2019年06月14日 1579号

【直接雇用を求める東リ偽装請負争議 兵庫県労働委員会で勝利命令】

 株式会社東リ偽装請負争議を闘うL.I.A労働組合が、派遣会社シグマテックによる採用拒否は不利益取扱であり、東リが直接雇用の団交に応じなかったのは不当労働行為であるとして救済を求めていた事件で、兵庫県労働委員会は、2019年4月26日付けでシグマテックに対して組合員らの職場復帰による救済を命じる画期的な勝利命令を交付した。

 2017年3月当時、L.I.A労働組合は、20年以上にわたる偽装請負状態を解消し東リに直接雇用させるため、執行部を中心に有志が先行して東リに対して労働者派遣法40条の6に基づく直接雇用(注)を求め、組合として団体交渉を申し入れていた。

 一方、東リは組合員が所属する下請け会社に見切りをつけ、新たな派遣事業者であるシグマテックへ切り替え、同社に下請け会社社員を移籍させる方針をとろうとした。この移籍の過程で、16名いた組合員のうち11名が採用通知1日前に一斉に組合を脱退し、東リに直接雇用を求めていた組合員のみが全員シグマテックに不採用となり、職を失ったのである。

 救済命令は、東リの使用者性は否定したが、シグマテックに対しては、「2017年4月1日付けで組合員らを雇用し、同日に伊丹工場の巾木(はばき)工程及び化成品工程に派遣した者と同様」に派遣するように命じた。組合は、東リに対する命令については不服であるとして中央労働委員会へ再審査を求めるが、シグマテックに対しては、命令にしたがった措置をとるよう交渉を開始している。

 東リとの間では、派遣法40条の6の直接雇用みなし規定の適用を求める裁判が神戸地裁で係属中だ。来る7月と8月に証人尋問が予定されている。今回の勝利命令を梃子(てこ)に裁判でも勝利し、東リに直接雇用を認めさせるまで当該労組ともども奮闘する決意である。

(東リ偽装請負争議を勝たせる会幹事・井手窪啓一)

(注)派遣契約を偽装した派遣先企業については、派遣労働者に対して直接雇用の申し込みを行ったとみなす規定。労働者が承諾の通知を発すれば、派遣先企業との直接雇用が成立する。

闘いを勇気づけた命令 直接雇用を必ず実現する

 兵庫県労働委員会が「派遣会社シグマテックによる組合員5名の不採用」について不当労働行為を認め、職場復帰を命じたことは、L.I.A労組にとって大きな前進であり、これからの闘いを大いに勇気づけるものだと感じている。正直なところ、この勝利については大きな驚きはなく、このような不正が見過ごされなかったことに安堵している。

 一方で兵庫県労働委員会が東リの使用者性を認めなかったことは、東リの主張を鵜呑みにした、実態を無視したものであり、不当な判断であると言わざるを得ない。これについては判断を覆すために、中労委で再審査を求めることにした。また、それだけではなく現在進行中の偽装請負裁判に勝利することで直接雇用を実現し、そこを一気に突破したいと考えている。

 職場復帰の命令を勝ち取ったことは喜ばしいことではあるけれど、それだけでは派遣労働者としての位置付けであり、不完全なものと言えよう。L.I.A労組が最終目標とする直接雇用を勝ち取ってこそ、社会的にも大きな影響を与えるものにもなり、必ずやそれを実現しなければならない。
(L.I.A労組副委員長・有田昌弘)

【証人尋問の傍聴支援を】
◆1回目
7月12日(金) 10時〜12時
証人:原告 藤澤、藤井
  (主尋問・反対尋問)

◆2回目
8月9日(金) 13時30分〜
証人:被告 東リ前工場長
   原告 有田
  (主尋問・反対尋問)

ともに神戸地裁204号法廷



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