2018年12月14日 1555号

【青年団体が市、政府を動かす/日韓交流で当事者の闘う意思を実感/なかまユニオン執行委員長 井手窪啓一】

 11月23日と24日、首都圏なかまユニオン、なかまユニオンが呼びかけ、韓国を訪問しました。目的は7月に開いた日韓シンポを踏まえて、ソウル市の青年政策をより深く理解するために、行政の現場や希望連帯労働組合等の闘争現場を訪問し交流することです。

 23日、ソウル市の「革新パーク」内にあるソウル市青年活動支援センターを訪問。センター長のキ・ヒョンジュさんのお話を聞きしました。センターは2016年の設立です。キ・ヒョンジュさんによれば、青年問題の背景には、韓国の厳しい就職事情があります。

 韓国では財閥系大企業と中小企業の労働条件の格差が天地ほど大きく、当然若者は大企業に就職するためにしのぎを削ります。しかし、親の貧富の差の影響を子どもがもろに受けます。大学の高い学費を稼ぐためにバイトに追われる貧困家庭の若者は就活に失敗し、「努力してもダメ」「一回失敗したらダメ」「社会から見放されている」などと、社会への信頼感を失い社会を拒否するようになっていきます。このようなニート状態の若者が、20代から40代の15%、200万人いるというのです。

 これに対し、保守政権は中小企業に補助金を交付し青年に職業紹介しましたが、問題は解決しませんでした。新たにソウル市政を担うことになったパク・ウォンスン市長は、当事者である青年たち自身が問題解決にあたるべきと考え、青年ユニオンなど青年運動団体からの提案を政策化していきました。

月5万円の青年手当

 青年活動支援センターは居場所(社会的参加の経験)作りを担っており、6か月間のプログラムと毎月5万円の青年手当を支給する実務を行っています。月に5万円の手当を支給することは、1日3時間の余裕を与えることになるそうです。

 住宅、労働、進路等の相談に乗ったり、自己理解・自己表現の自己探索プログラムを提供します。地域毎に青年カフェを開いたり、企業と提携し仕事体験を提供することで青年は自信と意欲を回復しています。このような事業の対象者は現在7千人ですが、来年は政府事業として10万人まで拡大することになったとのこと。さらに、施策の根拠となっている「青年条例」から、「青年基本法」の制定が運動の課題になっています。

 韓国青年ユニオンなど青年団体が取り組んできた青年運動が、ソウル市を動かし、他の自治体に波及し、政府を動かすに至っています。日本も青年の抱える問題をクリアにした当事者運動が問われると強く感じた交流でした。

 
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