2005年12月23日発行917号

【無防備条例実現は市民の願い 大津市議会で請求代表者が意見陳述 議会審議始まる】

署名呼びかける加門敦子さん(9月16日)
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 滋賀県大津市・大阪府高槻市・奈良市・東京都品川区・京都市と、この秋連続して取り組まれた無防備都市条例制定の直接請求署名はいずれも法定数を大きく超えた。条例実現への闘いは、第2ラウンドの議会審議に移った。口火を切ったのは、大津市だ。


 無防備地域宣言運動の全国への広がりに脅威を覚える政府は、この間右派メディアを使って無防備条例の否定に躍起になっている。「防衛、外交は国の専管事項」「地方自治体には権限がない」などで、目新しいものはない。

 12月5日の大津市議会で述べられた大津市長の意見書も同様で、「本市に現に自衛隊施設が存在し、災害時の復興支援等を行っていただいており、地域社会の一員として果たす役割は大きく、無防備地域の要件を満たす地域となることは考えられない」ことを付け加えただけだ。

戦争体験者の言葉を代弁

 12月9日、4人の請求代表者が意見陳述に立ち、反論を開始した。

 大山修司さんは、「ひとたび武力行使や衝突が引き起こされれば、必ず一般市民、子どもが犠牲になる。市民は泣き寝入りするしかないのか。そうならないための方策があるのなら、その実現を願うのは市民の当然の声ではないか」と発言。署名に込められた市民の思いを市当局、議会は真摯に受け止めることを訴えた。

市長あてに本請求する中川哲也さん(11月22日)
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 署名期間中に出会った市民の声を具体的に紹介したのは、加門敦子さん。「あんな経験はもうこりごり」「弾の下をかいくぐって生き延びた。友人は特攻で死んだ。あんたらしっかり頼みますよ」など、戦争体験者の言葉を代弁。「武力を持ち始めると、きりがない。これで大丈夫なんて思えないのだから。武力で争いはつくれても、平和はつくれないことは明らか。間違った国の見解だけを鵜呑みにせず、市民の方を向いた審議をしてください」

 無防備地域宣言の根拠となるジュネーブ条約第1追加議定書を分かりやすく説明したのは、西谷靖男さんだ。ベトナム戦争での一般住民の犠牲の反省に立って、紛争当事国のみならず、自国の住民の保護まで対象にしたのが、第1追加議定書の画期的な意義だ。「無防備地域宣言は、戦争・軍事行動からの離脱権限を付与することで、自らの意思で自らの生命・財産を守るという『自己決定権』を自治体・住民に保障している」と力説した。

大衆的な傍聴を

 請求代表者の訴えは、住民の平和と安全を守る立場の自治体が本来の責務を主体的に果たせ、というもの。

 マスコミも、「『権限』や『既存法令への抵触』を検討するだけのしゃくし定規な議論では、意味がない。住民に一番近い自治体が、平和を守る当事者という立場に立つべきだ。中身の濃い議論を期待したい」(毎日新聞京都版12月6日付け)と述べ始めた。

 最後に登壇した中川哲也さんは、市長意見書に全面的な反論を展開。なかでも、市長が触れた自衛隊の存在については、「自衛隊の主任務は国に対する侵害排除、つまり戦闘だ。有事となれば、住民を保護するわけでも災害の復興をするわけでもない。鳥取県の住民保護シミレーションでも『われわれは侵害排除が仕事。住民避難は自治体と警察で』と自衛隊連隊長が明言している。平時では災害復興で一定の役割を果たしているとしても、有事では武力を行使する戦闘集団となり、市長意見書にいう市の期待する役割は担えない」ときっぱりと批判した。

 条例案は12月19日の総務常任委員会で審議される。無防備地域宣言をめざす大津市民の会は、議員へのハガキや手紙での要請とともに委員会への大衆的な傍聴を呼びかけている。

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