2018年11月02日 1549号

【どくしょ室/辺野古に基地はつくれない/山城博治 北上田毅 著 岩波ブックレット 本体520円+税/八方ふさがりは政府のほうだ】

 沖縄県の辺野古埋立承認撤回に対し、日本政府は「違法・不当」な申し立てを行い、新基地建設工事再開を狙っている。だが、本書は、この工事がいかにでたらめで無謀なことかを明らかにし、建設阻止の現実的展望を示している。

 辺野古新基地建設は、県民の激しい抵抗により大幅な遅れを余儀なくされた。政府は、当初計画していた大浦湾最奥部からの埋立開始を変更し、工事がより簡単な辺野古崎の浅瀬から土砂を投入することを狙った。工事が進めば県民の抵抗も静まるだろうと「あきらめ」を誘う戦術である。

 しかし、この時点で外周防護壁は基礎工事のみで、完成高より6bも低く、このまま土砂投入がされれば、台風などの高波で汚濁水が外海に流出し周辺の海は著しく汚濁される。県に提出した環境保全図書の大幅な変更となる。8月17日の土砂投入が迫った7月27日、翁長(おなが)知事は「本当に傍若無人なこれまでの工事進捗(しんちょく)状況」と批判し埋立承認の撤回を表明した。

 本書では、県の埋立承認撤回の事由となった防衛局の違法・違反行為が詳細に述べられている。県に無断で行った設計概要の変更は公有水面埋立法違反に当たること。埋立承認の留意事項で定めた環境保全対策の事前協議について、防衛局が「協議書」を提出したのみで一方的に打ち切ったこと。「サンゴ類の移植・移築を着工前に実施する」としていたが、絶滅危惧種であるオキナワハマサンゴ、ヒメサンゴなどを発見しながら仮設道路工事を強行し、サンゴ群を死滅させたこと。ジュゴンの餌場である海草藻場の移植を実施せず、「保護に万全を期す」とする埋立承認の留意事項を全く無視していること。岩礁破砕許可を得ずにコンクリートブロックを投下したこと等々。このほかにも、ゲート前の座り込み、海上行動に対する不当弾圧・暴力行為など、違法行為のオンパレードなのだ。

 強引に進められてきた工事だが、八方塞がりとなっているのは政府・沖縄防衛局の方だと本書は強調する。県の撤回決定の最大の理由の一つである大浦湾の活断層と「マヨネーズのような」といわれる軟弱地盤は、現行計画そのものを否定するものだ。それ以外にも、米国防省飛行場設置基準での周辺の高さ制限を超える建造物が国立沖縄工業高専など多数存在すること、県外からの土砂搬入における特定外来生物駆除が極めて困難なことなど、建設に立ちはだかる問題点が次々と明らかになっている。

 10月4日、玉城デニー新知事が就任した。設計変更申請の許可をはじめ県知事が持つ権限で工事を止められることは一層確実となった。本書は「何よりも県民がけっして諦めないこと。そうした県民の強い意志がある限り、辺野古新基地建設は必ず頓挫する」と確信を伝える。 (N)
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS