2019年06月07日 1578号

【奨学金問題対策全国会議 設立6周年/アンケートで分かった「学生のリアル」】

 奨学金問題対策全国会議の設立6周年集会が5月18日、都内で開かれた。注目されたのが、大学や専門学校の学生らでつくる「高等教育無償化プロジェクトFREE」の特別報告だ。

 FREEは昨年9月に発足。東京大学3年の岩崎詩都香(しずか)さんは「学費・奨学金について私たちにできることがないか、と考え立ち上げた。学費のせいで大学に行けなかった友達がたくさんいて、大学に入ってからも奨学金返済が不安でバイト漬けになっている人に出会い、何とかしたいと思った」と結成の動機を語る。岩崎さん自身母子家庭で育ち、月5万円余りの奨学金を受けながら大学に通う。

 設立宣言では「かけがえのない人生を豊かにする学びを、経済的事情に左右されず、あらゆる人が権利として享受できる、未来ある社会を実現するために、すべての人への高等教育の無償化を目指します」とうたった。

 主な活動は「みんなの声を可視化したい」とアンケートを集めたこと。質問項目も話し合って考え、時間軸に沿って「受験期・入学時」「学生生活」「将来」の順に尋ねた。ネットで、また授業の前に説明の時間をもらったり、学内で暇そうにしている人に話しかけたりして拡散。現在までに2000人以上が回答を寄せた。中には「アンケートに答えながら悲しくなって泣けてきた」と話す人もいて、“振り返る”ことの大切さを感じたという。

 回答では、「仕送りや小遣いをもらっていない」人が34・5%、「アルバイトしている」人が91・1%。アルバイトで負担になっていることとして「睡眠時間が削られる」57・4%、「学習時間が削られる」55・9%に上った。

 12月には新宿アルタ前で「聴いてほしい学生のリアル」と題してこの結果を発表。道行く人も真剣に目を通し、「頑張って」「僕も学費困ってるんです」と話しかけてくる。「とても反響があった。やってよかった」と自信を深めた。

 上智大学4年の本村翔太さんがアンケートの自由記述欄の声をいくつか紹介した。「お金がなく親に借金してもらったが、そのことで身内と揉めた」「親が仕事をクビになり、バイトを増やしたら、学業に支障が出て進級不可」「バイトと大学の両立で家に帰るのは寝るためのみ」「バイトで時間がとられ、授業準備やゼミ準備ができない」…

 FREEは5月に成立した「大学等修学支援法」についても問題点を指摘する声明を発表。「世論にアドボケイト(政策提言)できる状況が少しずつ生まれている」と岩崎さん。「アンケートにはみんな好意的に書いてくれ、『こういう活動ってすばらしい』『成功させてほしい』と言ってくれた。学生が声を上げられる場所を作れた。それが一番大きな手ごたえ」と顔をほころばせた。

ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS