2005年12月23日発行917号

【自衛隊のイラク派兵を再延長 占領継続は石油利権のため】

自衛隊がイラクにとどまる理由はない

 小泉内閣は12月8日、14日に期限が切れるイラクへの自衛隊派遣を1年間再延長する基本計画変更を閣議決定した。

 そもそもイラク攻撃の口実とされた大量破壊兵器開発やテロ支援はまったくのデッチあげだったことが明らかになり、占領の名分は完全に失われている。しかも、当初基本計画で定めた陸自の業務のうち、中心的業務とされた給水活動はすでに2月で終了し、いまは細々と医療支援や学校・道路補修の監督などを行なっているにすぎない。政府の論理からしても、自衛隊がこれ以上イラクにとどまる理由はまったくない。派遣延長せず、ただちに撤退させる以外にない。

 多くの国民がそのように考えていることは、69%もの人が派遣延長に反対した(11月末の朝日新聞世論調査)ことに示されている。

 小泉首相は派遣延長を決めた理由として、(1)自衛隊の人道復興支援活動をイラク政府が高く評価していることと(2)国連安保理が多国籍軍の駐留継続を決議したことをあげた。そのために日本政府は、わざわざイラクかいらい政権のジャファリ首相を来日させ、「イラクの人びとは(自衛隊の)サービスを必要としている」と言わせるという演出をした。

米軍への兵たんを主任務に

 撤退時期をめぐっては、閣議決定に「(1)政治プロセスの進展状況(2)治安状況(3)英豪軍をはじめ多国籍軍の活動状況と構成の変化(4)復興の進展状況を勘案して適切に判断」の文言を盛り込んだ。小泉首相は、「英豪両政府と緊密な連携を取って、適切に判断していきたい」と述べ、「撤退」の公式表明を避けている。

 陸自部隊600名が駐留するサマワの治安を担当するイギリス軍とオーストラリア軍は来年5月には撤退する意向を示している。英豪軍が撤退すればサマワの陸自部隊は撤退せざるを得ないと報道されているが、政府は米軍兵士や物資の輸送を担う空自C130輸送機部隊200名は残す考えだ。現在はクウェート〜タリル空港(サマワ近郊)間を飛行しているが、政府は米中央軍前線司令部のあるカタール〜クウェート間の輸送も検討している。米軍の兵士や物資の輸送は、占領軍としての"兵站(たん)活動"そのものだ。

 さらに、日米政府間では軍民共同の「地域復興チーム」(PRT)方式をイラクに導入することを検討している(12/3産経)。中央の権威を地方に拡大することを任務に現在アフガニスタンで実施されており、米連合軍が12か所、国際治安支援部隊が9か所で展開中だが、援助の中立性が損なわれるとしてNGOから批判を受けているものだ。

 小泉首相は、何のために自衛隊の駐留を続けようとしているのか。

 撤退世論の高まりと支持率低下に悩む米ブッシュ政権からの強い要請もあるが、何よりも日本政府自身が自衛隊の海外での活動に固執しているからだ。それは、グローバル資本の要求に応え、自衛隊を米軍同様の海外権益を守る軍隊にしていこうという戦略に基づくものだ。イラクでは占領諸国軍の撤退が相次いでいるが、その中で駐留を続けることで占領軍内での日本の位置は高まる。それが、イラクの復興需要や石油資源の獲得に有利だと判断しているのだ。

 その「成果」の一つが、イラクの石油・天然ガス復興に関する合意だ。

 日本の二階経済産業相とイラクかいらい政府のウルーム石油相は12月6日、石油・天然ガス分野での協力を盛り込んだ共同声明に署名した。石油の積み出し港である南部バスラ港の復旧やバスラ製油所の改修などに03年に決まったイラク向け円借款35億ドルの一部を使うことや、毎年1回経済産業省とイラク石油省で共同委員会を開催し2国間の協力関係を拡大していくことなどで合意したのだ。

イラクと日本の国民世論を無視

 イラク民衆は、占領軍の即時撤退を求めている。英国防省の調査によっても、「多国籍軍が治安改善に役立っている」と考えるイラク国民は1%もいない(10/23サンデー・テレグラフ紙)。日本・イラク両国の民意を無視した派遣延長については、イラクに派遣されたことのある佐官クラスの自衛隊幹部でさえ、「われわれに課せられているのは、サマワに居続けるという政治的任務。イラク住民より米英軍を意識しているように思える」(12/9朝日)と語っている。

 グローバル資本の権益のために派兵を続ける小泉への批判を強め、即時完全撤退の声を広げなければならない。

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