2019年03月08日 1566号

【シナイ半島自衛隊派兵を決定/戦争法の恒常化で9条改憲を地ならし】

 政府は中東・シナイ半島に自衛隊を派遣することを決定した。派遣するのはMFO(多国籍監視軍)の司令部要員2名としている。

 シナイ半島は第3次中東戦争(1967年)でイスラエルが占領し第4次中東戦争(73年)でエジプトが奪還。79年に平和条約が締結されエジプトが主権回復した。その和平合意を受けて両国が軍事衝突しないように監視しているのが81年に米・英・仏・伊を中心に設立された多国籍軍がMFOだ。現在12か国2000人が両軍を監視している。日本政府は88年以来、財政支援を続けている。

 「多国籍軍」と呼ばれるのは、PKO(国連平和維持活動)などと違い、国連決議に基づかない部隊だからだ。


多国籍軍に大手を振って参加

 従来、自衛隊海外派兵はPKO法に基づくもの以外は個別立法を必要とした。だが、2015年、安倍政権が強行可決した憲法破壊の戦争法でPKO法は改訂され、その対象を拡大した。自衛隊の管理下にない他国部隊などへの攻撃でも武力行使を認める「駆けつけ警護」、国連が統括しない平和維持活動(国際連携平和安全活動)への参加が可能となった。

 MFOへの参加は、戦争法による海外派兵の第1号となる。

 現在、PKO法による自衛隊派兵は、2017年5月の南スーダンPKO撤退時に居残った司令部要員にとどまる。

 同PKOでは、戦争法による「駆けつけ警護」の任務を初めて発令。安倍はそのわずか3か月後に、撤収を余儀なくされた。新任務付与2か月後の2017年1月、国会で同PKO部隊の日報隠ぺい問題の追及が始まったためだ。

 2016年7月の日報には明確に「戦闘が生起」「激しい銃撃戦」と記録されていた。停戦合意が破れていたのなら、自衛隊は直ちに撤収しなければならない。だが安倍はついに戦闘状態にあることを認めず、戦争法新任務の実績づくりのために内戦状態の続く南スーダンに駐屯を続けさせ、自衛隊員を危険にさらした。

 現在、自衛隊の海外派兵は、南スーダンを除けばソマリア沖アデン湾での海賊対処法による派兵のみだ。

 シナイ半島MFOは、常時海外派兵を望む安倍にとって好都合だ。戦争法による海外派兵実績づくりと、多国籍軍での軍事行動の知識・技能の蓄積が可能となる。隙あらば実戦部隊の参加という筋書きも当然持っているだろう。

改憲へのつなぎ、地ならし

 戦争法による集団的自衛権行使は、戦争・改憲勢力がしかけた平和憲法に風穴を空けるための突破口だった。

 武力攻撃事態法の改訂では、日本の存立が危ぶまれる事態を政府が認定すれば、集団的自衛権行使が可能となった。「存立の危機」は武力攻撃だけではなく、原油輸送の航路の危険性も含まれ、解釈は無限定だ。

 だが、PKO法での集団的自衛権行使は、さらにそのハードルが低い。「駆けつけ警護」は、自衛隊が攻撃されていないにもかかわらず、他国軍を守るために自ら戦闘行動に出ることを意味し、事実上、集団的自衛権行使にあたる。しかも、これを多国籍軍、すなわち、軍事同盟による軍事行動でも可能とするからだ。

 2月10日の自民党大会で安倍は「いよいよ、立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときが来た」とまたぞろ9条改憲に言及した。「地球儀俯瞰(ふかん)外交」「積極的平和主義」を標榜することで、地球の裏側までも権益を求め海外派兵できる国を狙う安倍は、恒常的に戦争法を実効化し、9条改憲への地ならしを続けようとしている。

アフリカでの権益確保へ

 グローバル資本によるアフリカへの投資競争に日本は後れをとっている。アフリカ大陸は天然資源の宝庫であり、シナイ半島の地中海側では、新たな液化天然ガス開発が進められている。

 安倍は海賊対処法で派兵しているジブチ共和国の自衛隊駐屯基地を恒久基地として維持する方針を打ち出している。南スーダン、シナイ半島と軍事によるアフリカ関与を拡大する。軍事力はODA(政府開発援助)と相まって権益確保のための車の両輪だ。

 安倍は1月28日の施政方針演説で「憲法は、国の理想を語るもの、次の時代への道しるべであります」と述べ、憲法審査会での改憲論議の進展を求めた。

 「国の理想」が「戦争国家」であってはならない。

 辺野古新基地建設、侵略兵器の爆買いとともに、あらゆる口実の戦争挑発・自衛隊海外派兵に反対し、一切の戦争策動を許さない運動を強化しよう。
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