2019年06月28日 1581号

【ノーモア尼崎事故集会/企業責任追及の新たな考えを提起/JR西への怒り相次ぐ】

 6月8日、「ノーモア尼崎事故 生命と安全を守る集会」が兵庫県尼崎市で開催された。今年は地方選との重複を避け、事故のあった4月でなく6月開催となった。

 「組織罰とは何か〜安全な社会を確立するために」と題し、「組織罰を実現する会」事務局の津久井進弁護士が記念講演。「尼崎事故裁判は無罪となり、同じ強制起訴の刑事裁判として東電の福島原発事故訴訟が進行中だ。企業の刑事責任の追及が困難な予見可能性に固執せず、企業として最低限講じるべき安全対策のラインを設定し、経営陣がそれを果たしているかで企業責任を判断する新しい考え方への転換が必要」と指摘した。「疑わしきは白の原則のある刑事訴訟には独特の難しさがあるが、組織内部にグレーの人がたくさんいる場合には、グレーもたくさん重ねれば黒になる。事実と闘いで突破することが有罪獲得に重要」と、福島原発刑事訴訟の展望にも言及した。組織罰を実現する会は、国・自治体には500万円を、企業には純資産額を上限とする罰金刑を科せるようにする組織罰法制の実現を目指し活動している。

 安全問題研究会からは北海道のローカル線をめぐる状況について報告。この1年間で新たに地元が廃線に同意したのは札沼線(北海道医療大学〜新十津川)だけにとどまった。また、道庁や道内経済界によるJR利用促進運動が始まったが、国鉄末期の「乗って残そう運動」が成功しなかった経験から、路線存続には収支でなく鉄道を公共財として維持する政策が必要であることを強調。新幹線「のぞみ」台車亀裂事故(2017年)に関する国の事故調査報告書が公表されたことにも触れ「台車を納入した川崎重工業との取引を漫然と続けるなど、JR西日本には反省が見られない」と指摘した。

「JR再国有化を」と遺族

 尼崎事故遺族の藤崎光子さんは「なぜ私は死ななければならなかったの、という娘の声が今も聞こえる。国鉄時代の安全綱領をやめ『稼ぐ』を大阪支社長方針のトップに掲げるようなJR西日本の企業体質が事故原因。もうJRは再国有化すべき」と例年よりも踏み込んで思いを語った。

 集会終了後は事故現場までデモ行進。事故で列車が突っ込んだマンションは大部分が解体され、公園の一部として再整備された。だが隣接する道路からは見えないように覆われ、記念碑の記述も事故発生の経過だけ。何よりJR西日本の加害責任に一切触れないという不当なものだ。公園内の撮影すら禁止するJR西日本の姿勢に、参加者から「事故風化を許さないぞ!」と怒りの声が上がった。

 企業犯罪をできるだけ風化させようと狙う政府・JRと、企業の刑事責任追及に向け新たな考え方を提起し闘う市民。今年の集会は例年以上に両者の本質的で根本的な対立を浮き彫りにした。



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS