2018年12月07日 1554号

【辺野古新基地建設/集中協議形骸化させる安倍政権/沖縄県は係争処理委員会提訴へ/新基地建設断念、普天間無条件返還を】

 沖縄県知事選挙で辺野古新基地建設拒否の民意が示されて2か月。安倍政権はその民意を踏みにじり、建設工事を強引に進めようとしている。新基地建設の正当性が全く崩れている今、沖縄の闘いと連帯し、地域の隅々から安倍政権を追い詰めねばならない。

 11月22日、沖縄県は辺野古新基地建設をめぐる集中協議の場で、国に対し国地方係争処理委員会(以下、係争処理委員会)へ審査を申し出ることを通告した。

 経緯を振り返る。

 沖縄県は翁長前知事の決定に基づき、8月31日、新基地建設のための公有水面埋立承認を撤回した。撤回の理由は、埋立工事着手以降の沖縄防衛局による数々の違法行為と承認要件に反する事実の発覚だ。県は埋立承認に環境保護措置の実施や事前協議の条件を付していたが、沖縄防衛局はジュゴンやサンゴの保護措置をなおざりにし、県との事前協議は一方的な通告でおわらせ、違法行為を繰り返した。

 加えて、巨大構造物など到底耐えられない「マヨネーズ状」ともいわれる軟弱地盤や活断層の存在も発覚し、承認申請時点での工法では公有水面埋立法の承認要件を満たさないことも明らかになっている。県は立ち入り調査などを求めたが、沖縄防衛局はこれに応じず、承認撤回へと至った。

 沖縄防衛局は、承認撤回を不服として国土交通大臣に行政不服審査法に基づき審査請求するとともに、撤回の効力停止を申し立て、国交相は10月30日、効力停止を決定した。

 玉城(たまき)デニー知事は安倍政権に対話による解決を求め、11月の1か月間国と県による「集中協議」が実現した。だが、11月9日、14日、22日の協議でも国は従来の姿勢を崩さず、「協議」とは名ばかりのセレモニーにおわった。

我田引水の国交相決定

 国は「集中協議」にまともに応じず、協議の場は11月最終週を残すのみとなる。一方、係争処理委員会への申し出期限は国の関与から30日以内、つまり11月30日。協議は続けるにしても、県としては並行して申し出ざるを得ない。

 係争処理委員会は1999年の地方自治法改正で新設された。同法「改正」の権力者の狙いは、市民生活の保障を地方自治体に丸投げし、国の役割を外交・「防衛」に特化させる「新自由主義に基づく小さな政府」だった。だが、表向き「地方分権」を「改正」理由に掲げたため、国と地方が「対等な関係」であるとせざるを得なかった。そこで国と地方の判断に違いが生じたときに、地方自治体の申出によってその適否を判断する「第三者機関」として設置された。

 今回の事案の争点は、沖縄防衛局による不服申し立てそのものと、これを丸呑みした国交相による関与、効力停止の適否だ。

 地方自治法は、国に帰属する海、河川、湖沼(公有水面)の埋立許可を国が地方自治体に委任する事務にあげている。埋立対象が国有であるとしても、その影響は地域住民の生活や利害に直結するため、地方自治体が担う「地域における事務」とすることが妥当だからだ。委任した以上、「適性を欠き、公益を害する」ことがない限り、自治体の判断に介入することはできない。

 だが、今回は国自らが「公益を害する」国土保全上重大な悪影響を及ぼす工事を強行しているのであり、県の指摘に対して反省することはあっても不服を申し立てるような筋合いではない。

 にもかかわらず、沖縄防衛局は同じ国の機関である国交相に行政不服審査法による不服申し立てで対抗した。この問題点は2つだ。国交相も防衛相(沖縄防衛局)も閣議決定に拘束される安倍内閣の一員であり、中立・公正な判断などできるはずがないこと。行政不服審査法による救済措置はあくまでも私人の利益を不当に損なわないためのものであり、国・地方自治体などには適用されないこと。

 これらの点を踏まえれば、おのずと結論は明らかだ。国交相による効力停止は不当、審査請求は却下されるべきであり、これを容認する国交相の判断は誤りだ。係争処理委員会は当然、県の承認撤回は正当、国の関与は不当であると結論付けねばならない。

係争処理委員会の監視を

 だが、係争処理委員会は総務省の下に置かれている。創設当時、自治省(のちに総務省に統合)の下に置かれることに「第三者性が保証されない。独立した機関とすべき」との批判を呼んだ。

 2016年、翁長知事(当時)による埋立承認取消をめぐる係争処理委員会はその正否は判断せず「国と沖縄県は、普天間飛行場の返還という共通の目標の実現に向けて真摯に協議し、双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題の解決に向けての最善の道である」と勧告した。身内に軍配をあげることができなかったのは、沖縄防衛局・国交相の主張の不合理さを物語っている。だが、それでも沖縄県の主張を認めなかった。それは、辺野古新基地建設の是非を問うものであるにも関わらず「普天間飛行場返還という県・国の共通の目的のための新基地建設」と位置づけ、国の「リンク論」に与(くみ)するものだ。

 だが、辺野古新基地建設が普天間飛行場返還の条件とはなっていないことは、日米協議で交渉の当事者だった玄葉光一郎元外務大臣が指摘している(11/14衆院予算委員会)。今回再び、係争処理委員会が新基地建設が唯一の選択肢とする安倍政権の主張を追認することは断じて許されない。

 普天間飛行場は、沖縄戦の最中に米軍が土地・家屋を接収して建設したものだ。当時の国際法でも、占領軍による被占領地域の私有財産没収は禁じられていた。安倍が「国際法遵守」を他国に振りかざし「沖縄県民に寄り添う」というのなら、国際法に違反して接収された普天間飛行場は、米政府に無条件返還を求めなければならない。

 係争処理委員会にまともな結論を出させ、安倍政権に建設断念を押し付ける地域からの沖縄連帯が一層重要となる。

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