2005年12月23日発行917号

定率減税廃止

【大企業は優遇 庶民に大増税】

政府税調が増税答申

 政府税制調査会(石弘光会長)は11月25日、06年度税制「改正」の答申を小泉首相に提出。「サラリーマン増税」との批判が強い、所得税と個人住民税の定率減税廃止について、答申は全廃を提言した。12月1日には自民党税制調査会が、07年に定率減税を全廃することで合意した。

 定率減税とは、所得税と個人住民税の税額の一定割合を差し引く減税で、所得税額の20%(最大25万円)、個人住民税額の15%(最大4万円)を控除するもの。所得税については06年1月から、個人住民税については同6月から減税幅が半減されることがすでに決まっている。

 全廃されると、夫婦子ども2人の平均的世帯の場合、年収500万円で年間3万5千円、年収700万円で年間8万2千円、年収1000万円で17万8千円の増税となる。

法人や金持ち優遇

 もともと99年の定率減税は、小渕内閣が景気対策のための「恒久的減税」として実施したものだ。それが、いつのまにか「緊急避難的に講じられた景気対策のための措置」(政府税調答申)とされ、全廃されようとしている。

 答申は、法人税のIT(情報技術)投資減税(約5100億円)や研究開発投資減税の上乗せ措置(約1100億円)の廃止を合わせて提案することで、「サラリーマン増税」との批判をかわそうとしている。だが答申が取り上げたこの2つの減税は、03年に政策減税として導入されたものだ。しかも自民党税制調査会は、IT投資減税については規模を縮小して延長する意向を示している。

 問題にするなら、99年に所得税・住民税の定率減税と一緒に実施された大企業・金持ち減税でなければならない。98年に37・5%から34・5%に引き下げられたばかりの法人税の最高税率が99年にさらに30%へと引き下げられ、所得税の最高税率も50%から37%へと引き下げられた。答申はこの法人税や所得税の最高税率の引き上げにはまったく触れていない。

空前の利益の大企業

 いま所得格差が広がり、生活破壊が進んでいる。世帯所得は1996年の661万円をピークに毎年下がり続けている。非正規雇用が拡大し、貧困層が増えている。また自殺者は7年連続で3万人を超えている。

 一方、グローバル企業は空前の高収益をあげている。上場企業の2006年3月期の連結経常利益は前期比で5%増え、3期連続で最高を更新する見通しだ。3期連続最高益はバブル期の88年3月期〜91年3月期以来のこと。全体の3割弱にあたる410社が最高益を達成する見込みという。

 景気が回復したことを定率減税廃止の理由にするなら、何よりも大企業への課税を強化すべきなのだ。ところが与党は、「国際競争力の観点からも問題」(与党税調幹部・11/26毎日)とIT投資減税の廃止にすら反対する始末だ。

次は消費税率アップ

 小泉内閣の発足以来、税制では配偶者特別控除上乗せ部分の廃止(04年)、年金課税の見直し(05年)、社会保険では医療保険の総報酬制導入による実質保険料の値上げと自己負担の2割から3割への引き上げ(03年)、年金保険料の引き上げ(04年から毎年)など、家計の負担は増える一方だ。

 さらに来年9月の小泉任期切れ以降、消費税の値上げが打ち出されるのは確実だ。日本経団連は「2007年度頃までに10%程度まで引き上げ」を要求している。

 こうした勤労世帯への大増税は何のためか。それは、戦争国家に見合った財源づくりだ。90年から01年までの11年間に米国とその同盟国25か国の軍事費の合計は19・2%減っているのに対して、日本は20・3%も増えている。消費税の税率をあと5%上げれば12兆5000億円の増収となる。軍事費・戦費調達にはもってこいというわけだ。

 消費税増税を許さず、いまこそ大企業の儲けを吐き出させなければならない。

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