2003年12月26日発行819号

【イラク派兵と小泉語録 / 詭弁、はぐらかしのオンパレード / 人の命がこんなに軽い】

 自衛隊のイラク派兵について、小泉首相は記者会見で決定の理由を説明した。その内容は「派遣は国際的責任。憲法の理念にも沿う」といった詭弁・強弁のオンパレード。武力行使の可能性を追及されると、「戦争に行くのではない」の一点張りではぐらかした。日本を戦争国家に導く小泉純一郎。そのデタラメ語録をふり返って見よう。

世論の反対を無視

 戦後初の「戦地派兵」という歴史を画する決定をした割には、小泉首相の言葉は薄っぺらい。このハッタリ男には他者への想像力というものが欠落している。盟友のブッシュ大統領と同様、人の命をあまりに軽く考えている。

 大間違いの発端である「イラク攻撃支持」のときからしてそうだった。「米国が国連決議なしでイラクを攻撃したらどうするのか」という質問に、小泉はこう答弁した。「米国がどういう理由で行動するのかを見ないとわからない。それを見て考える。その場の雰囲気だ」(1/23)

 「その場の雰囲気」で決める外交方針とは何なのだ。要するに、小泉の頭の中には最初から「イラク攻撃支持」しかなかったということだ。実際、米英軍が攻撃を開始すると、小泉はただちに支持を表明した。「武力攻撃なしで大量破壊兵器を廃棄することが不可能な状況では、米国などの行動を支持することは国益にかなう」(3/20)。

 イラクが「大量破壊兵器」を保有しているという証拠は国連査察でも発見されず、安全保障理事会では査察継続論が多数派を占めていた。それなのに小泉は「ある」と言い張り、武力攻撃以外では除去できないと決めつけた。

 この「大量破壊兵器」問題は、後に米ブッシュ・英ブレア政権を窮地に陥れることになる。イラク占領軍がいくら探しても、「大量破壊兵器」なるものは見つからなかったからだ。小泉政権も「戦争支持」の大きな根拠を失った。

 ところが小泉は、自らの不明を恥じることもなく、子どもだましの詭弁をくりかえした。「フセイン大統領が見つかっていないからフセインが存在しなかったと言えるのか。大量破壊兵器がないと言えるのか」(6/11)。

 そもそも小泉は「戦争支持」に国民の合意が必要だとは考えていない。世論の過半数を超えていた「イラク戦争反対」の声に耳を傾けようともしなかった。「世論に従って政治をすると間違う場合もある」(3/5)。これが小泉という政治家の本性である。

相次ぐ無責任答弁

 イラク出兵法の国会審議もでたらめだった。反占領闘争がイラク全土に拡大するきざしは当時からあった。戦場に軍隊を送ればどうなるか。武力行使という事態を引き寄せることは明らかだ。このことを小泉ははぐらかし続け、ついには「どこが非戦闘地域で、どこが戦闘地域か、私に聞かれたってわかるわけがない」(7/23)と開き直った。

 ある自衛隊員の話によると、この無責任答弁に対し隊員の間では怒りの声が渦巻いたという(12/11週刊文春)。「(自衛隊員も)殺される可能性がないとは言えない。相手を殺す場合もないとは言えない」(7/9)。小泉にとって、ただの駒でしかない自衛隊員の命は軽い。イラク民衆の命はもっと軽い。

憲法のつまみ食い

 「自衛隊派遣に反対の意見や憲法違反という声もある。しかし憲法の理念に沿った活動が国際社会から求められている」(12/9)

 派兵基本計画の閣議決定を受けた記者会見で、小泉は日本国憲法前文の一部を読み上げた。「いずれの国家も、自国のことに専念して他国を無視してはならない」。だから、イラクへ自衛隊を送ることは憲法の国際協調理念に沿うことだと言うのである。

 詭弁ここに極まる、と言うほかない。小泉は引用しなかったが、憲法前文は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」と明言している。その理念を具体化したのが、「戦争放棄」「交戦権の否認」の第9条ではないか。憲法を戦地派兵の理由にするなんて、イヌをネコと言うたぐいの虚言である。

 大体、米国のイラク侵略・占領は、紛争の平和的解決という国際法の原則を覆す暴挙である。それを支持し加わる決定が、どうして憲法の国際協調理念に沿うことなのか。本末転倒もはなはだしい。

   *  *  *

 先日、米国防総省は「イラク復興ビジネスの参入者は戦争協力国の企業に限定する」との方針を打ち出した。この事実をみても、小泉が派兵理由にあげる「国益」が巨大多国籍企業の利益でしかないことは明白だろう。

 戦争屋の代理人・小泉純一郎に政権を任せていたら、日本は人殺し国家に転落してしまう。「イラク派兵反対」の声をさらに広げ、小泉を退場させること−−これが私たちのできるイラク民衆への最大の「支援」である。 (M)

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