2003年04月25日発行785号

【占領―フセイン像倒し 殺戮者を市民が歓迎? /  米軍演出の悪質ヤラセ】

 イラクに侵攻中の米英軍は首都バグダッドをほぼ制圧し、ブッシュ政権は「フセイン体制は崩壊した」として占領支配に着手し始めた。国際法を無視し何の名分も示せぬこの戦争は、グローバル資本主義の「なぶり殺し戦争」「強盗戦争」の正体をむき出しにしている。


ウソで固めた「解放軍」

 ブッシュ政権は、フセイン政権崩壊を歓迎するバグダッド市民を演出し、自ら「解放者」として印象づけ、侵略戦争と今後の占領を正当化しようとしている。ラムズフェルド国防長官は、「ほとんどのイラク国民が米英軍を歓迎し、侵略者や支配者ではなく、解放者とみなすようになってきた」(4/12時事)と胸を張った。

 アルジャジーラなど戦争の実相を伝えるメディアが狙い撃ちされるという脅しの中で、イラク民衆の被害報道は途絶えさせられた。米国や日本では、フセインの銅像が引き倒されるシーンが繰り返し放映され、あたかもバグダッド市民全体が米英軍を歓迎しているかのような錯覚が作り出されている。

 だが人口五百万人の大都市で、広大な広場に集まって喜んでいるのは、せいぜい百人程度。住民だけでは倒せないため、米英軍が戦車や装甲車で引き倒した。日本のマスコミが放映しない、高い位置からの全景写真(参照)を見てみると、その光景の不自然さは一目瞭然で、ヤラセであることがすぐわかる。

 現場を目撃したジャパンプレスの山本美香さんも、「あらかじめシナリオが用意されたセレモニーにしか映りませんでした」(4/11日刊ゲンダイ)と語っている。

 「米軍による制圧を解放と受けとめている市民は非常に少ない」(4/11アジアプレスの綿井健陽さん)というように、バグダッドの民衆を殺りくしてきた侵略軍が歓迎されるわけがない。

見つからぬ大量破壊兵器

 米軍の「必死」の捜索にもかかわらず、先制攻撃の口実とされた大量破壊兵器は発見されていない。ブッシュは当初から、「サダム・フセインはバグダッド周辺で化学兵器を使用するおそれがある」などと煽ってきたが、イラク軍は今まで化学兵器を使っておらず、化学兵器も核兵器も発見されていない。

 国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス委員長は「米国はイラクに大量破壊兵器があると信じて戦争を始めたのだろうが、今はそうは思えなくなっているのでないか。…見つけられるかどうか本当に知りたいものだ」(4/11朝日)と批判した。

 ブッシュ政権は「兵器施設を発見し、確保する必要がある」(ラムズフェルド国防長官)と焦り、秘密査察チームを編成した(4/12共同通信)。いずれ、自ら持ち込んででも「発見」を演出することになるかもしれない。

大量殺傷兵器ばらまく

 イラクによる大量破壊兵器の開発疑惑を非難して軍事攻撃に踏み切った米国は、さまざまな大量殺傷兵器をイラク国民に対して使いまくった。

 まず全土に七百発を超える巡航ミサイル「トマホーク」が撃ち込まれた。地下施設にあるといわれるフセイン大統領の隠れ家を攻撃するために、地中貫通爆弾(通称バンカーバスター)も使用された。これは、アフガンで使用された際には、パキスタンの地震観測所でマグニチュード三・三程度の地震が観測されたほど強力な爆弾だ。半径五百〜六百メートル内にあるものをすべて焼き尽す大型特殊爆弾デイジーカッターも使用された。

 民間人、とくに子どもを標的にしているのがクラスター爆弾だ。内蔵された缶ビール大の子爆弾二百個以上が周囲に撒き散らされ爆発する。その一部は不発弾として地上にばら撒かれ、子どもたちが支援物資とまちがえて(同じ黄色の容器に入っている)触ると爆発する。

 さらに米中央軍のブルックス准将は、劣化ウランを使用したことを認めた。劣化ウランは九一年の湾岸戦争でも使われ、戦争から十年経った今も、子どもたちに白血病や先天性欠損症などさまざまな障害をもたらし続けている「悪魔の兵器」だ。

 米英軍による大量破壊兵器の使用は明白な国際法違反だ。ブッシュ政権がいくら「解放者」を演出しようとも、侵略者であり戦争犯罪人である本質を覆い隠すことはできない。

民間人を虐殺

 ”首都陥落”後も民間人に対する爆撃や攻撃が続いている。現在もバクダッド市内の病院には、けがをした子どもや民間人が次々に運び込まれている。四月九日には、米軍兵士がけが人を搬送中の救急車に発砲するという事件も発生した。

 イラク戦争における死者は、米軍百一人・英軍三十人に対し、イラク軍はバグダッド市内だけで二千三百人(全土では、数千〜数万人と推測されている)。そしてジュネーブ条約違反となる民間施設への攻撃によって、民間人の死者は報道されているだけでも千百六十〜千四百十三人(NGO「イラク・ボディ・カウント」調べ・4/12現在)にのぼっている。

 この死者数の差にも、「なぶり殺し戦争」としてのイラク戦争の本質があらわれている。

占領支配し石油を独占

 ブッシュは「イラク人民の解放」を掲げながら、米軍による占領支配を準備している。先の米英首脳会談では共同声明に「国連の死活的役割」が盛り込まれたが、「血を流した米英が主導的な役割を果たすべきだ」(ライス大統領報道官)というのが本音であるのは明白だ。チェイニー副大統領も「国連には中心的な役割を果たす能力はない」(4/10読売)と述べている。

 占領支配のための組織として、国防総省の下に「イラク復興人道援助室」(ORHA)が設置された。その責任者に指名されたガーナー退役中将はミサイル・システム関連の兵器製造企業の社長であることが明らかになっている(4/5ジャパンタイムズ)。

 さらにブッシュ政権は早くも、戦後の石油管理の一環として、暫定統治機構の中に石油省を監督する機関を新設することを決めた。監督機関は油田の修復・開発、石油の販売方針について大きな権限をふるうことになる。これが、フセイン体制の下で締結されたフランスやロシアなどの石油企業との油田採掘契約を破棄し、米企業を中心に採掘契約を結び直すためであることは言うまでもない。

  *   *   *

 イラクを軍事占領し石油開発利権を独占するのが、石油産業と軍需産業を中心とするグローバル資本の代理人ブッシュの目的だ。軍事攻撃の即時停止と米国による占領支配反対の声を広げよう。

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