2019年01月04・11日 1558号

【「改憲」へ実力行使の防衛大綱/侵略軍への変貌隠さず/「サイバー戦」でも日米軍事一体化】

 軍事政策の基本方針となる「防衛計画の大綱」(防衛大綱)及び「中期防衛力整備計画」(中期防)が12月18日、閣議決定された。10年先を見据える計画が安倍政権下で2度見直された。「憲法の制約がある」と否定してきた空母の保持を隠すこともせず侵略軍化につき進んでいる。東アジアの平和進展に逆行する戦争する国づくりの「侵略大綱」。9条改憲の実力行使だ。

侵略のための武器

 今後5年間の武器調達・軍事費を定める中期防は総額27兆4700億円を計上。毎年約5兆5千億円もの支出を続ける。過去最大となる予算の原因は「最新鋭の米軍装備を購入のため」(外務省)というが、安倍とトランプの商談で決まったミサイルシステム「イージス・アショア」やステルス戦闘機F35は米国の言い値。全く歯止めなき支出だ。



 「量」も問題なら「質」も問題だ。防衛大綱で「現有艦船からの短距離離陸・垂直着陸(STOVL)戦闘機の運用」による能力強化をうたい、中期防で「ヘリコプター搭載護衛艦(いずも型)を改修する」と書いた。戦闘機搭載空母への改造を公式に表明した。

 政府はこれまで「憲法の制約から攻撃型空母は持たない」と答弁してきた。岩屋防衛相は「(戦闘機を)常時搭載しないから攻撃型空母ではない」と苦しい言い逃れをしているが、平時から有事まで「切れ目のない防衛力」をうたう自衛隊だ。戦闘機とヘリコプターを随時載せ替えることなど考えるはずがない。

 「海洋進出を図る中国軍への対抗」も言い訳にすぎない。「(尖閣など)空母がなくても守れる態勢を整えているからピンとこない」(元海上自衛隊呉地方総監12/19毎日)との発言が現実を物語っている。

 空母の機能は、搭載戦闘機の飛行範囲まで攻撃目標に近づき離発着基地となることだ。遠く離れたインド洋西端まで航行し、中東やアフリカ諸国を戦闘機の射程に入れる使い方だ。「いずも」は空母化で米強襲揚陸艦と同等の攻撃力を得る。米強襲揚陸艦「エセックス」は搭載機F35Bをアラビア海に運び、アフガニスタンでタリバンを攻撃した。

サイバー防衛部隊へ格上げ

 防衛大綱は「新たな領域」として「宇宙・サイバー・電磁波」をあげ、航空自衛隊に「宇宙領域専門部隊」を、共通の部隊として「サイバー防衛部隊の保持」をうたった。6月トランプが「宇宙軍」創設の大統領令を発表したことを思えば、日米軍事一体化を進めてきた安倍政権が項目を上げてもおかしくはない。

 現に「サイバー防衛部隊」は進んでいる。自衛隊は2013年、サイバー軍に幹部自衛官を派遣し、翌14年、サイバー防衛隊を設置した。18年5月、米軍がサイバー軍を統合軍の指揮下から独立させたことに習い、今回、指揮通信システム隊の指揮下から独立した部隊へと格上げした。自衛隊法第21条の2に定める「共同の部隊」の1つとなる。これまでの150人だったものを500人に増員するが、今後、さらに肥大化するのは間違いない。

 一体何をするのか。防衛省は「敵国からのサイバー攻撃に対処」と説明するが、米軍のサイバー軍の任務は「相手国のコンピュータ・ネットワークへの侵入・データ改ざん・システム破壊、管理システム系統の制圧などを行う」。自衛隊も同等の能力を身に着けようというのだ。軍事介入の機会をうかがうには「対象国」の政財界や軍の情報が常時必要となるためだ。

 「共同の部隊」にはもう一つ「情報保全隊」がある。イラク戦争に反対する市民活動を04年から監視していたことが発覚した部隊(当時は陸自情報保全隊)だ。軍事行動には、国内外問わず監視は欠かさないということだ。

 すでに自衛隊は「特別な機関」として情報本部を持っている。二千数百人の陣容で情報の収集・分析を行うが実態は明らかにされていない。米軍の国家安全保障局(NSA)がエシュロン傍受システムで収集する情報を直接閲覧することはできないが、盗聴システム「エックスキースコア」の提供を受けていることは、元CIA職員エドガー・スノーデンが暴露している。

 地球規模の監視能力は侵略軍へと変貌する自衛隊にとって不可欠の分野と言ってよい。

武器なき平和を

 安倍政権は10年先を見据えた防衛大綱を2度も見直した。背景に、戦争法、共謀罪法など戦争体制を支える法整備で、侵略軍への変貌を公然化しても批判は乗り切れるとの判断がある。9条改憲が思うに任せない中で、戦争する国の実態づくりをもくろむものだ。

 朝鮮半島で平和への動きが進んでいる最中に、周辺国を挑発し緊張を高める大軍拡。安倍は平和の破壊者であり、いかに危険な存在であるかを声を大にして訴えよう。「武器なき平和を」。それが憲法9条を守ることだ。

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