2019年04月19日 1572号

【沖縄新基地/埋立て承認取撤回を取り消し/国による自治圧殺を許すな/工事中止・安倍退陣を全国から】

 石井啓一国土交通相は4月5日、行政不服審査法を悪用する沖縄防衛局の審査請求を認め、沖縄県による埋め立て承認撤回を取り消す裁決を行った。行政法学者110人が「制度の濫用」と批判声明を出した私人なりすましを容認、防衛省と結託し県の判断を一蹴したのだ。国の自作自演による自治圧殺を糾弾する。

 結論ありきの裁決だ。国交相は県が撤回理由とした活断層や軟弱地盤の存在もまったく検討する気はなかった。鑑定を依頼した専門家が追加調査の必要性に言及したのを捻じ曲げ、「安定性を確保し工事できる」と言い切った。絶滅危惧種ジュゴンの死亡も無視し、「環境破壊はない」という。この不当な決定に対し、沖縄県は争う姿勢を明らかにしている。

 これまでの経緯を確認しよう(表)。



 仲井真知事が沖縄防衛局に埋め立て承認を与えたのは2013年12月だった。18年7月、撤回の意向を表明した翁長知事は、直後に死去。知事の代理者富川副知事が謝花副知事に知事権限を委任、この委任に基づき謝花副知事名で承認撤回を行った。

 沖縄防衛局は行政不服審査法(=行審法)を根拠に、国交相に「承認撤回を取り消す審査」と「裁決されるまでの間、承認取消の効力を停止する仮処分」を求めた。国交相は執行停止を決定。沖縄防衛局は工事を再開した。

 県は、この執行停止決定が違法な「国の関与」にあたるとして3月22日、福岡高裁那覇支部に地方自治法第251条の5に基づき、取消訴訟を起こした。ところが、県が提訴した2週間後に出された今回の裁決で撤回が取り消され、執行停止仮処分は効力を失い、訴訟の意味はなくなった。

 今回の裁決に対する争いも、国地方係争処理委員会に申し立てた場合、法手続きは同じ道をたどる。争点も本裁決に共通するものである。

違法な「国の関与」

 県は「国の関与」の違法性として主に次の2点をあげている。

 (1)適用できない行審法による決定

 行審法は、行政の誤った法解釈などによる決定を上級官庁が正すことで、損なわれた私人の権利を救済するためのもの。だから行審法は国・地方自治体が「その固有の資格において当該処分の相手方となるもの」、つまり私人が受けることがない行政機関として受けた処分については適用できない。

 辺野古埋め立て承認も撤回も国の機関である沖縄防衛局に対して出されたものだ。

 海などの埋め立てに必要な都道府県知事の許可には、埋め立ての願い出者が私人(市民や企業など民間団体)・地方公共団体の場合は「免許」、国の場合は「承認」と区別されている(公有水面埋立法=公水法)。沖縄防衛局は自ら「埋め立て承認願」を提出した。国が国としての「固有の資格」において処分を求めたのだ。国は辺野古新基地建設の目的を「日米安保条約等の『施設及び区域』提供義務履行のため」としている。基地提供のための埋立事業は国にしかできない。

 このことからも埋め立て承認が国の「固有の資格」に対する処分であることは明らかだ。しかし沖縄防衛局は私人になりすまして審査請求したのであり、審査請求を受けた国交相は門前払いすべきであるにもかかわらず、県の撤回の効力を停止した。これは違法・無効だ。

 (2) 国交相審査は公平性を欠く

 沖縄防衛局は防衛相の下部機関だ。そして、防衛相・国交相はともに内閣の一員であり、辺野古新基地建設の閣議決定に縛られる。国交相は「何が何でも辺野古移設が唯一の解決策」という沖縄防衛局と同じ立場で審査するわけで、県の主張に聞く耳は持たない。行審法が求める公正・中立性を欠き、もはや「審査」と呼ぶに値しない。

対話求める県を足蹴

 県はこれまで対話による解決を追求してきた。提訴に際し知事はその努力を語った。県民投票、1万人の県民大会を踏まえ、「このような県民の皆様の思いを受け止め、私は、3月19日に、安倍首相と再度面談を行いました」とその内容を示した。

 (1)政府が工事を中止して県との対話を進める環境づくりのため、岩礁破砕行為差し止め訴訟の上告を取り下げること(2)違法な「国の関与」の取消訴訟を提起しないこと(3)3月25日予定の新たな区域への土砂投入も含め工事を中止したうえで、集中協議を開くこと。

 だが、安倍は面談の翌20日に予定通り新たな土砂投入を開始することを県に通告し、知事の提案を拒否したのだ。

 知事は「公約の実現に向けて、ぶれることなく、全身全霊で取り組む」。今回の裁決に対しても、「ぶれることなく、県民投票で示された民意に添う」と繰り返した。


カギは全国の連帯

 安倍は、県への通告どおり、25日以降土砂投入を強行、違法工事を続行している。

 だが市民の抗議は衰えていない。県民は阻止行動を続け、国政・地方選挙、県民投票、県民大会とあらゆる機会を捉えて民意を発信し続けている。県政もこの民意に応え、法廷闘争を含めて全力で安倍の横暴に対峙し続ける。沖縄県側はあくまでも民主主義に従い、対話による解決を追求している。執行停止の取消訴訟も、提訴期限ぎりぎりまで対話の可能性を探った上での訴状提出だった。

 沖縄県民と県政は一体となって安倍の横暴と闘っている。政府に新基地断念をさせるために必要なのは、全国からの沖縄への連帯だ。民主主義破壊の安倍政権を一掃しよう。
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