2005年12月30日発行918号

【内外に反響生んだ9・15判決 不当労働行為認定は闘う力 鉄建公団訴訟原告団 酒井直昭団長に聞く 民営化そのものを問い直す】

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 鉄建公団訴訟原告団は、東京地裁9・15判決をふまえ、控訴審に全力をあげる。2か月にわたる鉄建公団(現鉄道運輸機構)本社前座り込みから、2006年の闘いを組み立てている。団長の酒井直昭さんに闘いの現状と課題を聞いた。(まとめは編集部)


もっと闘える

◆9・15判決の反響は。

 内外に反響がありました。判決後、弁護士と一緒に北海道と九州にそれぞれ手分けして入りました。一番心配だった不当労働行為が認定され、ちょっと胸をなで下ろした。集まった原告や家族から一番語られたことは「裁判をやって良かった。闘って良かった」という率直な感想でした。原告団と家族が元気になったこと、当事者としてもっと闘えるという雰囲気が出てきていることは大きな成果です。

 国鉄闘争共闘会議に結集して一生懸命支援いただいている労組や民主団体、個人の皆さんの思いは不当労働行為が認定された点をどう拡大していくのか、原告団の尻をたたきながら国鉄闘争をもっと大きな運動の流れにして、しっかりした勝利を勝ち取ろうという思いが強まっているのを感じます。原告300名の闘いをどう1047名の闘いに広げるか。これは原告とともに共闘の皆さんの課題にもなっていて、様々な動きが見え隠れしています。

 私はこの12月21〜24日に四国に行きます。四国は北見闘争団の中野勇人君が常駐し、1047キロマラソンで地域に支援を広げているところ。高知県職労の山崎委員長などに尽力いただいて、高知や徳島、愛媛で判決報告集会が開かれます。

 総じて、9・15判決は、内容に不満はあっても、いい方向に運動をもっていくきっかけになっていると思います。

追加提訴の原告拡大

◆国労闘争団全国連絡会総会が13〜14日に開かれました。

 この会議に原告団は、未提訴の闘争団員が裁判に踏み出す最も効果的なチャンスが今であることを呼びかけていこうという姿勢で臨みました。国労本部や組合機関がやるかどうかではなく、闘争団員一人一人自らの課題なのだと訴えてきました。連絡会神宮議長は「連絡会として裁判の準備を準備する」とまとめました。全くゆるやかだが、少し動く兆しが見えてきたかなというところです。

 9人で提訴した鉄道運輸機構訴訟団(第2次提訴団)はこの間、追加提訴で23人に増えている。さらに、提訴したいと意思表示している人もいます。

 全国の闘争団の中で、丸ごと裁判の原告になっているところはいいが、団の中から少数で提訴した原告メンバーに対して、除名扱いに等しいような差別をしているところもあります。原告団全体は国労本部から生活援助金凍結が解除され、処分も解かれたというのに、これでは1047人総体で団結して闘えるのか、といわざるを得ない。

 解雇された者が裁判の原告という同じ基盤に立って団結するしか一緒に闘う方向はないし、これが最も力になると考えています。

首切り自由・不当解雇は許さないと訴える原告団(12月9日・東京)
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1047名総決起へ

◆来年に向けて具体的な方針と抱負を。

 鉄建公団は判決の翌日に控訴し、あくまで争う姿勢を示しました。原告団との交渉は受けず、最高裁判決まで粛々と進めると言っている。したがって、今のところ政治的解決や和解交渉の動きは全くない、これが一致した見方です。このような現状で、どう解決の種を植え付けていくかが課題です。

 1月27日に院内集会を準備しています。これまでに衆院議員の8割を回り、参院を含め年内には一回りしようと取り組んでいます。9・15判決内容とJR不採用問題の闘いが19年にわたって解決していないことを知ってもらう、政治的解決の道筋を作っていこうとの動きの一環です。議員会館を回っていると自民党の議員ばかりに当たる。300議席って大きいよね。

 そして、20回目となる2月16日。紙切れ一枚で不採用通知を受け国鉄民営化で忘れられない日でもあり、こだわり続けてきた日です。この時期は鉄建公団訴訟の控訴審も始まる頃で、われわれ鉄建公団原告と全動労、千葉動労、第2次提訴団、そして訴訟で闘うことを決意した1047名が勢揃いする総決起の集会にしたい。それがわれわれ原告団と共闘会議の思いです。

 06年末までには地裁段階で全動労など3つの判決が出される可能性も強く、9・15判決を上回る内容を勝ち取っていくことが、高裁への包囲網となりそれが勝利解決への帰趨を決することに必ずなると思います。

 4月1日には、これまで7・15大集会などを計画し呼びかけていただいた広範な皆さんに絶大な協力をいただいて文字通りの決起集会を予定しています。尼崎事故1周年では、民営化そのものを問い直す意味から、イギリスやフランス、韓国から鉄道労組を招請しての国際シンポジウム、全国キャラバンの企画や大衆運動を強化し、公共部門民営化の是非を問うていきたい。可能であれば事故で犠牲となられた方の遺族の皆さんとも連携を取りながら、生命と安全の問題を大きな声にしていきたいと考えています。

 われわれの今の闘いは、政府や国土交通省、JRにとって蜂の一刺しには遠く、暗闇の中で耳元に飛ぶ蚊のような存在かもしれませんが、それをどう大きな運動に、蟻の一穴にしていくか、ですね。

◆どうもありがとうございました(12月15日)。

*鉄建公団訴訟

 1990年に国鉄清算事業団が強行した解雇の不当性を問う裁判であると同時に、87年の分割・民営化時にJRと一体となって国鉄が行った採用差別の責任を問う裁判である。

*9・15判決とは

 9月15 日、東京地裁難波裁判長はJR採用時の不当労働行為を認定し、期待権侵害として1人500万円の慰謝料支払いを命じた。しかし、国鉄清算事業団が行った90年解雇は有効とした。原告・被告とも控訴している。

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