2022年12月09日 1751号

【実効なき「物価高対策」/市民はノー突きつける/消費税減税こそ今すぐ必要】

 「未来永劫、(消費税)10%のままで日本の財政がもつとは思えない」「高齢化の進展に合わせて、遅れることなく、消費税率の引き上げについて考えていく必要がある」―これは、10月26日に行われた政府税制調査会でのやり取りだ。税制に大きな影響を与える政府組織が消費税増税の議論を進めている。

 一方、枝野幸雄立憲民主党前代表が11月12日、「昨年の衆院選で消費税減税を訴えたことは間違い」と述べた。消費税増税を側面から支える暴言であり、消費税減税への市民と野党の共闘を破壊するものだ。政治的責任が厳しく問われる。

 消費税増税策動を許さないことはもちろん、物価高対策のために今こそ消費税減税が不可欠となっている。

市民に届かぬ「対策」

 岸田政権は10月28日「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定した。財政支出39兆円というこの対策で、消費者物価の1・2%以上の引き下げを実現できるとした。

 だが、「総合経済対策」発表直後のJNN世論調査(11/6)では、物価高対策を「評価しない」が70%と、「評価する」15%を大きく上回った。巨額の数字を掲げ支持率上昇を狙ったが、市民の声に応えたものでないことを見透かされている。

 評価されないのは当然である。電気、都市ガス、ガソリン代などについて、一世帯4万5千円の負担軽減(来年1月から9月までの期間)になることを岸田首相は強調する。ところが、この「4万5千円分」が援助されるという世帯はあくまで標準世帯に限られ、多くの世帯ではそれより少ない軽減となる。

 標準世帯とは夫婦と子ども2人の家族を指す。国勢調査(2020年)によると、単身世帯38・1%、夫婦と子どもから成る世帯25・1%、夫婦のみの世帯20・1%で、標準世帯は多数ではない。

 しかも、これは市民への直接支給ではない。大電力資本など企業に対して支出される補助金だ。ガソリン価格を抑えるためとされた石油大企業への補助金と同様で、財務省も「ガソリンの販売価格に補助金の全額が反映されていない可能性がある」(10/7日経)と認めたように、企業収益の改善優先で運用される危険性がきわめて強い。すでに大手電力・ガス会社が来春に予定する大幅値上げと相殺されれば、せいぜい現状維持にしかならない。

 さらに問題は、LPガスなどが軽減の対象外となっていることだ。ガスの普及率は、一般世帯で都市ガス53%、LPガス44%、簡易ガス3%(2013年資源エネルギー庁など)。ガス代の軽減を受けられる世帯は半数強にすぎない。車を持たずLPガスを使う市民は、都市ガス・ガソリン代の負担軽減とは無縁なのだ。

 岸田政権の物価高対策は欺瞞(ぎまん)とごまかしだ。






消費税減税が最も有効

 なぜ、問題だらけの物価高対策になるのか。物価高は、一部の物品や料金に限らず全体で生じている以上、全体に対応する対策が必要となる。ところが、岸田政権の対策は電気代など一部に対する一部軽減にすぎず、それも期間限定としている。

 ここに消費税による悪影響が加わる。

 生活必需品は貧富の差に関係なく買わざるをえず、購買力に大きな差は出ない。生活必需品の値上げは、この値上げ分にも消費税がかかることになる。低所得層には負担度がより強くなる。収入が伸びない中で、負担はもう限界に来ている。消費税増税など論外なのだ。

 いま必要な物価高対策は、恒久的な軽減策で人びとの負担を減らすこと、これによって人びとの購買力を高めること、低迷状態にある経済力を高めることである。

 そのために、全体をカバーして人びとに直接届く消費税減税を行うことだ。補助金や給付金と比べても、消費税減税の効果が最も有効だ。消費税減税の声をさらに高めよう。

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