2022年08月12・19日 1735号

【福島原発事故 避難者 住宅追い出しに抗う】

福島地裁/住宅追い出し裁判/不当な審理終結

 「裁判長、ちゃんと審理を」―福島地裁法廷で、抗議の声が一斉に上がった。7月26日、避難者住宅追い出し裁判の第8回口頭弁論で、小川理佳裁判長は突然、審理終結を宣言した。

 この日、大口昭彦弁護団長は福島県が原告資格を持つ根拠とする「債権者代位権」の無効を主張。柳原敏夫弁護士は、前回裁判長が示した原告(県)側との争点整理をもとに、釈明を求めた。しかし裁判長は6人の証人申請をすべて却下。最後に「再考してほしい」と求めたところで「終結します」と宣言。大口弁護士から「忌避」の声が上がると、「終結したから忌避は認められません」と、批判の中そそくさと退席した。

 怒りが収まらない報告集会で、大口弁護士は「今後判決期日を指定してくるが、私たちはこれを吹っ飛ばし、第2ラウンドの闘争に進んでいきたい」と訴えた。原告2人は裁判長の強引な進行に悔しさを表し、闘い続ける決意を述べた。

 集会後、十数人が福島駅と県庁前に分かれ、抗議のチラシを配布。突然の審理終結の不当さと福島県の人権侵害を訴えた。

東京地裁/居住権裁判/県の脅しに怒りの陳述

 原発事故避難者の住まいの権利裁判(避難者居住権裁判)が7月25日、東京地裁で始まった。国家公務員住宅に住む区域外避難者の強制追い出しを図る福島県に精神的慰謝料を請求し、明け渡し・損害金支払いの義務のないことを確認する裁判の第1回口頭弁論。大法廷をほぼ埋める80人以上の支援者がかけつけた。

 原告の一人(60代女性)が意見陳述に立った。「2017年3月で退去との話を聞いたが、民間アパートは無理で、都営住宅は応募資格すらなかった。当時は病気で治療継続中だったため、継続入居契約(有償、2年間)は不安だったが、他に引っ越し先もなくサインするほかなかった。職員からは『生活レベルを下げろ、今の職場から離れた(相場の低い)ところで物件を探して』と言われるだけで、これでは相談しても意味がないと思った。19年からは、家賃2倍分の請求書が頻繁に送られてきた。コロナの影響で仕事は減り、眠れなくなる日々が続くようになった。ところが福島県は、緊急連絡先となった姉の転居先まで調べ上げ、『退去するよう説得してくれ。法的手段をとる』と脅しの手紙を送りつけた。私はびっくりして怒りがこみ上げた」。静まり返った15分間。陳述が終わると傍聴席から拍手が起こった。

 裁判長は、欠席した被告の県側に「明け渡しを請求しようとする法的根拠は何かを求釈明する」とし、「その上で反論を」と促すなど、丁寧な訴訟指揮だ。

 陳述した原告は「裁判所に入ったこと自体、初めての経験。緊張したが、皆さんに後押しされ、陳述は作った文章を読んで練習したのでなんとかいけた」と笑顔で語った。

 次回は10月31日。同じ103号大法廷で開かれる。

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