2004年08月20日発行851号

【フィリピン・AKCDF ポール・ガランさん 人々の怒りが撤退へ】

 今、イラク民衆のレジスタンス(抵抗闘争)に連帯し、占領に参加している国で自国軍撤退を求める運動が広がっている。平和と民主主義をめざす全国交歓会・2004東京大会(7/31〜8/1)には、撤退を実現させたフィリピン・AKCDF(アバカダ・カユマンギ地域発展基金)のポール・ガラン代表、米国・ANSWER(戦争に反対し人種主義を終わらせるために今行動を)連合のカネイシャ・ミルズ全国執行委員、イギリス・ストップ戦争連合(STWC)のキャロル・ターナー全国執行委員が参加。各国のイラク反戦運動についてインタビューした。(まとめは編集部)

写真:発言するポール・ガランさん

Q フィリピン軍がイラクから完全撤退しました。その背景は。

A フィリピンのアロヨ大統領は、自らの意志に反してフィリピン軍を撤退させました。

 アロヨは東南アジア諸国で真っ先にイラク戦争を支持した大統領であり、もちろん米国の対テロ戦争には大賛成の立場でした。

 アンヘロ・デラクルスというフィリピン人労働者の人質事件をきっかけに、「彼の命を救うために撤退しろ」という人々の怒りの声に従わなければならなくなったのです。

 アロヨは事件発生後、沈黙していました。それどころか、その間起こった撤退要求のデモに対して暴力的な大弾圧を行いました。バヤン(新民族主義者同盟)のリーダーなどが大けがをしました。これがメディアのニュースで放映され始め、人々の激しい怒りが巻き起こったのです。メディアといえば、政府はアンヘロの家族にインタビューをさせないように情報統制もしていたのです。

 バヤンや移民労働者組織のデモのほか、地域ではキャンドル行動などさまざまな行動が取り組まれました。また、フィリピン社会で大きな影響力を持つカトリック教会も大統領への要請文を公開して、アンヘロを救い出す運動を支援しました。

 アロヨ政権は、政策としてフィリピン労働者の海外輸出をすすめています。海外移民労働者は800万人に上ります。人口の1割です。イラクでは4200人の労働者がトラック運転手や建設現場、家事労働に従事しています。米国は、開戦前にイラクでの雇用確保の契約をエサにフィリピン軍の参戦を求めたといわれています。

 労働者が海外に働きに出る場合、あっせん料として手数料を支払わなければなりません。その金額はおおよそ3か月分の給料分です。このあっせん料がフィリピン経済にいちばん貢献しているといわれています。これが、政策としての労働力海外輸出です。

 アロヨにすれば、政策とする移民労働者の「安全と権利を守れ」の声に従う以外に選択肢はなかったのです。

全占領軍の撤退への決議をあげた全国交歓会2004東京大会(8月1日・東京)
写真:ポール・ガランさんをはじめ海外代表が壇上に勢ぞろいしている

高まる反米感情

Q 撤退後も米比軍事演習が行われています。民衆の受け止め方は。

A 今年もミンダナオ島で米軍とフィリピン軍による「バリカタン」合同演習が行われていますが、やり方が巧妙になっています。演習をメディアに流させないのです。

 昨年のICTA(アフガニスタン国際戦犯民衆法廷)マニラ公聴会の記事がほとんど出なかったように、メディアのトップによる情報操作はすすんでいます。

 ミンダナオ島は、日本や米国を含む125の多国籍企業が豊かな資源を収奪しています。多国籍企業の安全を守るための軍事演習ですが、報道されないために普通の民衆は実態をほとんど知りません。

 にもかかわらず、民衆の反米感情は高まる一方です。撤退を決めたフィリピンを米国が「臆病者」と呼んだことに民衆は怒っています。ブッシュが罰として30万人の米在住のフィリピン労働者を追い返すと言ったことに、人々は怒っています。

 人質事件の2か月前にも3人のフィリピン労働者がイラクで殺されましたが、米国はこのことを隠していました。アロヨは無事救出されたアンヘロに土地や家を与え、自分の手柄のように利用していますが、この3人の犠牲者家族には何の援助もしていません。家族は怒っています。

アロヨ大統領も戦犯

Q 10月に開くICTI(イラク国際戦犯民衆法廷)のマニラ公聴会の意義は。

A ブッシュとともにアロヨを告発したい。公聴会では、移民労働者の証言を実現したい。殺された3人の労働者家族をぜひとも呼びたい。

 また、全交の場で出会ったヤナールさんがイラク現地の被害状況をビデオなどで送ってくれることを約束してくれました。昨年のICTAマニラ公聴会に協力してくれたバヤンに加えて、移民労働者組織やPDSAP(アジア太平洋の平和・軍縮・共生)フィリピン委員会とともに準備をすすめています。日本からもICTIメンバーの多くの参加を期待しています。

 公聴会の翌日にもピースアクションやコンサートを開き、イラク占領に加担しているアジアの民衆の声を大きくアピールする場にしていきたい。

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