2018年11月16日 1551号

【日本公衆衛生学会で手作り自由集会=@第7回低線量被曝と健康被害を考える集い 被曝の真実伝え 苦悩への共感広がる 福島・郡山市 投稿 医療問題研究会 高松勇】

 10月25日、日本公衆衛生学会(郡山市開催)に合わせて、「手作り自由集会・第7回低線量被曝と健康被害を考える集い」が開催されました。福島原発事故後の2012年に山口市で第1回を開催して以降、今年で7回目。開催地が事故現地の福島県であり、討議を通じて事故と健康被害の問題を積極的に考える機会にすべきと考え、臨みました。

原発事故後の健康被害

 第1部「福島原発事故後の広範な健康被害の増加を考える」では、林敬次さん(医療問題研究会)が、(1)甲状腺がん異常多発(2)福島県を含む汚染都府県における周産期死亡の増加に関して2本の英文論文を証拠に報告しました。

 一つは、甲状腺がんの異常多発に関する論文です。津田敏秀教授(岡山大学)は、福島の甲状腺がん発生が日本のがん統計との比較(発症率比の検討)で20〜50倍と桁違いの異常多発であり、多発は事故による影響以外に原因が考えられないことを事実で示しました(Epidemiology誌)。

 もう一つは、福島原発事故後の周産期死亡率増加が、ドイツ・日本の共同研究で明白になったことです。ハーゲン・シェアプ博士(ドイツ生物統計学研究所)らと林さん、森国悦さんらの共著研究(Medicine誌掲載)で、周産期の小児が2014年末までにすでに300人以上犠牲になっていることが示されました。

村人全員から生活を奪った

 第2部は「福島の現地から」と題して、放射能汚染とその被害を受けた人びとの苦悩を報告していただきました。

 三春町在住の写真家・飛田晋秀さんは写真を使って報告。飛田さんは3・11後の状況を撮影し、「事故を風化させない」「事故後の状況をありのままに知ってほしい」と、日本各地で写真展と講演会を行っています。荒れ果てた家屋、野生化した家畜、耕作が放棄され雑草が伸び放題の田畑。いまだに高い放射線値が計測されている事実。フレコンバックの山、植物の異常(バラの奇形、モミの木の葉の異常)など、原発事故が起きると街はこうなってしまうという姿を知り、福島の今を考える貴重な報告でした。

 郡山市在住の塚原広さんから発言がありました。現在も多くの方が狭く不便な仮設住宅での避難生活を強いられている。とりわけ子どもたちにストレスの多い生活で多くの訴えがあったが、ゆっくり休んでもらえるように心を配って寄り添ってきた。行政の放射線測定は高さ地上1・5bで真の土壌汚染を測定しておらず、事実を正しく伝えていない。汚染が高いと言われている溝の泥を清掃する際も一切測定を行わず、不都合なデ―タは見ようとしない行政の姿勢など、現状への怒りを語りました。

 飯舘(いいたて)村・佐藤八郎村議が続きます。飯舘村は事故前は自然豊かな美しい農村だったが、事故後は放射能で高濃度汚染され避難地域に。事故当初、県から「放射能の専門家」が来て「300マイクロシーベルトでも大丈夫」と村中で言って回った。多くの人が安全と思い込んで早期避難の時期を逃したが、その後、国から村全体の避難指示が出される事態となった。「だます、隠す、嘘をつく」が行われている。樹木は枯れ、小動物はいなくなり被曝のすごさを日々に感じている。村では生活する場を村民全体が奪われた。残された老人が自殺をしたり、悲惨な辛い出来事も少なくない。村の年寄りは「戦争は成人男子だけを奪ったが、原発事故は村人全員から生活を奪った。原発事故は戦争よりもひどい」と嘆く。しかし、事故に負けず放射能汚染や健康被害の実態を訴え、除染の徹底、生活再建、医療の保障、完全賠償をめざしたいと報告されました。

「継続を」の励ましも

 参加者の感想では、「福島の方の報告により、改めて“今”を教えてもらえた」「本当の声を聴くことが難しい中で福島在住のいろいろな方の声を聴くことができて有意義だった」「写真の報告は実に衝撃的でした。植物に現れた成長の変化を見せてもらい、放射線の影響が強いことがよく分かりました」と、放射能汚染の現状への驚きと人々の苦しみに対する共感が寄せられています。また、「来年も続けていただきたいです」「継続は大事なので続けてください」とうれしい励ましもいただきました。

 継続して開催してきたこの「集い」が、学会の中で確実に根を下ろし、低線量被曝と健康被害を考え、被災者の声に耳を傾ける重要な機会として定着してきていると感じました。さらに継続と発展をめざしたいと思っています。

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