2019年06月28日 1581号

【ミリタリー・ウォッチング/空自F35墜落は「人為ミス」か/「欠陥」を隠して進める大量購入】

 昼のワイドショーのタレントも「105機のうち5機だけでも我慢して予算を回してもらえれば」と発言するほど不要な買い物<Cメージの最新鋭ステルス戦闘機F35問題。先の発言は、児童虐待に関して児童相談所の要員配置など予算が全く足りていないというやり取りの中で自然に出たものだ。

 航空自衛隊は1機約140億円のA型を105機、海上自衛隊は短距離離陸・垂直着陸ができるB型42機を導入する。空自の5機だけでもやめれば700億円の予算がつくれる。これを児童虐待防止などに回せないはずはないのだが、軍事最優先の日本政府にそうした常識は通用しない。

遺体より機体回収優先

 そのF35Aが世界初の墜落事故を起こした。空自三沢基地(青森県三沢市)所属のF35Aが青森県太平洋沖で墜落した。空自がF35Aからなる初の部隊「第302飛行隊」を編成したわずか2週間後のことだった。4月9日午後7時ごろ、三沢基地から飛び立った4機のF35Aが太平洋上の訓練空域で戦闘訓練中、リーダー役の1番機(約3200時間の飛行経験を持つベテランパイロット)が突如としてレーダーから消えたということしかわかっていない。

 事故直後から、自衛隊は艦船や航空機、海上保安庁の巡視船を総動員し捜索を行ってきた。米海軍もイージス駆逐艦「ステザム」とP8哨戒機を現場海域に派遣し、捜索活動に合流。大掛かりな捜索を展開した。

 米軍が自衛隊機の捜索に艦船などを派遣するのは異例のことだ。すでに死亡とされた操縦士(の遺体)の捜索ではなく、水深1500bの海底に沈んだ機体を血眼になって回収しようとする。それはF35Aが軍事機密の塊≠セからだ。墜落した海域は公海で、中国やロシアに機体の一部でも回収されれば高度なステルス性能などの情報が盗まれかねない。自衛隊は他国が現場海域に近づけないよう警戒活動を強めていた。米軍もB52戦略爆撃機を現場海域で飛行させ、軍事的プレゼンスをデモンストレーションしている。

 機体は大破して破片が海底に散在していると見られ、飛行記録装置の記録媒体など事故原因を究明できる有力な物証はいまだ何一つ見つかっていない。

欠陥は米国も指摘

 にもかかわらず空自は6月10日、死亡した操縦士が平衡感覚を失う「空間識失調(くうかんしきしっちょう)」に陥り、急降下に気づかなかったのが原因と「推定する」中間報告を公表した。人為ミスが唯一の原因で機体の不具合ではないとする「結論ありき」の発表である。三沢基地に配備している同型12機の飛行を近く再開するという。

 だが、すでに昨年1月、米国会計検査院はF35に966件に上る未解決の欠陥があると指摘。直近でも米軍事専門紙「ディフェンス・ニュース」が「操縦士に障害を及ぼす」「超音速で機体損傷」など13件の事例を挙げている。

 空自の中間報告には、これらを検証した形跡は全くない。これは、垂直離着陸機オスプレイが欠陥機であることが明確になっているのも承知の上で、事故の度に人為ミスを強調し、機体の根本的欠陥を放置してきた姿勢と同じである。

 F35の大量購入に都合が悪い事実が出てこないように十分な事故調査もしない。安倍政権の人命軽視・軍事最優先政策を許してはならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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