2018年12月28日 1557号

【未来への責任(264)強制連行企業は主体的に解決すべきだ】

 10月30日の韓国大法院判決の履行を求めて、原告代理人が11月12日に続き12月4日に新日鉄住金本社を訪問し、面会を求めた。しかし、受付を通して会社の担当者が回答したのは「申し上げることはございません」の一言だった。原告代理人は、12月24日の午後5時までに回答せよと申し入れる文書を受付に手渡した。NHKの取材に対して、会社は「要望書は受け取りました。内容はこれから確認します」と回答したという。

 その後、原告代理人は外国特派員協会での記者会見に臨み、誠意ある対応がなければ差し押さえ手続きに入ること、来年早々に集団訴訟を提訴する準備を進めていることを明らかにすると同時に、いつでも解決交渉に応じることも明らかにした。唯一の生存者原告で94歳になる李春植(イチュンシク)さんが生きているうちに解決することが求められている。

 11月29日には、三菱重工広島の被爆徴用工の事件、そして、三菱重工名古屋の女子勤労挺身隊の事件の大法院判決が言い渡された。いずれも、被告三菱重工の上告を退け、原告勝訴の控訴審判決が確定した。同じ11月29日には、2012年の大法院判決後に追加提訴した新日鉄住金事件の控訴審判決が言い渡され、原告勝訴となった。今、韓国では堰を切ったように、日本企業を被告として闘われてきた戦後補償裁判の原告勝訴判決が相次いでいる。

 大法院判決に対し、新日鉄住金は「極めて遺憾」「日本の確定判決に反するもの」と批判しつつ、「日本政府の対応状況等も踏まえ、適切に対応して参ります」とのコメントを出した。また、日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会、日韓経済協会の4者は「良好な両国経済関係を損ないかねないものと深く憂慮」「日本と韓国は最も重要な隣国として…互いに欠くことのできないパートナー」「今回の判決が両国関係に影響を及ぼし、さらなる関係強化の障害とならないよう、韓国政府に対し、日本企業の正当な経済活動が保護されるよう適切な措置をとることを強く要望する。また、日本政府には、そうした、韓国政府の措置を確保すべくあらゆる選択肢を視野に入れて対応を講じることを強く要望する」との声明を出している。

 「互いに欠くことのできないパートナー」と認識しているのであれば、政府の対応を待つことなく将来のアジアとの関係を見据えて、主体的に解決すべきではないだろうか。

 安倍政権は「国際法違反」と声高に叫ぶが具体的説明はない。日韓国交正常化交渉では「韓国併合は違法・無効」というのが一貫した韓国政府の立場で、「韓国併合は合法」という日本政府とは最後まで折り合わなかった。植民地支配の清算を棚上げにした条約だったから、「違法な植民地支配下の強制労働」の慰謝料請求権を認めたからと言って「国際法違反」と難癖をつけるのは筋違いだ。条約の解釈の食い違いは、条約に基づき外交交渉で解決すべきであり、「和解に応じるな」と企業に不当な圧力をかけることこそ「条約違反」だ。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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