2022年07月01日 1729号

【ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)中央省庁要請行動】

 6月17日の省庁要請で、厚生労働省、復興庁、財務省には、原発事故避難者や介護労働者など当事者が実態をもとに要求を突きつけた。(4・5面に関連記事)

医療・介護支援打ち切りを追及 反原発

 原発テーマでは、被災者への国民健康保険料無料措置継続を求め厚生労働省に、避難者の住宅確保を求めて復興庁・財務省に要請した。

 厚労省保険局国民健康保険課には、全国6743筆の医療・介護支援の継続を求める署名が提出された。

 議論になったのは、打ち切りの理由とされた「公平性」の理解。「国保・介護保険は皆さんの税負担で成り立っている制度なので、公平性を配慮して打ち切りを決めた」。誰から不公平との声が上がっているのか問うと「直接聞いたわけではない」。「被災者の救済が不公平というなら、生活保護など社会保障制度は公平性を欠くとなってしまうのではないか」と問いただすと沈黙した。

 南相馬市から神奈川に避難した村田弘さんは「年金生活で通院・介護が必要な世代。打ち切りで困る実態を知っているのか」と追及した。国保課は「自治体首長から意見を聞いている」と答弁。「国保料問題まで首長に託してはいない。説明会など直接住民の声を聴くべきだ」と要請したが、「意見としてうかがっておく」の返答にとどまった。

 避難者住宅追い出し問題では、初めて復興庁が出席した。「福島県は相談会や代替措置などよくやっている」との認識で、実態と大きくかけ離れていることが問題となった。県から追い出し訴訟を提訴されている避難当事者は「都営住宅に16回目で当選したが、すべて個人の努力。県は『早く出ろ』としか言ってこなかった」と批判。調停の場で県側から提案された「東京都内における住宅の支援について」を示し、どれ一つとっても困窮者には手の届かない物件だと訴えた。

 県の相談会に何度も同席したという被災者支援班・参事官補佐は、県の紹介する物件には応募資格すらないのに、それを知らず「物件を当ってみたのか」と聞いてくる始末。「相談会に応じた約8割の方は退去した」と成果≠述べたが、「そのうちどのくらいが県の紹介する物件で救われたのか」を尋ねると「県に聞いてほしい」と、実態は把握していない状況だ。

 30分と極めて短時間で逃げたが、今後も意見交換していくことは約束した。

 参加者は午後、最高裁前で集団訴訟統一判決を見守った。その後、再稼働・汚染水問題で経産省・原子力政策課に要請。同課は受け取りを拒否したが、大臣官房総務課に受け取らせ、要請の主旨を説明し、協議を開くように要望した。


「要介護1・2」除外は人権侵害だ コロナ・社会保障

 午後の厚労省交渉では主に、医療拡充と介護保険制度の抜本的改革を要請した。

 新型コロナ感染拡大により、病床不足など医療全体の脆弱さがあらわになった。厚労省は病床増を行ったとするが、参加者が「全体の病床数が増えたわけではない。今あるベッドをコロナに転換しただけ。それではコロナ以外の患者は後回しになり、必要な医療を受けられずに死亡したケースが全国にある」と指摘。また「前回の要請の際、『臨時医療施設をつくる』と宣言したが、増えている様子はない」と実態を示した。

 実効性のないケースもある。臨時医療施設「大阪コロナ大規模医療・療養センター」の閉鎖問題だ。厚労省は「広い国際展示場をパーテーションで仕切ったので、プライバシーを気にする患者もいる。広すぎて空調がゆき渡らない、トイレが遠いなどの問題があり、ニーズに沿った施設がつくれなかった」と「反省」を述べる。最初からわかっていた問題、何を今ごろ、と参加者に失笑が広がった。医療削減を求める地域医療構想の見直し、抜本的な医療拡充を強く訴えた。

 「要介護1・2」の介護保険からの除外を財務省が検討している。ケアマネジャーを務める参加者は「要介護1・2は軽症者ではない。水分も自身でとれない方もいる。外したら人権侵害だ」と現場を踏まえて見解を問いただした。「現在のところ考えていない」と回答するも、歯切れが悪い。再度、参加者から「外したら介護保険制度は崩壊」と念押しした。「介護保険料が年々増加して苦しんでいる方が多い」「介護報酬は低額」「このままでは破綻する」と介護保険制度そのものの再考を促した。厚労省は「現状のままではいいと思っていない。検討する」と応じざるをえなかった。

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