2019年04月19日 1572号

【消費税増税は撤回だ(2) 「負担軽減策」のウソ 貧困層・中小は打撃、大企業を優遇】

 消費税増税は低所得者に多くの負担を強いる。安倍政権は、軽減税率やポイント還元など「負担軽減策」を打ち出し、増税への抵抗感を弱めようと必死だ。だが、それらの内容を点検すると、「負担軽減」のウソが見えてくる。

混乱・負担の軽減税率

 オロナミンとリポビタンの軽減税率はどうなるのか、定期購読の日刊新聞と電子版の日刊新聞ではどうなるか。日常生活で軽減税率の適用不適用が現れてくる。ともに前者が8%、後者が10%となる。

 この違いは、軽減税率の対象品目が「酒類・外食を除く食料品、週2回以上発行される新聞(定期購読契約)」とされていることから生じる。リポビタンは酒類、新聞の電子版は音楽配信と同じ扱いなので適用外となる。その他さまざまな場面で軽減税率は混乱ばかりをまねく。

 消費者だけでなく、事業者にも影響が出る。飲食料品販売をしない事業者も、仕入れや経費の一部でも対象品目が入ると税率ごとに区分した「区分経理」の帳簿を作らなければならない。それなしには仕入れ税額控除の適用が受けられないため、すべての事業者、特に中小業者が負担を押し付けられるのだ。

低所得者配慮なし

 安倍政権は、軽減税率を謳(うた)いながら軽減を打ち消す値上げへと価格操作を促している。

 昨年5月、消費者庁・財務省・経済産業省・中小企業庁の連名で「消費税の軽減税率制度の実施に伴う価格表示について」が出された。その中で、価格設定は「軽減税率が適用されるテイクアウト等の税抜価格を標準税率が適用される店内飲食より高く設定、または店内飲食の税抜価格を低く設定することで同一の税込価格を設定することも可能」と明記している。

 具体例として、出前について配送分コストの上乗せ、テイクアウトについて箸や包装容器等のコストの上乗せ、店内飲食で提供する飲食料品の品数減などを挙げる。つまり、軽減税率を実質的に解消してすべて10%にするよう政府が指南しているのだ。安倍政権は、軽減税率がいかにも低所得者対策であるかのように強調する一方で、それを崩すことを堂々と行っている。

 さらに昨年11月、内閣官房など6省庁が「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を発表。「消費税率引上げ前に需要に応じて値上げを行うなど経営判断に基づく自由な価格設定を行うことを何ら妨げない」とする。事前便乗値上げ≠フ勧めだ。これを受けて、食品大手の値上げラッシュが起きた。直近でも、3月1日にロッテ、森永などアイスクリーム業界が一斉値上げ、4月1日には大手乳業メーカーが牛乳などを一斉値上げ、と値上げカルテルが生活を直撃している(表)。

 軽減など全くのウソであり、安倍政権は低所得者に配慮などしていない。


ポイント還元は誰のため?

 負担軽減策のでたらめさはポイント還元にも見て取れる。クレジットカードや電子マネーで支払えば2または5%分のポイントが付く。だが、貧困層に実質上恩恵はなく、むしろ問題点だらけだ。

 1点目は、クレジットカードなどで支払わないとポイントは付かないことだ。まず、クレジットカードを作るには一定の信用が求められるため、低所得などで「信用が低い」人のカード保有は多くなく、高所得者に有利な制度となる。また、高齢者は電子マネーを使うことに慣れておらず、還元が幅広く行きわたるわけではない。一方、ポイントを求めて低所得者層がクレジット払いに踏み出せば、今まで以上に借金漬けになる可能性が広がる。潤うのは、新たな顧客やビッグデータを手に入れることのできるクレジット会社と金融資本だけだ。

 2点目は、実施期間が10月から9か月間に限定されていることだ。客を逃さないためにと中小の店舗は登録し、カードを読み取るレジを設置してキャッシュレス化に対応しなければならない。レジを入れた店舗は、9か月以後カード会社への手数料支払いが新たに生じて負担増となる。

 ポイント還元を扱う決済事業者に内定しているのは、三菱UFJニコス、三井住友カード、JCB、楽天など大手ばかり。ポイント還元―キャッシュレス化とは、貧困層、中小業者を食い物にして大企業をもうけさせるものにすぎないのである。

軽減財源のために負担増

 政府は、軽減税率導入によって1兆円の税収不足≠ェ生じるとする。その穴埋めは、低所得者の医療や介護の負担を軽くする総合合算制度の見送りで4千億円、給与所得控除の縮小による所得税増税などで3千億円、免税事業者への課税で2千億円、社会保障給付の見送り・「効率化」=削減で1千億円という。このどこが負担軽減なのか。

 軽減税率などのウソを見抜こう。消費税増税は撤回させる以外にない。  《続く》
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