2005年12月02日発行914号

【人々の出会いと交流で完成 日韓共同制作『あんにょん・サヨナラ』 キム監督思いを語る】

 日韓共同制作のドキュメンタリー映画『あんにょん・サヨナラ』(キム・テイル監督、加藤久美子共同監督)が11月20日、都内で開かれた「さらば戦争!映画祭〜人間が始めたものは人間がやめればいい〜」(同映画祭実行委員会と明治大学軍縮平和研究所の共催)で上映された。キム監督のトークの時間ももたれ、制作に込めた思いをおおいに語った。

日韓連帯を築く

 映画祭は「戦後60年の今年、改めて過去の日本の戦争責任と、今のなくならない戦争について、立ち止まり、見つめ直そう」と企画され、11月19〜20日の2日間開かれた。『あんにょん・サヨナラ』など6本の作品が上映された。

 『あんにょん・サヨナラ』は、戦死した父親の靖国合祀取り下げを求める韓国人女性と彼女を支援する日本人との交流を軸に、戦争装置としての靖国神社の役割を浮き彫りにする作品。

映画祭に参加したキム監督(右)(11月20日・東京)
写真:壇上でマイクを握り語るキム監督

 キムさんは「この作品は日韓の制作スタッフだけでできたものではない。日韓の市民運動の交流があったからこそできたと思っている。非常に感動したのは、韓国の遺族の痛みを自分のことのように感じて10年以上も支援活動をしている日本の人々がいるということだ。しかも、それぞれが仕事を持ちながらやっている。そうした人々との出会いと交流があり、完成できた」と述べた。

 さらに、「日韓の制作スタッフの間でも難しい問題や壁があった。しかし、同じ心を持っているので、問題は克服できた」と喜びをにじませた。

 主人公を韓国人と日本人にした意図について尋ねられると、「日韓ともに戦後世代が多くなっている。過去の問題をそうした世代に伝えるために、彼らの感性に訴えるアプローチがよいのでは思い、痛みを抱えている人、それを支えて解こうと努力している人の2人を出すことでより説得力があると考えた」と話した。

   映画の1シーン(写真は制作委員会提供)
写真:名が刻まれていないイ・ヒジャさんの父の墓石の前に立つイさんと古川さん。墓地は芝生の広場で墓石が規則正しく千鳥に並べられている

 「日本人主人公の古川さんは市民団体で活動している人。日本側から、監督として受け入れにくいのではないかとの意見があった。しかし、日本人に古川さんのような人が少なくないことを知らせることで韓国人が日本人に抱いている反感なども変わるのではないかと考えた。意見を交わし、日本側も古川さんでということになった」。日韓連帯を築く、その思いを込めたものだ。

平和望む人々

 『あんにょん・サヨナラ』は今年のプサン国際映画祭ドキュメンタリー部門最優秀賞を受賞し、山形の映画祭でも上映された。日韓の観客の反応には違いがあるのだろうか。キムさんは「制作過程でも日韓の違いを感じていて、日韓の市民も反応は違うだろうと思っていた。しかし、上映してみると、大きく異なることはなかった。多くの人が日韓関係や東アジアの関係が良くなること、平和になることを望んでいることがわかった。制作スタッフとして安心した」と語った。

 『あんにょん・サヨナラ』を一人でも多くの人に見てもらうこと、それはキムさんの「東アジアの平和を築くためには、日韓の市民の交流がより強くなることが重要だ」との思いと重なるものだ。この日を皮切りに全国上映がスタートする。各地での上映会開催の意義は大きい。

《主な上映会の日程》

11月26日(土) 兵庫県尼崎市事城中学文化祭

12月4日(日) 浜松市ザザシティ

12月11日(日) 香川県社会福祉総合センター

12月18日(日) 東京日仏学院

1月14日(土) 福岡市天神 光円寺

2月5日(日) 四日市市あさけプラザホール

 この他にも企画中の上映会があります。自主上映会の企画も募集中です。

◆問合せ先:「あんにょん・サヨナラ」上映委員会

・TEL・FAX 03-3403-1902 

・メールアドレス

  ann-sayo@hotmail.co.jp

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