国

 今回の承認撤回は、承認を受けた国が実際の工事で違法行為を重ねたことによるものだ。承認条件であった事前協議は全く実行されなかった。工法変更に伴う承認手続きも国は取らなかった。ジュゴン保護、サンゴ移植など環境保全措置はずさんで、かえって環境破壊を起こす手段すら取った。撤回は、県が強調するように「違法行為を放置できない」行政の当然の行為である。基地建設容認・反対を問わず撤回されて当然だ。

 菅官房長官は承認撤回表明に対する損害賠償請求をちらつかせて県を脅した。だが、今回の撤回の原因は、沖縄防衛局の許可条件に反する数々の違法行為であり、度重なる県の行政指導にも一切従わなかったことだ。賠償請求できる根拠はない。

 今、安倍政権がしなければならないのは、承認撤回処分に従い、ただちに工事を全面中止し、原状回復することだ。

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