2005年12月30日発行918号

【918号主張 占領終結・イラクの民主的再建へ / 社会を変える闘い】

分け前の奪い合い

 12月15日、イラク国民議会選挙が行われた。1月の暫定国民議会選挙、10月の憲法国民投票に続く今年3度目の占領正当化のための茶番劇である。どこからどう見ても「選挙」の名には値しない。

 夜間外出禁止令が敷かれ、すべての国境・空港が閉鎖され、許可を得た車以外の通行が全面禁止された。州をまたがる往来も禁じられた。何より占領軍・イラク政府軍・イラク警察計35万人の重武装部隊にイスラム政治勢力・クルド民族政党の民兵組織も加わって投票所を何重にも威圧している中で、有権者の自由な政治的意思の表明などあり得ようはずがない。

 今回、1月は棄権したスンニ派政治勢力の多くが選挙に参加した。「高投票率」と報道される背景にはこの事情がある。だが、これも民衆の政治意識の高揚を意味するものではない。スンニ派聖職者約千人が投票呼びかけの宗教令を発したことからも分かる。1月以降の政治プロセスから排除された同勢力が、占領体制の分け前にあずかるための失地回復を図ったにすぎない。

民主化は市民の手で

 メディアは「力と排除から脱皮」(朝日)「民主化総仕上げ」(毎日)「宗派・民族超える動き」(読売)と歓迎する。しかし、占領と占領が招き入れたテロをそのままにして民主主義や和解が成り立つ余地はない。市民レジスタンス勢力が「民衆に米国の政策への同意を与えさせる狙い」(イラク労働者評議会労働組合連合)「権利はく奪と窮乏のすべてに見せかけの正当性を付与するもの」(イラク労働者共産党)として選挙をボイコットしたのは当然だ。

 週刊MDSは10月末から2週間、イラク北部を取材した。そこで見たのは、市民レジスタンス運動が着実に前進し、IFC(イラク自由会議)の政策綱領に込められた自由・平等な社会の未来像をイラク市民が自分たちの力でたぐり寄せている姿である。

 市民生活防衛委員会や市近代化委員会といった代表組織が結成され、市当局との交渉を積み重ねている。戦争とテロの最大の犠牲者である子どもたちを守る子ども保護センターが活動を再開し、子どもシェルターも開設した。無料診療を行う病院の建設プロジェクトが始動している。人権侵害にさらされる女性たちには無料の法律相談を実施し、弁護士もあっせんする。

 これらはすべて、占領が崩壊させた社会・地域を市民自らの手で再建し、人間が民族や宗派によってではなく人間として尊重される社会を築こうとする営みである。民主主義実現の道はまやかしの選挙ではなく、こうした市民自身の取り組みの中にある。

IFC連帯で日本変革

 IFCの闘いは日本の運動にも大きな励ましを与えてくれる。イラク市民は、行動すれば社会を変えていける、行政を動かし目に見える成果をかちとることができるという確信にあふれている。

IFC連帯は「かわいそうな」イラクの人々への同情ではない。占領体制の黙認と現地支配勢力との協調の上に行われる「支援」とも無縁だ。グローバル資本主義の戦争システムを、一方は占領された国で、他方は占領国のただ中で、解体しようとする共同の闘いである。 (12月17日)

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