2005年12月30日発行918号

【処分はね返す力は地域に 「日の丸」「君が代」強要する東京都 つながりをたぐり寄せる】

 教師や生徒への「日の丸」「君が代」強要へ暴走を続ける東京都。12月1日、卒業式・入学式での不起立処分者に対して行なった「事故再発防止研修」の受講者に追いうちをかけるように処分が強行された。父母の一人は言う。「なぜそこまで強制しなくてはならないのか」


命令に疑問深める

 都内西部の高校教員の塚本秀男さんは「強制反対の内容が書かれたTシャツを着用した」として戒告処分を受けた。「何が書かれていたかは確認していない」という校長からの当初の報告に対して、都側は書き直しを求めた末に処分を断行した。

12月2日の処分に対し抗議行動
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 現在、塚本さんは地域の支援者らと、処分への抗議や来年の卒業式・入学式での取り組みを相談している。2月上旬には父母ら市民と教員と交流を深める集まりを開くことを決めた。地域の駅頭でのチラシ配りも準備している。

 同校に子どもが通うSさんは、入学式では「入学を取り消されるのではないか」と恐れて「君が代」を歌った。塚本さんが処分を受けたことを知り、「教員でもそこまでがんばっている人もいるのか」と驚いたという。Sさんは、命令が繰り返される教育の場への疑問を深める。「卒業式は社会へ出て行く門出となるような思い出にさせてやりたいし、入学式は青春のまっただ中の時間を過ごしていく場になってほしい。何よりも子どもたちを第一に考えてほしい」

 昨年、支援者ら10人は塚本さんの学校の門前で「強制反対」を呼びかけるチラシ配りを行なった。「内部では権力で押さえつけても地域の人たちにそれでは対応できない」。塚本さんは、緊張に顔をこわばらせる校長の姿に、地域からの取り組みへの確信を深めた。「黙って処分に耐えているだけではだめだ。保護者や生徒に伝えてきたからこそ、Sさんとも知り合えた。地域とのつながりは意識的にたぐり寄せていかなくては、と改めて思っています」

地域の平和力高める

都の教育破壊ストップ掲げ集会(12月10日・東京)
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 同じく西部の小学校に勤務している中島暁さんも戒告を受けた。現在、父母らとともに、都と市の教育長、校長にあてた要請署名を準備している。中島さんは、これまで地域の様々な場所に顔を出してきたつながりを踏まえて、7月と10月に懇談会を開いた。「先生が困っているなら」と参加してきた父母から、「先生たちはそんなにものが言えないのか」と驚きの声があがった。やがて「学習ばかりではなく、何か行動できないか」「署名なら協力できる」という声が起きた。知り合ってきた一人一人に署名を送り、すみずみからの広がりをめざす。

 「『日の丸』『君が代』問題だけで勝てるわけではない。地域の平和力を高めて、子どもへの強制、服従、差別が当たり前という世の中を転換させていかなくては」。地域に根ざした取り組みに中島さんの決意がこもる。

 塚本さんの学校は「奉仕」科目の研究指定校。現在はボランティア活動などの検討だが、すでに教員の研修選択科目に自衛隊の体験入隊が組み込まれている。「やがて、生徒にも、と危機感を持っている。戦争国家を支える学校づくりに歯止めをかけなくては。それが処分者の共通の思いです」

 Sさんも戦争国家への危惧を強く感じている。「人殺しになって帰ってくるか、殺されて死者となって帰ってくるか。どちらもイヤです。教育者として、そのようなことには絶対に加担していただきたくない」。

 教員、父母、支援者。平和と民主主義への思いでつながりあいながら地域ぐるみで進もうとしている。

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