2019年04月12日 1571号

【福島原発事故 えひめ訴訟勝利判決 国の責任6度断罪】

 福島原発事故で愛媛県に避難した10世帯25人が、国と東京電力を相手に計1億3750万円の損害賠償を求めた「えひめ訴訟」の判決が、3月26日松山地裁で言い渡された。

 裁判所の外では10人を超える報道陣が待機。旗出しを待った。13時15分過ぎ、支える会の田淵事務局長らが「勝訴」「国の責任6度断罪!」の垂れ幕を掲げた。

 いま国が各地の控訴審でその意義を低めようと躍起になっている地震本部の長期評価について判決は、「個々の学者の論文とは異なり、多数の専門家による検証を踏まえた相当程度の信頼性を有する見解だった」とし、「国は長期評価を否定するに足る知見を収集していたわけではないから、東電に津波の試算を指示すべきで、そうすれば2002年末には予見は可能だった」とした。

 また、結果回避可能性については、防潮堤の設置は困難だったが、水密化対策を講じていれば津波の波力にも耐えられたとし、国が規制権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠くとして、違法性を認めた。

 避難指示区域外からの避難(いわゆる自主避難)についても「避難の相当性」を認めたが、既払い分を含む慰謝料は旧避難指示解除準備区域が720〜1000万円、旧緊急時避難準備区域が300〜750万円としたのに対し、自主的避難等対象区域は30〜80万円と大きな格差を付けた。また、事故後に生まれた2名の請求は棄却され、認容額は23人で計2743万円だった。

 記者会見で原告代表の渡部寛志さんは、「国の責任を認めたのは良かったし、今後につながる」と評価する一方、「賠償額は平均すると1人100万円ちょっとの上積みになるが、これでは生活再建は図れない。原告はみな苦しい状況にある」と述べた。

 もう一人の原告は、「原発事故は通常の公害とは全然違うのに同じ扱いをしている。賠償額については、避難指示区域内と外とで分けるべきではない」と不満を口にした。控訴について聞かれた野垣弁護士は、「向こうはするだろうし、こちらもすることになると思う」と控訴の意向を示した。

 国を被告とした裁判の判決はえひめ訴訟を含めて8件になるが、そのうち国の責任を認めた判決は今回が6件目。3月14日の千葉第2陣判決が国の責任を認めないひどい判決だっただけに、その悪い流れを断ち切った今回の判決の意義は大きい。

 ただ、慰謝料の水準の低さと避難指示区域内外の格差は全国共通の問題であり、それをどう打ち破っていくのか、各地の弁護団と良心的専門家の連携、各地の訴訟団間の結束が求められる。判決当日、原告や地元の支援者のほか、生業(なりわい)(福島)・かながわ・京都・関西(大阪)訴訟の原告や弁護士、支援者など約60人が駆けつけ、50席の傍聴席は満杯。関心の高さを示した。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS