2018年10月26日 1548号

【イラクと日本 市民デモ弾圧に抗議を 抑圧政府を支える日本のODA】

新首相決定で円借款

 イラクでは、5月12日総選挙以降も各政党や政治勢力の権力争いが続いていた。4か月半以上たった10月2日、アデル・アブドルマハディが新首相に就任することがようやく決まった。

 アブドルマハディは、シーア派イスラム政治勢力の支持を基盤に石油相や副大統領、財務相を歴任してきた。イラクの石油資源をはじめとした利権をグローバル資本に明け渡してきた人物だ。

 イラク国営南部石油会社は、日本の政府開発援助(ODA)による製油所のプラント新設事業が年内には本格的に始動し、「最終的な円借款の合計は3000億円を超える」と発表した。日本政府は、2016年度末までに累計約6890億円のイラクへの円借款を承認済みで、今回の新設事業分を加えると1兆円を超えるとされる。

拷問、殺害が続出

 政治家たちが利権・権力争いに没頭している中で、イラク市民は停電や水道の停止、毒物混入といった社会サービスの崩壊に怒りのデモを繰り返してきた。これに対し、警察やイスラム政治勢力の私兵が人権抑圧と暴力的な弾圧を強めている。

 社会的に活躍する女性が殺害されている。9月には美容センター所長が宗派の私兵によって毒殺された。人権団体の代表が暗殺された。イスラムの名による宗教支配も強まっている。10月には南部ディカール州で書店の店主が「無神論を広げる書籍を持ち込んだ」という理由で逮捕された。

 社会サービスの再建を要求して大規模なデモが展開されてきたバスラ州では、デモ参加者が警察、治安部隊による人権侵害や弾圧を受けている。

 活動家や抗議行動参加者を対象に、警察が毎日尾行を続け、自宅を襲う夜間一斉検挙が行われる。政府軍の目の前でも白昼堂々と誘拐される。治安部隊では拷問が行われている。その犠牲者は、ある時は女性であり、ある時は抗議行動参加者だ。殺害まで行われている。バスラの市民に対するこうした弾圧が1か月前から毎日続いている。

 何百人もの抗議行動参加者が、逮捕されることを恐れて夜中に自宅から離れた路上で過ごしている状態だ。

世界各地で抗議行動

 イラク労働者共産党は、イラク政府とそれに連動している宗派の私兵たちの残忍さと非道に反対する声を上げるように呼びかけている。

 世界各地のイラク大使館や領事館の前で抗議行動やデモが展開されている。電話やインターネットによって、国連や国際組織がイラク政府に圧力をかけるように要求している。バスラ市民への支援のメッセージを送り、バスラの市民は孤立していないこと、不当な弾圧は認められないことをイラク政府にわからせようと訴えている。

 自由と平等を求めるイラク市民に連帯し、イラク政府の人権抑圧に抗議の声を突きつけよう。グローバル資本の利権のために抑圧政府を支える日本のODAに反対しよう。

◆抗議先 駐日イラク大使館 03-5790-5311

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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