2005年03月04日発行876号

【公然と改憲迫るグローバル資本 自衛隊撤退と無防備地域運動で反撃】

 イラク南部サマワには自衛隊第5次派兵部隊が駐留し、津波災害支援を口実にインドネシアにも自衛隊は居座っている。武力行使を想定したスーダンPKO(国連平和維持活動)への派兵も当たり前のように語られている。海外派兵の常態化だけでは満足できないグローバル資本は、本格的な武力行使や集団的自衛権発動などへの制約となっている憲法9条にも手をかけ、占領国となった日本にふさわしい侵略軍と戦争国家体制への総仕上げに踏み込もうとしている。派兵・改憲を公然と表明し始めたグローバル資本―財界団体の狙いを暴こう。


侵略軍化へ総仕上げ

「国益」の障害は実力排除

写真:戦争非協力の地域を(1月28日・神奈川県藤沢市)

 日本経済団体連合会(日本経団連)は1月18日、「わが国の基本問題を考える〜これからの日本を展望して〜」と題した意見書を発表した。

 同意見書は、「第[4]章・憲法について」とはっきり章をたて、憲法9条の修正を明言する。

 まず、9条2項の戦力不保持・交戦権否定について「憲法上、自衛権を行使するための組織として自衛隊の保持を明確にする」ことを求め、海外派兵の活動内容・範囲についての一般法を早急に整備すべきだとしている。また、集団的自衛権については「国益や国際平和の安定の為に行使できる旨を、憲法上明らかにすべきである」と断言する。

 その理由として同意見書は「企業自らが世界中の国々との相互関係を深めるなか、政府レベルでの相互関係、信頼関係の改善強化は、企業活動にも大きなメリットを及ぼす」ことをあげる。あわせて、9・11テロや朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル問題を持ち出し「グローバルな活動を進めるわが国企業や国民にとって、これらの脅威は他人事ではなく、自らに対する直接の脅威である」と述べる。

 つまり、「国益」の障害となる「平和への脅威」は、実力をもって排除するというのだ。彼らがいう「国益」とはもちろんグローバル資本の権益であり、その確保のための本格的な軍事力行使に向けて、あらゆる制約を取り払うことを狙った改憲の提言なのだ。

NGOの取り込みも

 他の経済団体も同様に改憲を公然と主張し始めている。

 昨年12月17日、日本商工会議所も「憲法改正への意見」(中間とりまとめ)を発表。憲法9条1項(戦争放棄)に自衛権を追記し、2項(戦力不保持)に自衛隊保持を明記することを主張した。

 経済同友会は昨年11月24日、「イラク問題研究会意見書」のなかで、「PKO協力法、テロ特措法、イラク特措法では覆えない地理的範囲の補完と迅速な派遣」を目的に、自衛隊派兵恒久法制定とそのための改憲を含む法制整備を求めた。その上で、NGO・NPOと自衛隊の連携を打ち出し、派兵・占領から復興過程の民生まですべてのプロセスで日本の主導権確保を鮮明にしている。

 過去、財界団体は、直接的には外交・安全保障・改憲には触れてこなかった。しかし、日本政府が自衛隊派兵の既成事実化を進めイラク占領に参加した今、日本の財界はこぞって海外権益確保のための自衛隊侵略軍化の総仕上げを画策しているのだ。

国家への従属強いる

 軍備と武力行使の公認だけでは、「いつでもどこにでも侵略できる」というグローバル資本の目標は実現しない。国民を取り込んだ戦争体制が不可欠だ。

 そのために、日本経団連意見書は「総合的な安全保障体制の確立」を提唱する。「防衛、海上保安、防犯、防災、資源・エネルギー」などあらゆる危機意識をあおり、「省庁・企業・NGO・地域・住民・個人」など、国を形成するすべての要素を政府の下に統合しようとしているのだ。

 だから、憲法前文や国民の権利・義務についての条項にも手をつけようとしている。

 中央政府を絶対視し、主権者である国民に「愛国心」を強要することで国家に従属させ、国策・国益に異議を唱えさせないことを狙う。日本経団連は「わが国の歴史伝統などの固有性、独自性を踏まえた国家理念の提示」、日本商工会議所は「自然に国や家族を思う気持ち」、経済同友会は「歴史、文化などを踏まえた国の形を明示」を憲法前文などに盛り込もうとしている。

国民に国防の義務

 戦争国家への国内体制整備をよりいっそうストレートに表現したのが、中曽根元首相が代表となっている世界平和研究所の「憲法改正試案」だ。

 同試案は、まず前文で日本国民が「独自の文化と固有の民族生活を形成し発展してきた」と民族主義・愛国心をあおり、防衛軍の保持と日本独自の判断での派兵を認めている。そして、国民には「国の平和と独立を守る責務」を負わせ、内閣総理大臣が緊急事態を宣言することを可能とし、緊急事態に当たっては「防衛軍、警察」だけでなく地方公共団体をも直接指揮する権限を与え、国民の自由と権利の制限まで認めている。

憲法実現する運動を

 以上のように現に進行する派兵や戦争国家づくりと一体の改憲攻撃に対して「憲法9条を守れ」だけでは反撃できない。

 改憲の口実として常に持ち出されるのは「憲法と現実との乖離(かいり)」だが、そもそもこれまで憲法が完全に実現されたことはなかった。

 自衛隊創設以降、日本政府は軍拡を進め、いまや軍事費世界第2位の軍事大国だ。小泉は、憲法違反のイラク特措法や有事法制を強行し、反対世論を無視して派兵を繰り返す。9条も国民主権も形骸化させ「あきらめ」を植えつけようとしている。それでも抵抗する者に対しては、反戦ビラ配布まで不当逮捕するという、なりふりかまわぬ弾圧で、表現の自由(第21条)さえ踏みにじる。

 憲法に体現された平和主義を守るには、「9条守れ」だけでなく、国民主権・基本的人権といった民主主義の基本となっている憲法体系全体を守らなければならない。

 改憲を許すなの声を上げるにとどまらず、市民一人ひとりが行動し、自らの手で民主的な空間と戦争非協力の地域を築き上げる無防備地域宣言運動やイラク駐留自衛隊の撤退・イラク市民レジスタンス連帯など、小泉の戦争政策にあらゆる分野から対決する運動を巻き起こさなければならない。

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