2022年08月12・19日 1735号

【政府の新型コロナ「第7波対策」 ただの風邪∴オいを画策 公的責任放棄は許されない】

 7月下旬、過去最大、連日20万人を超える新規の新型コロナウイルス陽性者が続いている。第6波を上回る急増必至となった7月14日、政府の第17回コロナ対策分科会は「第7波にむけた緊急提言」を出した。公的責任放棄をあらわにし、なお「ワクチン頼み一辺倒」のこの提言について、医療問題研究会・山本英彦医師に批判を寄せてもらった。

自己責任押し付け前面に

 緊急提言は冒頭「国民の皆様にはそれぞれ感染しない/させない対策を中心にあらためて取り組むことが必要」と宣言する。「医療崩壊」をもたらし救われるべき多くの命を奪った政府の過去の施策の総括もなく、公的責任放棄と個人への責任押しつけだけを強調する。

 その上で5政策が提起された (1)ワクチン接種の加速化(2)検査のさらなる活用(3)効率的な換気の提言(4)国・自治体による効率的な医療機能の確保(5)基本的な感染対策の再点検と徹底―を検討してみよう。

 まず、注目すべきは、(5)基本的な感染対策の再点検で、「『コロナを一疾病として日常的な医療供給体制の中に位置づける』ための検討を始める必要があるのではないか」と初めて打ち出した点である。危険な感染症として全数報告を義務付け検査・治療は無償である感染症法上の「2類相当」から、一般のインフルエンザ同様に医療的隔離等もとらず有償とする「5類相当」に変更し、コロナへの公的支出を削減し、なくそうという方向性であり、警戒しなければならない。


迅速な財政支出こそ

 (2)検査活用についての最大の問題は、すでに高齢者施設に限るなど現場で進行している疫学的調査の実質否定だ。「検査難民」の事態も、政府が当初から一貫して避けた大規模なPCR検査体制の不備が原因で、改めて早急に確立しなければならない。比較的信頼に足る迅速抗原診断キットも含めた無料検査体制の構築を急ぐ必要がある。

 (4)医療機能の確保については、本来もっとも国が指導力を発揮する必要のある分野だ。だが、すでに「崩壊」を経験した第6波の総括もなく、第7波への対策は皆無である。救急搬送困難例(医療機関数か所以上の断り数/30分以上待機)をみると、第7波ではすでに東京で人口10万人・週あたり1200人(第6波900人)、大阪で1300人(同1000人)、沖縄では2000人を超えた。

 病状把握を含めた基本的な患者搬送システム、医療供給体制の問題であり、消防士の緊急増加配備、保健所人員の緊急補充、コロナ死亡の大きな原因となった自宅やホテル待機者への連絡監視体制への人員配置と対処など、迅速な国家的財政支出と対応が必要である。

ブースター効果に疑問符

 今回も最優先「対策」に掲げられる(1)ワクチン接種加速化を改めて見てみる。

 日本や韓国では現在、週平均で日々100万人当たり2000人規模の流行だが、数か月前まで、欧州中心に8000人超など数倍規模の流行があった。

 欧州疾病予防管理センターは欧州医薬品庁と共同で4月6日、ワクチン4回目接種について、60歳未満に対し「2回目のブースター接種をしても重症化や死亡を継続して防げるというデータはない」とし、「オミクロン感染に対する防御が、3回目の接種を受けた後に観察されたのと同様の速度で衰える」と声明を出した。このように追加のブースター接種をめぐって、世界ではワクチン効果への疑問が強く表れてきた。

 日本と韓国の直近の新規感染とブースター接種率をみると(図)、日韓とも接種率は世界最高水準を誇っているが、急激な流行は防げていない。こうした中であえてブースター接種の加速化を図る意味はない。



 コロナ死亡・重症化が極めてまれな5―11歳に副反応リスクを伴うワクチン接種は推奨されないが、効果も成人のブースター接種以上に薄く、長続きしないことが明らかになっている。ニューヨーク州の調査では、接種開始2週間後の有効率は68%とされたが、急速に効果は減り、6週後には12%、7週後にはマイナス10%となってしまった。

非科学的な副反応評価

 ワクチン接種後の副反応報告に触れたい。ワクチンによる副作用を認めない非科学的対応が横行し、理不尽な目にあっている被害者が多数存在するからである。

 2022年5月15日までの薬事法に基づく製造販売業者からのコロナワクチン接種後の死亡報告は1791例である。そのうち50歳未満が164例を占め、一般死亡人口と比較しても3倍以上多く、青壮年の死亡が目立つ。死因特定に向けた解剖は全部で135例で異常な高率だ。死亡の最低年齢は5―11歳用ワクチン2回目接種後2日で亡くなった11歳の女児であった。

 死亡報告と違い、全例報告される心筋炎について見てみる。製造販売業者からの報告は1011例である。(表)には、死亡報告で心筋炎死亡とされた18例も加えてある。死者は84例で3分の1は30歳未満。後遺症や未回復例の多さにも注目したい。最年少は7歳男児の予後不明例だが、5―11歳用ファイザーワクチン1回目接種1日後いったん心肺停止を起こした例である。



 典型的な非科学的評価例を示す。2021年6月28日、1回目のモデルナワクチンを接種、8日後心停止を起こしたがいったん心拍は再開し、結局接種36日後に死亡、解剖で心筋炎と診断された27歳男性の例である。死亡報告での扱いは、専門家の意見として「(心筋炎はあるが)合併する心臓弁膜症が死因かもしれない。あるいは心筋炎は否定できないとしても、ワクチンとの関係について心筋炎を起こすほかのウイルスとの区別がつかない」を理由に因果関係は認定されていない。彼が現役のプロ野球選手だったことを考えても突然心停止を起こすほどの弁膜症の合併があるはずはないし、ウイルス性心筋炎の証拠もない。

ワクチン被害に補償を

 一方、7月25日、91歳の接種後死亡者に対し死亡一時金最大4420万円などが支払われることになった。厚生労働省は接種が原因で死亡した可能性が否定できないとして支給を決めた。脳虚血発作や高血圧の基礎疾患を持ち、接種後急性アレルギー反応、急性心筋梗塞を起こし死亡とされるが、先にあげた例に比べても基礎合併疾患の多いこの死亡者だけが支給されるという「補償基準」は一体どこにあるのか。こうした非合理性は人命を軽んじたものというべきだ。

 「国策」としてワクチンを進めている以上、本来、ワクチン接種と副反応被害との因果関係がないことを国・製薬企業側が証明できない場合は、両者の責任で補償すべきである。報告の不十分な例に関しては情報を集める義務もある。

 副反応被害の実態と政府の非科学的な対応を内外に発信し、被害者に補償させるとともに、ワクチン選択基準の一つとして人びとに知らせなければならない。

 *   *   *

 ワクチンで亡くなった人に補償しない、人為的な医療供給体制の不備で犠牲になろうと責任は負わない、コロナの保険診療は削る、危険なウイルスであることには目をつむり「5類相当」疾患にしていく―などなど。人命軽視の政策をさらに後押しする「緊急提言」を許してはならない。
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