2018年11月23日 1552号

【トランプNO突きつけた米中間選挙/分断差別に反撃する女性、若者、社会主義者/選択は1%の政治か99%か】

 米中間選挙が11月6日投開票され、連邦議会下院で野党民主党が過半数を占めた。トランプ政治に米国民の下した審判をどうみるのか。日本のマスコミは「ねじれ」「分断深まる」と否定的に描くが、それは表層に過ぎない。注目すべきは、トランプの排外主義にノーを突きつけ、1%の富裕層のための政治を変革しようと闘った99%の市民の前進だ。

それでも「大成功」か

 米国「選挙の日」となる11月6日。連邦議会や州の知事・議会、住民投票まで一斉に投票が行われた。

 連邦議会は、各州2名が定数である上院(任期6年。定数100、改選35議席)で、与党・共和党が過半数を維持する模様だ。各州の人口に比例して議席が配分される下院(任期2年、定数・改選435議席)では、民主党が225議席以上となり、過半数を超えた(11月11日現在、最終結果は確定していない)。予算審議など、トランプ大統領の政策にブレーキがかかるのは確実だ。

 同時に行われた州知事選挙。知事は選挙に関する行政権限を持っているため、所属党の大統領選を有利にする。今回50州のうち、36州で選挙が行われ、民主党が7州で共和党現職を破った。

 選挙結果は、与党共和党の敗北を示している。それでもトランプ大統領は「大成功だった」とツイートした。自身が応援に入った上院議員や激戦州の知事選に勝利したためだという。これが強がりであることは、選挙翌日の記者会見で移民やロシア疑惑に関する質問をした記者に激昂した態度に現れている。下院の与野党逆転で、大統領の弾劾訴追が可能となった。投票者の40%以上が、弾劾すべきと回答している(出口調査)。
 トランプ敗北を示す顕著な事例は、トランプが侮蔑する移民や女性、LGBT(性的少数者)などの当事者が反撃したことだ。今回、上下両院合わせ250人以上の女性候補者が立ち、当選者は先住民、イスラム教徒やLGBTを含む107人を超える。史上最多だ。




本当の対立点は

 トランプがことさら女性や移民などの分断・差別を煽るのは、本来の対決点から目をそらすためである。最も重要なのは、他人の富を奪う1%の富裕層と奪われる99%の貧困層の「対立」なのだ。

 トランプはラストベルト(サビついた工業地帯)の白人労働者を支持者に取り込んできた。従来民主党の支持基盤であった労働者がトランプに期待したのは、民主党政権に対する不満からだった。

 7年前、オキュパイ(ウォール街占拠)運動は、金融資本の規制などを求めた。若者たちは「われわれは99%だ」と叫び、ひとにぎりの富者・資本家に支配される政治に抗議した。だが、16年の大統領選、「初の女性大統領」を売りにした民主党クリントンはウォール街からの献金を受け、大企業の味方だった。失望した人びとは投票に行かなかった。投票率は48・62%と最低レベル。結果、支持率40%程度のトランプが相対的に「多数」となり、勝ちをさらった。

 今回、中間選挙としては過去50年間で最も高い投票率(47・3%)となった。投票者数は約1億1500万人。4年前に比べ3200万人以上増えた。反トランプ勢力が有権者登録や投票を呼びかける戸別訪問を各地で繰り広げた結果でもある。出口調査によれば、全体の16%が初めて中間選挙で投票した。18〜29歳の若者は188%増えたという。その67%が民主党に投票した。

 だが、学費ローンや高額医療費の負担を強いられる若者層にとって、単に、民主党か共和党かの選択ではない。新自由主義ではない、99%のための政策を掲げる候補かどうかが問題なのだ。その選択肢を示したのがアメリカ民主主義的社会主義者(DSA)に代表される民主党左派勢力だ。

 民主党候補として闘ったDSAは選挙後の声明で「民主党指導部は真剣に(トランプ共和党に)反対運動に取り組む能力も意思もなかった」と批判している。トランプが選挙後の記者会見で「民主党とも協力できる」と語ったのは、妥協でも懐柔策でもない。民主党内には企業から献金を受ける者が多数だからだ。

新自由主義への対案

 DSAはメディケア・フォー・オール(すべての人のための医療)やカレッジ・フォー・オール(すべての人のための大学)、すべての人の平等な権利、労働運動の活性化を掲げて闘い、2人のメンバーが下院議員に当選した。ニューヨーク州14区の最年少女性オカシオコルテス(29)。ミシガン州13区の女性候補ラシダ・タリーブ。初のパレスチナ系議員となる。州議会でも7人の当選者を出した。

 8月に公表された世論調査(ギャラップ社)では、民主党支持層で社会主義に肯定的な回答は57%にのぼった。全体では37%、資本主義の56%には及ばないが、18〜29歳では51%対45%で社会主義が上回った。資本主義支持は8年間で23%減った。99%のための政策を掲げ、1%の富者との対決を鮮明にする。米中間選挙は、そうした政治勢力への支持が拡大していることを示している。



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