2018年11月30日 1553号

【1553号主張 入管難民法「改正」案に反対 移民法、差別禁止法をつくれ】

搾取と奴隷労働

 今国会最大の対決法案である入管難民法「改正」案は、技能実習生の失踪に関する調査集計の改ざんなど早くもボロが続出だ。それでも審議を強行する衆院法務委員長(自民)に解任決議案が出され、会期(12/10)内成立という思惑通りには容易に進まない。安倍政権は会期延長も狙う。

 私たちは、この入管難民法「改正」案には断固反対である。外国人労働者を低賃金・無権利状態に置き、家族の帯同も認めず、人間をモノ扱いする政府案は認められない。これまで政府は「非熟練労働に外国人は受け入れない」としながら、「実習生」「留学生」の名で脱法労働を拡大し、「時給300円」「旅券取り上げ」などとんでもない人権侵害を横行させてきた。現在の技能実習制度は、送り出し国と受け入れ国で二重の搾取を生み移動・職業選択の自由もない日本版奴隷制度だ。即刻、廃止すべきだ。資本のもうけのために人権侵害を拡大する政府案は撤回しかない。

 いま日本の外国人政策を根本的に改めるときが来ている。

人間として扱え

 安倍政権は、この法案で外国人労働者の5年在留や永住を拡大する一方、「移民政策ではない」とごまかす。

 なぜ、移民政策としないのか。それは低賃金・無権利の労働力が欲しいだけで、外国人を人として対等に受け入れたくないからだ。外国人労働者には家族もいる。教育、医療、社会保障も必要だ。国際基準に基づいて移民を受け入れるとは、人種、宗教、国籍などでの差別を認めず、すべての人が法の下で平等な日本社会を作ることを意味する。

 しかし、日本は戦前の植民地主義を清算せず、戦後も排外主義のもと一貫して外国人差別構造を築いてきた。移民政策は、朝鮮、韓国、台湾など植民地としてきた国・地域の人びとの日本での法的地位の是正を焦点化する。政府は排外主義政策を維持したいのである。国会では、「外国人は医療費を不正受給する」などヘイト、排外主義むき出しの論議まで出る始末だ、

 日本の最大の問題は、包括的な差別禁止法がないことだ。人種差別撤廃条約(1965年国連総会採択)を批准したのは、ようやく95年。国連からも朝鮮学校無償化問題など外国人差別是正の勧告をたびたび出されている。植民地主義の清算、外国人労働者の奴隷状態の根絶が必要なのだ。

多民族の共生で平和を

 在留外国人は256万人(2017年末、特別永住者を含む)と、すでに移民国家≠ナある。東京都では20代人口の10人に1人は外国人。外国人は地域、職場に定着した隣人、友人だ。必要なのは、差別助長の入管難民法「改正」ではなく移民法と差別禁止法であり、世界の多様な国籍の人を幅広く受け入れて公平に扱い友好を深めるべきだ。外国人差別構造をなくすことは、日本の労働者の低賃金構造を正し、社会保障削減を阻むことにもつながる。多様な移民を受け入れた社会は活力に富み、友好・平和を築く。

 地域では、人種差別撤廃条例を作る動きや外国人不就学者をなくす取り組み、多民族、多国籍の共生コミュニティづくりの実践も生まれている。地域から外国人の人権を守り、平和を作る取り組みを強めよう。

  (11月18日)
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