2019年01月18日 1559号

【“観光客いらっしゃい、人権来るな” 人権鎖国・日本/遵守義務の閣議決定 政府は国連勧告に応えよ】

 2018年8月、国連の人種差別撤廃委員会で4年ぶりの日本審査があり、日本政府に対し多岐にわたる勧告が出された。

 国際基準に照らして日本の人権状況はどうか―「世界人権デー」を記念して12月15日、都内で開かれた集会「わたしたちの声を国連へ」(主催ー国連・人権勧告の実現を!実行委員会など)で青山学院大学名誉教授の新倉修さんが基調講演した。講演には「2020年東京オリンピックを間近に控えて」のサブタイトルが付されている。

 新倉さんは「『国連勧告に従う必要はない』と閣議決定するとんでもない国に私たちは住んでいる。70周年の古稀を迎えた世界人権宣言。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は歓迎のスピーチをしたが、安倍首相は拒んだ」と語り始めた。

 「勧告に法的拘束力がないのは確かだが、源は条約。憲法でも『条約および確立された国際法規は誠実に遵守』と約束している。遵守義務のある条約に基づいて国連機関が問いを投げかけた。日本政府には応える義務がある」と閣議決定を批判。「人権は800年前のイギリス・マグナカルタ以来いばらの道を歩み、段階を踏んで世界的スクラムを固めてきた。1948年12月10日の国連総会で『世界人権宣言』を採択。それが『国際人権規約』(条約)になるまでに20年かかった」と歴史をたどる。

 「人権規約は社会権と自由権の2つから成る。批准すれば拘束され、規約人権委員会などが実施状況を調べる。国連憲章は55条で『人権と基本的自由の普遍的な尊重・遵守』をうたい、56条で『加盟国は国連と協力し、共同および個別の行動をとることを誓約する』と定めている。勧告の仕組みを認め、行動するということだ。間違った『閣議決定』は変えさせないといけない」と力説した。

 国連の人権活動における日本の位置について「国連人権機関で働く職員が少ない。分担金も減らしている。人権理事会の理事国を4期も務めているが、大使・公使ではなく一等書記官や参事官クラスが出てくる。存在感が薄い」と指摘し、「日本の刑法・人権状況はガラパゴス。人権理事会の審査で死刑廃止を勧告されているのに、18年7月、13人の死刑を執行した。世界は驚愕し、『オリンピックに参加しない』の声も。取り調べに弁護士を立ち会わせない。モーリシャスの委員は『日本の警察は中世のようだ』と。“観光客はいらっしゃい、人権は来るな”の人権鎖国ではないか」と問いかけた。

 集会ではまた、在日本朝鮮人人権協会の朴金優綺(パクキムウギ)さんが「人種差別撤廃委員会の勧告〜朝鮮学校差別問題」について報告した。「朝鮮高校の生徒たちが無償化制度から除外された2010年から8年、被害者は5000人以上、被害額は18億円になる。ジュネーブのロビー活動では、毎週金曜日に行っている文部科学省前行動の映像を見せ、2日間の審査に臨んだ」

 ベルギーの委員は「平等権・子どもの教育権に鑑み、朝鮮学校にも無償化制度の適用を」と求め、韓国の委員は「文科省通知により地方自治体の補助金カットが急速に増えた」ことを問題視。8月30日発表の「総括所見」は「無償化制度に関して朝鮮学校が差別されないこと」を改めて勧告した。朴金さんは「日本の植民地支配があったから朝鮮学校が存在する。勧告の意義は、日本政府のレポートの欺瞞を見抜き、前回2014年の勧告を繰り返したことにある」と強調した。

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